五十九話目 ソラタ?とシエロ
3月24日の更新です。
前回から4日も開いてしまい、申し訳ありませんでした。
本日よりまた再開致しますので、また宜しくお願い致します。
歩きながら聞いたドーマさんからの話しでは、兄さん始め皆は門の辺りに居ると言う事だったのだけれど、いざ着いてみると、もうそこには誰も居なかった。
困惑する僕らの姿を見つけて、いつもの様に陽気に挨拶をしてくれた門番さんに事の次第を尋ねれば、兄さん達は大分前に家へ向かったと言う。
門番さんにお礼を言ってから、家へ向かって走り出すと、後ろから、
《「いやぁ~、でっかいドラゴンだったなぁ」》
何て声が聞こえた気がして、やっと息が整ったばかりのドーマさんには悪いと思ったものの、僕は走るスピードを上げた。
「兄さん!!」
門番さんの居た外門から、走っても20分はかかる道のりを5分でかっ飛ばしてきた僕は、勢いそのままにうちの庭の中に飛び込んだ。
家の中に入らなかったのは、庭の方で話し声が聞こえたからだったけど、どうやらこれは正解だった様で…。
「おっ、うちのお姫さん帰って来おったな?」
「父さん、またシエロに怒られますよ?」
「あっ、シエロ。お帰り」
上から、祖父さん。父さん。兄さんの順番で、の~んびりした挨拶を返された。
……あれ?何この穏やかなアフタヌーンティー会場は?
え?ドーマさん?あっ、途中で置いてきちゃった。まぁ居場所は分かってるんだから大丈夫だよ。うん。
それよりも、此方だよ!
何で皆、こんな落ち着いてんの!?
《ボフッ》
聞いていた話しとは全く違う、ほのぼのした雰囲気に大分混乱していると、いきなり体の左側から結構な衝撃を受けた。
「やっと会えました!」
「なっ!?」
そのまま抱きしめられたので、姉さんかな?と思ったら、降ってきた声は男のそれで、ビックリして顔を見上げると、そこには【ソラタ】が居た。
「えぇっ!??」
思わず叫ぶ。
もう頭の中はパニックだ。
何で此処にソラタが居るの?あれ?ソラタって僕じゃんね?え?この人だれ?あれれ?ドラゴンが居るって話しは僕の聞き間違い?あれ?あれ?あれれ?えっ!?何で皆こんな呑気にお茶してんの?あれ?僕がおかしいの?えっ?えぇ?
《スパァアアン!》
「落ち着いて下さい」
「はっ!?」
隣を見ると、咲良さんが見覚えの無い紙の束を筒状に丸め、紙を持っていない方の手のひらにポンポンしていた。
間違いなく、その紙の束で僕の頭をひっぱたいたのだろう。お蔭で正気には戻れたけれど、頭、痛い。
「大丈夫ですか?恩人様。お前、今のは酷すぎるぞ!?」
ちょっぴり涙目になっていると、僕に抱きついていたソラタが、僕の頭を優しく撫でながら咲良を睨み付ける。
「うっ…」
誰かの変装とは言え、僕の姿をした人物に噛みつかれて睨まれてしまった咲良は、流石にちょっとショックを受けているみたいだったけど、その時ソラタから出た言葉に、僕は何だか聞き覚えがあった。
咲良の方は後で慰めよう。と思った僕は、
ごめんね?咲良、ありがとう。
と、咲良に呼び掛ける様に心の中で念じた。
僕と咲良は契約と言う見えない糸で繋がっているから、これで取り敢えずは大丈夫な筈だ。その証拠に、咲良の表情が柔らかいものへと変わっている。さて、と…。
「そんな格好してるからビックリしたけど、君、ウルスラさんの息子君?」
「はい!正解です!!」
笑顔で抱きついているソラタが、更に嬉しそうな顔をして僕の体をギュッと抱きしめた。
なるほど、ソラタの顔ってこんな風になっているのかぁ。
自分の顔を客観的に見られるのは何だか新鮮だ。うん。確かにちょっとこの顔で凄むのは怖いかもしれないな。
僕は、昨日やけに人の顔見て怯えていた筋肉ダルマを思い出しながら、野郎に抱きしめられても嬉しくは無いこの状況を、どうやって打破しようかと考えていた。
紅茶を飲むと何故かお腹を壊します。
匂いも味も嫌いでは無いのに、何故か百発百中で壊します。何故だ!?
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も同じ頃更新致しますので、また宜しくお願い致します。