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五十三話目 薬草園


3月15日の更新です。

本日も宜しくお願い致します。



 見慣れたライオンヘッドの先生に手を振りながらテレポート装置を抜けると、開け放たれた扉から心地よい風が頬を撫でた。


 扉を抜けて装置室を出ると、辺り一面には花や実をつけた植物と共に、ワサワサと伸びる葉っぱだけの植物がモサモサ生えている。


 その奥にはこじんまりとしたログハウスが見え、そこから薬を調合しているらしき独特の臭いが漂ってきた。


 でも僕にはとても落ち着く臭いに感じるんだよね。何故か癖になる臭いなんだもん。


「よく学園には来てくれていましたが、ここへ来るのは久しぶりでしたね?オスクロも寂しがっていましたよ?」


「あー、すいません。最近やっと時間が取れる様にはなってきたのですが…」


「フフフ、冗談です。あまり気にしないでくださいね?さっ、早く中へ入りましょう?」


「はい」


 ニコニコとご機嫌なランスロット先生に続いて、ログハウスの扉を潜る。


 扉を潜る時に、木の良い臭いがした。


「キヒ、これは珍しいお客さんだねぇ?」


 聞こえた声の方を向くと、全身黒ずくめのすらりとした女性が立っていて、僕の顔をニヤニヤしながら見ていた。


 袖と裾が黒いレースで縁取られたワンピースに、緩く編まれた真っ黒のカーディガンを纏うその姿は、某闇の女神よりも闇々しい。


 前髪が長すぎて顔が見えないところも、緩いウェーブがかった真っ黒の髪の毛をゆらゆらと左右に揺らすその様も、この人は6年前からちっとも変わらない。


 この個性的な女性は、僕のクラスメイトでもある、ルーナス・マジョリンさんのお母さんで、オスクロ・マジョリンさん。


 彼女は、此処で学園内に生えている全ての植物を管理している、植物学・薬草学のエキスパートで、意外にも闇属性は持ってはいない。


 オスクロさんは見た目からも暗闇が凄く似合うので、何で闇属性がついていないのかと皆からも不思議がられている。どうやら学園の七不思議にもそろそろ入るかもしれないとは、数年前から良く聞く噂だ。


「お久しぶりです、オスクロさん。ご無沙汰してしまって申し訳ありません」


 僕がそう彼女に向かって挨拶すると、目の前の彼女は訝しげに僕の顔を覗き込んだ後、キヒキヒと不気味に笑いだした。


 なっ、何?


「キヒヒ、キヒヒヒヒ。あんたねぇ?クラスメイトと母親の顔くらいちゃあんと見分けなよね?キヒキヒ、あ~、久しぶりにこんなに笑ったわさ」


「えっ!?マジョリンさんの方だったの?」


「んん?そりゃあどっちもマジョリンには違いないけどね?あたいはルーナスの方さね。キヒヒ、あんたは相変わらずだねぇ?」


 うわぁあああ!?オスクロさん(お母さん)ルーナスさん()間違えたぁあああああああ!!


 と、僕がやっちまった感満載で頭の中でのたうち回っていると、


「お母さん、何シエロ君からかって遊んでんだい?その子、すぐ信じるんだからその辺で止めときなよ?」


「キヒ、つまらないねぇ」



「……え?」


 ルーナスを名乗った女性の後ろから、彼女とよく似た女性が呆れた様な顔をしながら出てきた。


 手にはボコボコいっている鍋を厚手のミトンで持っている他は、殆ど同じ見た目に同じ服。


 ただ、鍋を持っている方が少し背が低く、こちらは編み目がきっちりとしたカーディガンを黒いワンピースの上から羽織っていた。


「えっ、と?」


「キヒヒ。あんまり此処へ顔を出さないもんだから、母さんに謀られたね?久しぶり、シエロ君。母さん、あんたに会えなかったから少し拗ねてんのさ。悪いね?」


「嫌だね、拗ねて何かないよぉ。シエロ君はからかいがいがあるからね?楽しいだけさね♪キヒ。まぁ、お茶でもいれようかねぇ」


 そう言い残して、オスクロさんは部屋の奥へと消えていった。


 かっ、からかわれただけですか。そうですか……。


ーーーーーー

ーーーー



「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 お茶のみもそこそこに、薬草園の隅っこの少し開けた場所に出てきた僕達の中で、狂ったように笑っているのは意外にもオスクロさんだ。


 え?意外でも何でもないって?キヒキヒ笑う意外の笑い声を初めて聞いたんだから、意外って事にしといてよ。


「あは、あはは。あ~笑った笑った。しっかしやっぱりシエロ君だねぇ?あぁ~死ぬかと思った」


 どう言う意味だよ!


「本当に貴方は話題に事欠きませんね?はぁ~、この世に生を受けて早60数年経ちますが、此処まで大きなマンドレイクは初めて見ましたよ…」


 呆れた様にマンドレイク君を見上げるイケメンエルフは、20年くらいしか生きていない様な爽やかな青年の様な顔をして、何とも爺むさい事を言って述べた。


 どうやら、2人は僕がトラブルメーカーだと言いたいらしい。が、事実だけに何も言えない。


『そんなにぼぉくのすがたってぇ~、おかしいんかなぁ?すいませぇん~』


「いえいえ、貴方ほど立派な体躯のマンドレイクはそうはいないと言うだけの話です。寧ろ、誇っても良い!恥ずかしい事ではありませんよ?」


『ほんまぁ?いや、うれしわぁ~♪』


 マンドレイク君が、ランスロット先生の先生らしい言葉を受けて、嬉しそうに笑った。


 よかった。やっと笑ってくれたよ。どうやら彼?、此処に連れてきた時点で自分はバラバラにされてしまうのではないか?と怯えていたらしいんだよね?


 怖がるといけないからと、一緒に魔導袋の中に入ってくれた咲良ーー何故か精霊も入れました。どういう基準なんだかよく分からないね?ーーが必死になって慰めていたくらいだから、よっぽどの怯え様だったみたいだ。


 さて、この様子なら大丈夫だとは思うけど、マンドレイク君は、無事に此処の薬草園で住まわせてもらえるんだろうか?


 此処まで来て、バラバラにはされないとは思うんだけど…。



果たしてマンドレイクの運命やいかに!!


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します!


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