四十七話目 謎の植物
3月8日の更新です!
本日も宜しくお願い致します
「シエロ様に是非とも取り除いて頂きたい植物は、私の家の庭に生えていたので御座います。庭に植えてあった他の花や木が枯れてしまっていて、代わりに問題の植物が…」
「なるほど、それはお困りでしたね?」
「えぇ、ですから冒険者ギルドにご依頼させて頂いたので御座います。流石に私の手には余るものでしたので、慌ててギルドへ使いをやった次第です」
僕とクレアさんは、腰のしゃっきり伸びたリーマさんの案内で、この屋敷の中庭へと繋がる廊下を歩いている。
元々は、とある男爵家の持ち物だったそうだけど、その家が没落して屋敷を手放す際、親交のあったリーマさんのお母さんならとその元男爵様が譲ってくれた屋敷なのだそうだ。
元男爵家の持ち家だっただけに建物だけでも広く、更に街の外れにあるからか、屋敷だけでは無く、庭もそれなりに広いそうだ。
僕らが通っていた学園の中庭くらいはあるそうなので、テニスコートで言うならば10面分くらいは軽くあるかな?
それで問題の謎の植物なんだけど、植物の葉っぱ部分だけでその広い庭の約半分を占めている程、巨大な植物なんだって!何だか今から見るのが怖いよ…。
あっ、そうそう。
リーマさんの腰と膝の痛みの原因は、加齢性の骨の歪みと軟骨の磨り減りによる、末梢神経の痛みだった。
魔法で骨の歪みを正して、磨り減った軟骨を補ったら、【痛みが嘘の様に消えまして御座います!】と、その場でリーマさんはバク転を披露してくれてさ?本当、驚いたよ。
急にアクティブに動き出したリーマさんに、僕とクレアさんが言葉を失ったのは当然の事だと思う。
改めて魔法って凄い!って思ったら良いのか、初老の段階を軽く越えて尚、バク転出来るリーマさんスゲー!って思ったら良いのか、悩む。悩むったら悩む。
「ではシエロ様、この扉を開けますと中庭に通じて御座います。件の植物は扉を開けた目の前に御座いますので、お気をつけ下さい」
「え?」
思わず疑問系で返してしまう。【気を付けろ】って何から!?
しかし、リーマさんは僕のそんな疑問に気づく事無く、さっさか中庭へと続くと言う扉を開けてしまった。
《ギィイー》
部屋までの扉と比べると貧相な扉は、錆びかけた蝶番が悲鳴を上げているのに構わずゆっくりと外側へ向けて開いていった。
薄暗い廊下から明るい外へと出た為か、少し目が眩む。
「うっわ…」
右手で光を遮りながら庭の方へと視線をやると、リーマさんが早く取り除いて欲しいと言う理由が良く分かった。
くすんだ緑色の葉っぱは、光を吸収するかの様に暗い色をしていて、葉脈の部分だけ鮮やかな紫色をしている葉っぱは、それ1枚が建物の2階部分くらいだったら軽く届きそうな程大きい。
長い。ではなくて大きいなのは、縦にも横にも幅があるから。
タンポポと茄子の葉っぱを足して2で割ったみたいな、長めの楕円形の葉っぱは、表面に無数の棘が生えていて、見るからに禍々しい。
1つの棘が僕の手のひらくらいあると言えばヤバさが伝わるかな?
兎に角、そんな軽く引くレベルの葉っぱが、リーマさんのお宅の庭の一角に4枚、密集する形で生えていた。
「うわぁ~。これはまたエグい物が生えて来ましたね?」
「私も、先程リーマから見せられた時に絶句しましたわ。リーマが冒険者協会に行く前でしたら、先生を呼びに走っていたでしょうね?」
「その方が早かったかも知れませんね?ハハハ、兎に角、一度近くで見ても?」
「シエロ君にはお手数をかけて申し訳ありませんが、宜しくお願い致しますわ?」
「宜しくお願い致します」
「了解です」
取り敢えず建物の中から観察出来るのはそんなところくらい。
僕はクレアさんとリーマさんに許可を貰って、ソロ~っと庭へと出てみる事にした。
《ザクッ》
森の入口にあっても陽当たり良好なこの庭は、本当ならハーブとか、色とりどりなお花とかが似合いそうだ。けれど、庭の片隅に生えた矢鱈とオーラを放ってくる、得体の知れない植物がそれを許さない。
《ザクザク》
街から離れている事もあって、この屋敷周辺はとても静かだ。
屋敷の中から此方を伺っている元主従の2人が黙り込んでいるので、僕の足音が矢鱈と響く。
《ザク》
距離にして2~3メートル弱。本当に屋敷からは目と鼻の先に植物が生えてきていた事になる。
「近付くと余計におっきく見えるなぁ…。えぇと?どれどれ?……ん?」
一度、植物の全体像を見上げて見てから、僕は植物の根元の辺りを観察してみる事にした。
今もクレアさん達が居る、あそこからでは分からなかったけど、葉っぱの根元には、何やら白いものが見える。
葉っぱの形がちょっと違うけど、それはまるで大根の様にも見えた。
「もしかして大根だったりする?」
僕が土から少し顔を出している部分に触れようと、恐る恐る手を伸ばした。そんな時。
「取り敢えず触って確かめ様とする癖を治してくださいませんか?」
僕の背後から伸びてきた手が、僕の手を掴んで止めた。
背後から近づいてきたのは誰だ!!
まて次回!!
注》作者は花粉症で変にテンションが高くなっております。ご注意下さい。
さて、本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新出来ると思いますので、また宜しくお願い致します。