五十二話目 新しい居場所
3月14日、ホワイトデーの更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「ごめんね?苦しいかもしれないけど、ちょっとそこで我慢してね?」
『『ありがと~、ここぉはぁ~あんがいとぉ、快適だぁ~よぉ~?』』
僕が声を掛けると、エコーがかかった様な間延びした声が返ってきた。元々間延びした様な声が、余計にびよびよしていて面白い。
今、マンドレイク君には魔導袋の中に入ってもらっている。
マンドレイクは元々自立歩行も出来る種族なので、歩いて移動する事も出来たんだけど、何せ彼?は葉っぱだけでも2階建ての建物クラス。
それだけでも異常な大きさなのに、更に立ち上がってもらったら4階建ての建物にも届こうか?と言う程の高さになってしまった。
流石にそこまでの大きさのマンドレイクが、怪獣宜しく街中を闊歩しようものならば、討伐対象として兵士や冒険者達が討伐隊を組んで駆け付けてくるレベルになってしまうので、苦肉の策で魔導袋に入ってもらう事になったんだ。
誘拐や密猟目的での使用を避ける為、本来魔導袋は生きているものは入れられない仕様になっている。
だから今回、マンドレイク君を入れるのは無理かな?とも思ったんだけど、駄目元で1度入ってもらったら意外にもすんなりと入れてしまった。
植物は虫や何かがくっついていない限りは入れられるので、一応彼?も植物に分類されたらしい。
ただ、大きさの問題で引っ掛かってしまったので、急遽その場で魔導袋を改良して事なきを得た。
まさか魔導袋に魔石を5個も使う日が来ようとは思っても見なかったけどね?
ハハハ、最近魔石の消費が激しいなぁ。…ウゥゥ。
「これならマンドレイクさんを連れて街の中を歩いても平気ですわね?」
「そうで御座いますね、お嬢様。…ところでシエロ様?そのマンドレイクさんを何処へ連れていくおつもりですか?王国の研究機関でしょうか?」
「そんな大それた所に知り合いは居ませんので、今回はシンプルにあそこですよ?」
「あそこ、ですか?」
そう言って僕が指差した先を、リーマさんは不思議そうに見つめていた。
あそこはあそこです!!
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「なるほど、それで此方へ?」
「えぇ、他にマンドレイク君にとって最適な場所を思い出せなくて…。すいません」
「いえいえ。私としては、卒業生がこうやって私を頼ってきてくれるだけで嬉しいので、なんでもありません。まして、突然変異の植物を寄贈してくれると言うのならば尚更嬉しい」
「あはは、ありがとうございます」
そう言って、目の前の御仁は手を最大限に広げて嬉しさを表現してくれた。
肩に乗った、パッと見妖精にしか見えない精霊さんも、同じ様に手を広げて同じポーズを取っている。似た者同士、相変わらず仲が良い。
さて、もう分かったかもしれないけど、僕がマンドレイク君を連れてやって来たのは【聖ホルド学園】。
6年前に卒業した、僕の思い出の学舎だ。
6年前と比べても机も椅子もそれ程小さく感じなかったのは、僕がチビだからか、何なのか?……これ以上は悲しくなるから止めておこう。
よく魔石を卸しに来るからだよね!うん、久しぶりって感じがしないからだ!きっとそうだ!!
「それでは早速、薬草園の方へ行きましょうか?」
で、このニコニコと爽やか過ぎる笑顔を見せてくれているイケメンは、僕の恩師のランスロット・フェザー先生。
お尻くらいまで伸びたさらさらの銀色の髪と、そんな髪色に意外と相性の良いシルバーグリーンのちょい角ばった眼鏡をかけたエルフ。シュッと背が高くて、黙っていれば女子が好きそうな恋愛シミュレーションゲームに出てきそうな外見をしているよ?
うちの祖父さんとは昔パーティを組んでいたそうで、その縁もあって何かと卒業してからもお世話になっている先生です。
「あぁ、君が持ってきてくれるマンドレイクですからねぇ?一体どんな子なんでしょうか…んフフ。んフフフフ」
眼鏡の奥をギラリと光らせながら、ランスロット先生は気持ち悪い笑いを浮かべつつ、部屋を出ていった。
……これさえなければイケメンのままでいられるのになぁ…。
すぐホルマリン漬けにする。でお馴染みの、え?聞いた事無い?あれ?
とにかく!唯一のエルフのおっさんw、ランスロット先生をようやく此方でも登場させる事が出来ました~。
さて、巨大マンドレイクはホルマリン漬けにされてしまうのか!?
そもそも、そんなデカイ容器があるのか!?
明日も更新致しますので、続きをお楽しみに!!宜しくお願い致します!