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六十四話目 絶叫


3月29日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



「ぎぃやぁああああああああああああ!」


 空の上。凄い速さで雲が後ろへと流れていく。


 うっかり下でも見ようものなら、魔力切れのせいではないクラクラが僕を襲う。


 更に僕の悲鳴を何かと勘違いしたらしきジェイド君が、楽しそうに空の上を時々旋回するものだから堪らない。


「いぃやぁああああああ!?」


 今もわざわざ雲の上に飛び出して、わざと雲スレスレの場所を高速で飛んでいるんだけど、所々灰色の雲がある場所があって、そこを通る度にジェイド君の体と雲とが摩擦を起こしてバチバチと放電している。


 まさしく雷が上に向かって落ちてくる感覚に、僕の口からは悲鳴しか出てこない。


『マスター、ガンバレー』


 そんな僕のお腹の中から、あからさまな棒読みの応援が聞こえるけど、そこにツッコミを入れる余裕すら無かった。


 何せ、ジェイド君に少し速度を落として欲しい。と言う一言すらも発する事が出来ないくらいに、僕は叫び続けていたからだ。


《ヒュン、バチバチ、シュシュシュン》


「ぎやぁああああ!またバチバチ言ったぁああああ!?」


 今、もしも誰かが僕達とすれ違ったならば、間違いなくドップラー効果的な何かが発生していたと思う。


 唯一の救いは、ジェイド君が魔法で覆ってくれたのか、はたまた種族の特性か何かなのかは分からなかったけれど、息が普通に出来た事。


 お蔭で今のところ、ジェイド君の周りに吹き荒れているであろう風もあまり感じずに、吹き飛ばされずに済んでいる。


「あぁああああ」


 ただ、これ、彼の背鰭っぽいところに掴まっているだけで鞍なんて有る訳も無く、優しい咲良が蔓を僕とジェイド君の体に巻き付けてくれていなければ、僕は既にこの高度から地面に叩きつけられていた筈だ。


 え?叫んでるわりには冷静だな?って?


 少しでも気持ちをまぎらわして無いと、死にそうなんだよ!!


「いぃやぁああああああ!!」




◇◆◇◆◇◆


《side:咲良》


「やだぁああああああ!!」


 マスターの絶叫が響く。


 そりゃあ、俺はマスターの腹の中に居るのだから、声が響くのは当然だ。


 マスターは高いところは大丈夫なくせに、スピードが速すぎるものが苦手な様で、()()()の背中に乗っている間ずっとこんな感じに叫び続けている。


「ぎぃやぁああああああああああああ」


 最初は良い薬になるだろう。くらいに思って笑っていたけれど、流石にそろそろ限界な様だ。


 マスターの腹の中から顔だけ出して様子を確認して見ると、マスターは首が座っていない赤ん坊の様に首をグラグラさせながら白目を剥いていた。


 トカゲは頭が悪いのか、マスターのそんな様子にまるで気が付いていない。


 マスターは、新しい戦力!と喜ぶユートさんの為にアジトへ連れていく気みたいだけれど、俺にはマスター達の足を引っ張る様にしか思えない。


 現に、此処まであからさまなマスターの様子にも気が付かないくらいだ。とても戦力になるとはお世辞にも言えないと思うのだが…。


「はぁ。おい、トカゲ!」


「あぁああああああああああああ」


 ちっ。マスターの叫びにかき消され、俺の声は体がデカイだけのトカゲにまで届かなかった様だ。


 何が楽しいのか、ご機嫌に空中旋回してやがる。こいつ、本当はマスターを振り落としたいんじゃないのか?


『おいっ!トカゲ!いい加減にしろ!!』


 苛立ち紛れに念話を使ってトカゲに怒鳴った。


『むっ?誰がトカゲだ!?燃やされたいか?』


 今度は聞こえたらしきトカゲがぐじゃぐじゃ何事かを騒いでいるが、此方はそれどころでは無い。


『頭が足りないドラゴンなどトカゲ以下だろうが!?てめぇはマスターを殺す気か?馬鹿』


 今はまだ蔓でマスターの体を支えられているが、気絶寸前のマスターの体をいつまで支えられるか分からない。


 俺は、マスターの腹の中から飛び出すと、マスターの体を背中から支える様にして座り、蔓の補強をしながらトカゲに向かって更に吠えた。


 太い蔓と細い蔓を二重にした手綱と鞍は、先程よりも体をしっかりと支える事が出来た様で、マスターの体のぐらつきが少し和らぐ。


 よかった。ちょっと真剣に首が取れるかと思った。


『むっ!しっ、シエロ殿!?』


 此処でようやくスピードを緩めたトカゲが、首を曲げてマスターの様子を確認すると、慌てふためいた様にその場で止まった。


 マスターは、まだ白目を剥いたまま、俺に背中を預けている。


 はぁ。俺の心労の種がまた増えそうだ。




叫び声書くの楽しかったww


本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新出来ると思いますので、またお読み頂ければ幸いです。


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