四十五話目 依頼の確認①
3月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「ふふ、驚かせてしまって申し訳ありません。此処は私のばあやのお家ですの。御指名させて頂いたのは私の一存でしたの、ご迷惑だったでしょうか?」
「とんでもない!またクレアさんにお会い出来ただけでも此方へ来たかいがありましたよ。でも、それなら僕に直接連絡してもらったら良かったのに」
「うふふ、もうばあやがギルドへ依頼してしまった後でしたのよ?だから、私がそこへ少し依頼内容を足させて頂いて、シエロ君へお話しが行く様にさせて頂いてしまいましたの」
ウフフ、と楽しそうに笑うクレアさんに魔女の館っぽいお屋敷の中を、案内してもらいながら、僕は歩いていた。
当たり前だけど、昨日とは違いクレアさんはずっとニコニコしていて、彼女の笑顔のお蔭か、薄暗くて飾り気の無い廊下が明るく見える。
まぁ、言うとクレアさんは照れるだろうし、僕もそんな歯の浮きそうな台詞を言うつもりも無いけどね?
「そうだったんですか。ところで、クレアさんのばあやさん。と言う事は、普段は此方に住んではいないんですか?いつもはクレアさんのお家に?」
「いいえ。残念ながら、ばあやは少し前から隠居していますの。彼女も年ですから、腰や足が痛むのだそうで…。この家に来てすぐに私も診て見たのですが、原因が分からなくて…」
さぁ、此方ですわ?そう言いながら、クレアさんは廊下の突き当たりにあった3つの扉の内の、一番大きな扉を開けた。
《キィ》
意外にも軽い音を立てて開いた重厚そうな木の扉の奥には、大きめの暖炉と、寛ぎやすそうなテーブルとソファーのセットが置かれたリビングが見える。
落ち着いたクリーム色の壁紙がまたその部屋にマッチしていて、とても温かい雰囲気のお部屋だった。
《パチパチ》
暖炉の中の薪が爆ぜる音が聞こえる。この部屋のBGMは、薪の爆ぜる音のみ。とても静かだ。
「リーマ、シエロ君をお連れしてよ?」
そこへクレアさんの良く通る、凛とした声が響く。
それに反応する様に、部屋のほぼ中央、暖炉の前にちょこんと置かれた椅子の上に座っている女性がゆっくりと立ち上がろうとした。
「お嬢様にお客様のご案内をさせるとはリーマ一生の不覚。誠に申し訳も御座いません」
「もう!そんな事気にする事は無くってよ?ほら、痛むのでしょう?お座りなさいな。それに、お客様の前でしてよ?私にばかり構っていないで、ご挨拶して頂戴?」
クレアさんが困った様な、少し怒った様な複雑な顔をしながら女性を椅子に押し戻す。
白髪混じりのブロンドの髪の毛を後ろで一纏めにしたばあやさんは、心底申し訳無さそうにしながら、ユルユルと椅子に座り直した。
うん。クレアさんの言う通り、腰と膝を庇っているな。
「お客様、お見苦しいところをお見せしました。重ねて、この様な格好でご挨拶させて頂く事をお許し下さい。私はリーマ・カリーコと申します。この度はお越しくださいまして、誠に有難う存じます」
クレアさんと楽しそう?に掛け合いをしていた上品そうな老婦人は、クレアさんの言葉を受けて視線を彼女からずらした。
そして直ぐ様僕の姿を見つけると、ピッと姿勢を正して優雅なお辞儀を見せてくれる。
椅子に腰かけたままのお辞儀だったけれど、家のメイド頭に負けないくらいの優雅なお辞儀に見える。流石はクレア男爵家の元ばあやさんだ。
「いえ、どうかお気になさらないで下さい。この度はご指名頂きまして有難う御座います。シエロ・コルトです。本日は宜しくお願い致します」
丁寧なご挨拶には、丁寧なご挨拶を。
小さな頃から、そう今世の両親に教わってきたけれど、今の僕は【冒険者】のシエロとして此処に居るので、敢えて辺境伯家の次男としてでは名乗らなかった。
「これはご丁寧に有難う御座います。此方こそ本日は宜しくお願い致します」
どうやら僕の挨拶の仕方は正解だった様で、ばあやさんはニッコリ笑いながら頭を再び下げてくれた。
リーマさんは他所のばあやさん何だけど、何かうちのメイド頭に通じる所があって落ちつかない。何か間違えたら怒られそうで怖いと感じるのは僕だけだろうか?
お忘れかもしれませんが、シエロは辺境伯家の次男坊です。
結構厳しめに社交性を学ばされていたので、ばあやさん的な初老の女性にトラウマを持っていたりしますww
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も18時頃更新出来ると思いますので宜しくお願い致します。