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六十三話目 一緒に帰ろう②


3月28日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



「全く僕も馬鹿だよねぇ?街の中から街の中までの個人の転移は禁止されてるけど、街の外から街の外までだったら自由に転移魔法が使えるって事、すっかり頭から抜けてるんだからさ」


 やれやれ。と、首を軽く振りながら、さっきあった事を振り返っていた。


 【転移門】で王都まで行く事が当たり前になり過ぎていて、そんな簡単な事さえ忘れていた自分がとても恥ずかしくてしょうがない。


「とんでもありません。私の様な者が急に押し掛けて来たのが悪いのです!」


「いやいや。って、これじゃいつまでも同じ事繰り返してるだけだね?じゃあ、僕の…そうだな、左手を掴んでくれる?」


 此処に至る迄に何度も交わした押し問答の様な僕とジェイド君の会話を終わらせるべく、僕は彼に向かって左手を差し出した。


「はいっ!宜しくお願い致します!!」


 嬉しそうに僕の左手を取ったジェイド君に僕は、んフフと笑いを返してから、王都の門の前の景色を頭に思い浮かべる。


 咲良はあのまま僕のお腹の中に居るので、取り敢えず僕とジェイド君がその場に立っている姿を想像して、魔力を練っていく。


 始めはグニャグニャと輪郭が朧気な映像だったものが、次第に鮮明になっていき、やがて立派な門の姿がはっきりと頭に思い浮かぶ。


 更に、よく挨拶を交わす、気さくな門番さんの姿までが見える様になれば準備は万端だ。



 ん。良しっ!!


「《空間操作:転移!》」


 呪文の詠唱と共に空間がねじくれ、シュトアネールの街(此方)王都(彼方)が繋が…。


《プシュ~》


 らなかった。


「しっ、シエロ殿!?」


 繋がる一歩手前まで高まっていた魔力が突如霧散し、カクッと体から力が抜ける。


 僕の左側に居るジェイド君が咄嗟に僕の体を支えてくれたので、何とか転ばずに済んだものの…。


「ごめんジェイド君。魔力切れた…」


 朝から土を掘ったり岩を作ったり削ったりしていた代償がまさかのここで効いてくるとは思わなかった。


 まだ残りの魔力には余裕があった筈なんだけどなぁ。


 流石は人の形を取ってはいてもドラゴンって事かな?かかる魔力(運賃)が桁違いに高すぎた。


 あぁ、魔力切れで目が回るなんて久しぶりの感覚だぁ…。


「えぇっ!?しっ、シエロ殿、しっかり!大丈夫ですか?」


「ははは、大丈夫大丈夫。ちょっと魔力が切れただけだから、少し休めば復活するよ」


「全く。さっき無茶はしないってお誓いになったばかりでは無いですか…」


 何時の間に僕のお腹の中から出てきたのか、手に緑色の液体が入った瓶を持った咲良が、呆れた様な顔をしながら、僕の体を近くの岩に座らせてくれた。


「あはは、面目無い」


「全くもう。はいマスター、魔力回復ポーションですよ?」


「あっ、ありがとう。ゴクゴク…はぁ。少し楽になった」


 今咲良から貰って飲んだ瓶の中身は、文字通り魔力を回復する薬。なんと!僕のお手製です☆


 精霊は魔力の塊なので、念の為にと常備して貰っている。まぁ、それを僕が貰ってたら意味無いんだけどね?


 因みに、魔力回復ポーションはメロンソーダ味で、飲みやすく美味しいお薬となっております。



「ふぅ。咲良のお蔭で大分回復したけど、どうしようか?流石にまだ王都まで転移するのはキツいんだよね」


 どうしたものか。と、徐に座っている石の上に手をつく。


 ひんやりした石の冷たさが、今はとても心地よい。


「あの、ちょっと良いですか?」


「ん?咲良なぁに?」


 うんうん僕とジェイド君とで唸りながら悩んでいると、咲良が律儀に軽く手を挙げながら発言許可を求めてきた。


 咲良は真面目だなぁ。とか思いながら、すぐにどうぞ!と続けてもらう。すると、


「いや。ジェイドさんにマスターが乗せてもらって帰ったら早いのになぁ…と思って」


 何て答えが咲良から返ってきた。


「いや、幾ら何でもそれは可哀想でしょ?ジェイド君が潰れちゃう」


 僕の記憶の中のジェイド君ーードラコンフォームーーの姿は、お母さんのウルスラさんーーヒューマンフォームーーの胸の中にすっぽり収まってしまうサイズだった。


 そんな小さな子の背中に乗ったら、虐待してると思われ…。


「なるほど!その手がありましたな?私こそ、すっかり考えが凝り固まっておりました。いや、面目次第もありません」


「ジェイドさんは、飛べるドラゴン?」


「勿論であります!」


「なるほど。それなら、少し高度を高く保ったまま飛んでくれれば人の目にもつきにくいかもしれないな…。マスター、乗せてくれるそうですよ?」


「えっ?あぁ、うん。でもーー」


 何時の間にかトントン拍子に話しが進んでいた。


 あんまりサクサク進むから、ついついポカンとしてしまったけれど、咲良から話しかけられて、ハッと我に帰る。


 まだ小さなジェイド君を潰したくはないから、流石にここはハッキリ断ろう。と僕が口を開いた瞬間だった。


《ズシーン》


『ささ、シエロ殿!私の狭い背中では御座いますが、是非ともお乗りください!!』


 僕の前に、小高いお山が現れた。



 うっ、うそん。


 ドラゴンって、たった6年でこんなにでかくなるもんなの!?




ジェイドの身長は大体5メートル(尻尾含む)くらいを想像して書いています。

何気にマンドレイクーー10メートル以上(葉っぱ含む)ーーの方が大きいと言うww


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します。


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