五十七話目 睨み合いは長くは続…かない①
3月19日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
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《side:プロクス・コルト》
厄介な事になった。
此処まで厄介な事件が起こったのは、俺がまだ学園に在籍していた頃以来ではないだろうか?
今、俺のすぐ目の前には山が居た。
時間は少し遡る。
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「そろそろプロクス、お前も嫁さんを見つけんとのう?今年で21じゃろう?」
「お祖父様、お顔を合わせる度にそのお話しをするのは止めて頂けませんか?今は父様から領地経営を学ぶ事で手一杯。もう少し軌道に乗る迄、そんな余裕はありませんよ」
「はっはっはっ、今からそんな真面目で堅苦しい感じになってはいかんのう?」
珍しく此方へ遊びにいらしていたお祖父様にからかわれていた俺は、父様から今月の収支に関する書類の相談をしていた。
因みにお祖父様がこうして俺の事をからかうのはよくある事で、どうやら俺の態度を楽しんでいるらしい。
そんな折。はぁ、と俺が小さなため息を吐いたのと、外からの異変を知らせる揺れが起こったのとは、ほぼ同時だった。
俺は、すぐさま窓の外を見る。
「妖精山か!?」
この街には火を生み出す山があり、そこには火の妖精達が沢山住んでいる事から、【妖精山】と言う愛称で親しまれていた。
この山は、【温泉】や高温の蒸気等々、この街に多大な幸せももたらしてくれたが、それとは別に同じくらいの脅威も隠し持っていて、生きている山だからこそか、はたまた火の妖精達のイタズラか時々火を噴く。
その際、今の様な地面の揺れを感じる為、今我々が居るこの部屋の、山へ向いた方の窓に、大きな窓が嵌め込まれていた。
神として山を崇めやすくする為と、火を噴く時の前兆を少しでも感じ取りやすくする為だ。
だからこの時も、いつもと同じ様に山を見た。が、山はいつもの様に雄大に、平然とした姿でそこに鎮座しているだけ。
俺の目には、山肌に穏やかな日差しが注ぐ、平和ないつもの山にしか見えなかった。
?
今までも、この様な地面の揺れは幾度もあったが、多少なりとも何かしらの変化が山には起きていた。しかし、今回の揺れにはそれが無い。
おかしい。おかしい。
《ボォオッ》
《コンコン!》
疑問符が浮かぶ俺の耳に、暖炉の火が不自然に炎を上げる音と、早いリズムで扉を叩く音が聞こえたのは、ほぼ同時だった。
「む。入れ」
「はっ!」
お祖父様の許可を受け、音の主が入室してくる。
《カチャッ》
「はっ、失礼致します。御館様大変です!」
入ってきたのは庭師のドーマさんだった。
《ボボォオウ》
「大変だよプロクス!街の外に……!!」
一際大きな炎が暖炉内に上がり、中からドーマさんの言葉を繋ぐ様な声が聞こえた。
声に続いて、炎の中から手のひらサイズの青年が姿を現す。
「何じゃとぉっ!?」
俺の炎の精霊の言葉を受けて、我が家の英雄が雄叫びを上げた。
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そうして、お祖父様が己の得物である三ツ又の槍を手に飛び出して行ったのを追いかけ、街の外へ出ると、そこにはいつもなら有り得ない位置に山が居たのだ。
茶色の肌に、背中から体に沿って青いラインが通ったその山は、面白そうに此方を見下ろしている。…様に見えた。
俺の前に居たのは、山の様な大きさのドラゴン。
ワイバーン等の亜竜種とは違う、本物の竜種がそこには居た。
シエロの実家に現れたドラゴンは敵か味方か!どっちでしょうね?(シレッ)
本日もここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も18時頃更新致しますので、また宜しくお願い致します!