四話目 再会④
1月15日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
ニッコリと微笑んだ僕の顔を見て、ガタガタ震えて怯えるリチャードの青い顔を見ながら、僕は更に脅しをかける。
「レベルが5になったら?んフフ、どうなるだろうなぁ?意識は無くなり、命令された事だけを行う人形にでもなるんじゃないかな?
まぁ、俺がお前なら、今すぐにでもギルドに駆け込んで、ギルマスに懺悔でもして助けてもらうかなぁ?
ギルドになら、解呪を使える光魔法の使い手の1人や2人、いるだろうからなぁ?」
「ぎっ、ぎるど!まっ、ますたー!!」
あっ、逃げた。
僕の脅しが功をそうした(?)のか、リチャードは真っ青な顔を白か土気色くらいの色にさせながら、すごい早さで路地裏から逃げ出していった。
それはもう、脱兎の如く。ってやつだ。きっと、ギルドまであの速度で走り抜けて行くだろう
けど、途中で見失っても僕が付けた【印】があるから、大丈夫だろう。
……さて、と。僕はどうしたものかな?
僕は、合図を送ってくる仲間に対して、ヒラヒラと片手を振って合図を返すと、ポリポリと頭を掻きながら、ローブ姿の女性の方へと向き直った。
リチャードの方は、【本当に】ギルマスから直接依頼を受けた仲間に任せるとして、僕は女性のケアをどうにかしましょうかね?
「あの、助けて頂き、感謝申し上げますわ。でも、あの方をそのまま逃がしてしまって良かったんですの?」
ローブ姿の女性は、まだフードを被ったまま、僕にそう訊ねた。
まだ少し、僕に対しても不信感を抱いている様だ。
「あぁ、大丈夫です。僕の仲間がリチャード…。あの大男を追いかけて行きましたから」
「仲、間?」
「えぇ、そうです。本当は僕ではなくて、仲間が受けた依頼なんですよ。僕はたまたま前を通りかかったんで、その仲間から頼まれて、あいつにつけた【印】を発動させただけですから」
「そう、だったんですの…」
ヘラっと僕に合図を返した仲間の宇美彦のヘラ顔を思い出しながら、僕は正直に答える。
ついでに口調もいつものものに戻せば、女性から発せられていた負のオーラ的な物も、少し和らいだ気がした。
「先程の魔法は、【隷属の腕輪】ですわよね?」
「えぇっと、あれは似ているんですが【隷属の腕輪】ではなくて、【裁きの腕輪】と言いまして…。あれ?」
「?どうか致しまして?」
ちょっと唐突だったかな?とも思ったけど、声が出ちゃったんだからしょうがない。
目の前の女性が目深に被っていたフードがずれて、中からチラリと優しげな緑色の瞳とパッツンな黒い前髪が見えた。
最後に会った5年前よりも、背も伸びて随分大人っぽくなっていたけれど、どこか懐かしい優等生ちっくな雰囲気を感じて、気づけば声を上げていたんだ。
「あっ、すいません。えぇ~と、間違っていたらごめんなさい。もしかして、貴方はクレアさんではありませんか?」
「えっ?えぇ、確かに私はシャーロット・クレアですが…」
あっ、しまった…やっぱり突然過ぎたよな。話しぶったぎっちゃった訳だし…。
大分和らいでいた空気が途端にピリついた物へと変わる。
さっきまで見知らぬ大男に襲われていて、ただでさえ不安だってのに、今度は見知らぬ小男が自分の名前を呼んだんだ。
こうなるのは当たり前だよね?
「シャド?出ておいで?僕の変身を解いてほしいんだ」
僕はなるべく彼女を刺激しない様に、出来るだけ優しい声で【今日の】相棒を呼んだ。
すると、僕のお腹の辺りから、モクモクっと紫色の煙りが拳2つ分くらい立ち上ってきた。
そして身構えたクレアさんの前に、足先まである長い、黒に近い紫色の髪の毛を持った、小さな妖精が姿を現した。
「ん。し、しえろ。よんだ?あっ!今はそっ、そらたらった!!しゃろまちがった!」
「シエロですって!?」
目の前に現れた小さな精霊シャドの言葉を聞いて、クレアさんが叫んだ。
妖精表記と、精霊表記とが混在していますが、仕様となっておりますので、予めご了承頂ければと思います!
此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。