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四十四話目 依頼主の下へ


3月5日の更新です。

本日も宜しくお願い致します




「えっと、此処かな?」


 王都の外れ。西門の近く…と言うかほぼ西門の外側に位置する場所に、今回の目的地はあった。


 古びた、でも何処かがガタついている訳でも、壊れているわけでも無く、良く言えば歴史を感じさせる一軒家。


 チラリと目を建物からずらせば、横に広がる腰くらいの高さの石垣が見える事から、建物の奥に広い庭があるであろう事が見てとれた。


 さて視線を建物に戻してみる。


 外壁たる赤茶色の煉瓦はビッシリと蔦にまみれていて、漆喰で縁取られた素敵な出窓や、シックながらも微細な彫刻が施された窓も、窓が開けば良いとでも言わんばかりのお情け程度にしか蔦が刈られていないその様は、何だかおとぎ話に出てくる悪い魔女の住みかの様にも見えた。


 こんな、お屋敷とも言える立派な建物の近くに他の家は無く、門のほぼ外側の、こんな森の入り口にポツンと一軒だけ建っているのも、この家がそう見えてしまう要因の1つなのかもしれない。



「思ったより立派なお屋敷だったな…」


 僕はお化け屋敷か魔女の住む館か。な、1種の威圧感さえ感じさせるお屋敷を見上げてポツリと感想を漏らした後、怖さを紛らわせる為にと、ギルマスから渡された依頼書の地図をもう一度確認してみた。


 うん、此処が間違いなく目的の場所みたいだ。


 …間違いなら良かったのになぁ。




「ふぅ…。うっし!」


 僕は息を吐いてから思いっきり息を吸って気合いを入れ、心に湧いた僅かな恐怖心を祓うと、牛を象った銀のノッカーを掴んで、そのまま煤けた茶色の扉をノックした。


 牛って珍しいな…。普通獅子とかじゃない?僕の気のせいかな?


《カンカンッ》


 そんなどうでも良いことを考えながらノッカーを振り下ろすと、金属と木の板がぶつかり、軽い音が鳴った。


「御免下さい!冒険者ギルドから参りました。シエロ・コルトと申します!!」


 周囲を気にする事無く、僕は大声で中に居る筈の依頼主へ向けて挨拶をする。


 周囲を気にしないのは、周りに一軒も家が無い事と、今回の依頼主が少し耳が遠い為。


 因みに僕が今、【ソラタ】では無くて【シエロ】の姿に戻っているのは、依頼主が【シエロ】を名指しで指名してきたからだ。


 ソラタの方では無く、シエロの方での指名依頼は何気に初めての事だったので、ちょっと嬉しい。いや、凄く嬉しい。



「は~い」


 森の中、と言っても半分くらいは間違って無いかな?とも思える玄関口で暫く待っていると、中から可愛らしい声が聞こえてきた。


 事前に聞いていた依頼主にしては随分若い声だったので、お孫さんかな?とかボンヤリと考えながらその場で待機する。


《とたとたとた…ガチャ、キィ~》


「シエロ君、お待たせ致しましたわ」


 家の奥から走って近付いて来る音が止み、扉がゆっくり開いた。


 少し不気味なお屋敷の中から現れたのは、艶やかな黒髪と笑顔が眩しい少女の姿。


 昨日転移門の前で別れたばかりのクラスメイト、シャーロット・クレアさんその人だった。


「えっ!?何でクレアさんが?」


「ウフフ、今度は(わたくし)がシエロ君を驚かす番でしたわね?ささっ、中にお入り下さいましな?」


 イタズラが成功したとばかりに嬉しそうに笑うクレアさんに手を引かれて僕は、薄暗い屋敷の中へと足を踏み入れた。


《ギィイイイ…バタン》



 僕の後ろから、錆びた蝶番の悲鳴が聞こえる。


 ………本当にお化けが出ません様に…。




この時点で、実はシエロ君ちょっとホッとしております。

相変わらずヘタレ主人公ですいませんww


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日も同じ時間に更新させて頂きますので、またお読み頂ければ嬉しいです。



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