五十八話目 睨み合いは長くは続…かない②
3月20日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
『突然に申し訳ない。この街に、シエロ・コルトと名乗る御仁はおられるだろうか?』
街と街道を繋ぐ門の外側にドンと立つ小高い山の様な姿の竜は、武装をして出て来た我々の姿を見つけると、こう、流暢なヒューマン語で話し掛けてきた。
授業や絵物語等では、長い時を生き、知識を蓄えた竜は人の言葉を解し、紡ぐ事が出来ると聞いた事はあったが、現実に理性ある声音で、こうはっきりと話された時、小さなヒューマンが発する事の出来る言葉など、少ないのかもしれない。
「へっ?」
少なくとも、俺が発する事の出来た言葉はこれだけだった。
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「では、貴方様は弟に会いにわざわざ此方まで?」
『えぇ。シエロ様に是非とも成長した我が姿を見て頂きたく、母の許可を得てやって来た次第です』
こんな街の外で立ち話?も何だから。と、俺はシエロのご友竜?を、辺境伯邸ーー体が大きくて屋敷の中には入れないだろうから、正確には庭までになるだろうけれどーーまでお連れする事になった。
俺達を呼びに来た、庭師のドーマさんにはそのままシエロを呼びに行ってもらい、俺達はドラゴンさんと話しながら歩いている。
何故魔道具を使って連絡を取らないの?と、もしも聞かれたならば、もう5~6回くらい試したんだけど、繋がらなかったんだ。としか答えられない。
ここまで繋がらない事など今まで無かったので、……何処に居るんだ?と言う疑問に思う事よりも、ちょっと心配の方が勝った俺は、父様に許可を頂いてドーマさんに王都まで行ってもらったのだ。
しかし、それにしてもうちの弟はいつの間に、こんな位の高そうなドラゴンとまで友達になっているんだろうか?
思えば、あいつは学生の頃から色々と問題ばかり起こしていたからなぁ。
俺の目の病をたちまち治してしまったり、年が一桁の内から高性能な魔道具を次から次へと作り出してみたり、魔族の幹部と学園の中にいながらにして戦ってみたり。
…等々。幼い弟が巻き起こす数々の偉業に、初めの内は誇らしかった俺だったけれど、最近はやや胃もたれ気味…いや、通り越して胃が痛い。
俺は、意外にも地響き1つ立てずに歩くドラゴンさんの姿に感心しつつ、目の前の問題事に必ずと言って良い程首を突っ込んでいく弟の姿を思い出して、治りかけの胃と頭がまた痛みだした気がした。
『ははは、窓から手を振ってるな』
《ドラゴンさ~ん!》
『あはは、お騒がせして申し訳ない!』
《キャー!》
いくら彼を街の中に入れる時、先に伝令を走らせて混乱を回避したとは言え、慣れすぎだろう街の人達よ!!?
何処にドラゴンに手を振られて喜ぶ一般市民が居ると言うんですか!?
『此処は良い街ですね?』
「ありがとうございます。私自慢の街ですからね?」
あっ、領主からしてこの性格だったか…。
はぁ、ドーマさん。早くシエロを連れてきて下さい。
そして、俺に少し説教させて下さい!!
ドラゴンさんとにこやかに話す、父と祖父の逞しくも能天気な姿に、俺は思わず空を仰いだ。
中々に能天気なシュトアネールの街の住民達の性格は、幼い頃からやらかしまくるシエロのせいもある様な気がしますww
さて、本日も此処までお読み頂きましてありがとうございました。
春の彼岸の為、誠に勝手ながら明日から3日間程お休みさせて頂きます。
こんな中途半端なところで一旦区切る事になってしまい、本当に申し訳無いのですが、次の土曜日。24日には更新を再開出来ると思いますので、また宜しくお願い致します。