五十一話目 マンドレイク②
3月13日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
今僕の目の前にいるマンドレイク君は、いつのまにか1つぼっちになっていた。と言っていた。
けど…。
「ねぇ咲良?マンドレイクってさ、確か近隣の植物を吸収して、自分の体を補ったりするんじゃなかったっけ?結構食欲旺盛な植物だったよね?」
「はい、確かにその様な性質を持っています。土の中の養分が足りない場合に、よく彼らがやる行動だった筈ですよ?」
しょんぼりしているマンドレイク君を尻目に、僕と咲良はヒソヒソと後ろを向いて、堂々と内緒話中。
本当だったら、こんなダンジョンのボスみたいなのを前にして背中を見せる何て言語道断な行動だけど、何となくこの子なら大丈夫そうな気がする。
いつもはこう言うのにうるさい咲良もすっかり気を抜いている事からも、大丈夫な気がした。
さて話しを戻すけど、たぶんマンドレイク君はウトウトしている間に、無意識の内に仲間達を吸収してしまったんだろう。
そう言う結論になった。
咲良曰く、此処の土は結構栄養豊富で、植物が育つにはとっても良い環境らしい。けど、こんなに巨大化してしまっては土から摂取出来る栄養だけでは足りなかったんだろうね?
だけど、君は他の仲間達を根こそぎ吸収して大きくなったんだよ?なんて正直に話したら、きっとこのマンドレイク君は泣き出してしまいそうなので、なるべくその辺には触れない様にしようと言う話しで、落ち着いた。
『なぁ?なに話してるん~?ほったらかしはさびしいやんかぁ~』
しまった。ほったらかし過ぎた?
マンドレイク君は、白くて短い手を伸ばして、僕の背中をツンツンとつついてきた。
彼的には軽くやってるつもりなんだろうけど、体格差がありすぎて結構な衝撃が体にくる。
何とかその攻撃?に耐え、笑顔でマンドレイク君に向き直ると、
「あぁ、ゴメンね?君をお友達の居る場所に連れていったらどうかなぁ?って話していたんだよ?」
すっかりしょんぼりしてしまったマンドレイク君に僕はそう話しかけた。
「そうそう、どうだ?マスターに付いていけば、仲間が沢山いるぞ?」
もしかして食べた?食べた!って話しをしていた僕らがそんな話しをしている訳無いんだけど、咲良はサッと僕の話しにのっかってくれた。流石ッス!咲良さん!
『ほっ、ほんまに!?うわぁ!うれしなぁ~うれしなぁ~』
すると、マンドレイク君はゆらゆらと葉っぱを左右に嬉しそうに揺らした。ってアブねぇ!こっちにも葉っぱ近づいてきたぞ!?
止めて!毒針付きの葉っぱ振らないで!!
「ほら、そんなに暴れたら駄目だろう?新しい場所で嫌われてしまうぞ?」
『あっ!そっ、そうやね?ごめんなさい。ぼくなぁ?よいこにするっ!やくそくするわ!』
咲良さんナイス!
「うん、ありがとうね?さて、と。取り敢えず、君のお話しをしなくちゃね?この家の人を呼んでも良いかな?」
『うんっ!』
よいこにする。って本人?も言っているし、クレアさんにも話しておいた方が良いだろう。そう言う事になった。
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「本当に大きなマンドレイクさんですわね?」
「私、この世に生を受けて数十年経ちますが、この様に立派なマンドレイクは初めてに御座います」
早速あらかじめ決めておいた合図を送り、クレアさん達に外へ出てきてもらった。
全身を土から出して座っているマンドレイク君の姿を見上げて、2人は口をあんぐりと開けている。
『かってにぃ、ぼくおにわかりてました。ごめんなさい』
あんぐりと口を開けて自分を見ているヒューマン2人に、マンドレイク君はペコリとお辞儀をした。
彼?はこの為に地面から這い出してきたんだ。何でも、勝手にお庭に住み初めた事で家主であるリーマさんを怖がらせてしまった事を謝りたかったんだって。
「これはご丁寧にありがとう。私も勝手に怖がったりして、ごめんなさいね?」
さっきクレアさん達が出てくるまでの間に少し練習したから、クレアさんとリーマさんにマンドレイク君の葉っぱが襲いかかってくる事は無く、座りながらではあったけど、心から謝った彼?の態度を受けて、リーマさんもゆっくりと頭を下げる。
辺りには、さっきまでとは違った、ポワポワした柔らかい空気が流れ出していた。
ファンタジーなマンドレイクは、何となく周りの植物の栄養分まで吸い取っていきそうなイメージが勝手な思い込みながらあったので、物語内にも反映させてみました。
本物のマンドレイクにそこまでの生命力があるのかは分かりません。
あくまでもファンタジーと言う事で!
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します。