四十二話目 解決②
3月3日、ひな祭りの日の更新です!
本日も宜しくお願い致します。
さて、斯くして一応の解決を見たこの魔族襲撃騒ぎだったけれど、これで全ての問題が解決した訳では無い。
そもそも、あれだけ大がかりな事をしておいて、あんなにさっさか退散して行った魔族に脅威なんか感じないよね?
本当にあれだけだったら、僕も此方がチート持ちならあっちにだってチート持ちは居る。何て思わせ振りな事は言わないよ。
本当に問題なのは、魔族の技術力。
まだ子供とは言え、ただでさえレベルが高い名付きのドラゴンの息子を拐い、少しも魔力が漏れでない様にする魔封じの魔道具を持っていたり、そのドラゴンの息子を自分達の隊長に仕立てあげて操る事が出来るまでの技術力の高さは、決して軽んじてはいけない力だと思う。
その証拠に、ガーランドさんがこの国の王様、ヘリオス・トゥングル・マウニ・モーント国王陛下に 今回の魔族の襲撃、及び魔族が使った魔道具等を報告する為にお目通りした際、余りの魔族の技術力の高さに、陛下自らが直ぐ様その魔道具を研究する様にと仰せになった程だ。
ガーランドさんの後に、裕翔さんも陛下から呼び出されて王城へ向かったけれど、その時も魔道具を付けられた息子君の話し、その解除までの手順方法等々、根掘り葉掘り聞かれたらしい。
らしい。なのは、僕はお城へ行っていないからだけど、そもそもたかが辺境伯家の次男坊にお城へ登城出来る権利は無いから仕方無いね?
「またそんな事言って…。寧ろ陛下は君に会いたがっておられたよ?君のお父様とは幼馴染みだそうじゃないか」
「何の事でしょう?」
すっとぼけておいたけど、裕翔さんには通じない様だ。
確かにうちの父さんと現在の国王陛下は幼馴染みで、殆ど年も同じくらい。
今代の陛下とうちの父さんが幼馴染みとして、一緒に育てられたのはうちの爺さんのせいではあるけど、未だに2人は仲が良いんだ。
まぁ、今は関係無い話だからはしょるけど、互いの誕生日をこっそり祝うくらいには仲が良いよ?
本当は1人の家臣に此処までするのは陛下のお立場上良くない事だから、敢えて僕はお城へ行かない様にしているけどね?
本当だよ?面倒臭いからじゃないんだよ?
「そう言えば裕翔さん、研究所の方へも行ってきたんですよね?何か進展はありましたか?」
「また、すぐ誤魔化して…。はぁ、まぁいいや。うん、やっとね?やっと伝説の魔道具技師さんが見つかったとかで、少し進展すると思うよ?」
「伝説の魔道具技師?」
僕が首を傾げると、裕翔さんはうん、と首を1つ縦に振ってから、
「うん、ゴードン・マニュマさんって言うんだけどね?何だか偏屈な人らしくて、あちこち探し回ってやっと探し出したんだって。やっぱり伝説の職人さんだから、色々拘りがあるんだろうね?俺は会えなかったんだけどさ」
と、ヘラっと笑った。
……裕翔さん、貴方、その人に会った事ありますよ?嫌だなぁ、それ僕の師匠じゃないですかぁ……。
僕は、その一言が言えなかった。
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あれから6年経つんだなぁ…。
未だにウルスラさんの息子君が捕まっていたと言う、魔族の研究所らしき建物の正確な位置は分かっていない。
それらしき建物を見つける度に探っているんだけど、僕達が現場に着く頃にはもぬけの殻になっていて、何1つ手がかりも残してはくれないんだ。
明らかに此方の作戦が漏れている。と、王国の内部に間者がいるんじゃないかと言う話しになったのも数知れず。
そんな話しが出る度に調べてはみるものの、それらしき人物は出てこない。
その事からも、魔族が侮れない相手だと言う事が分かるってなもんで…。
だからこそ、最近の静けさが不気味だって話しに繋がるんだけど、もしかしたら今こうしている間にも、何か魔族側の思惑にのってしまっているんじゃないか。
そう思うと、より不安になるんだ。
「で、不安だから菓子作りに走っちゃった。そう言いたいんだね?」
「うっ。……ごめんなさい」
僕は台所の端っこ。冷蔵庫の前で、裕翔さんから詰問されている。
冷蔵庫に背中をくっつけ追い詰められた僕に、逃げる場所は無い。
明らかに怒っている裕翔さんの視線から避ける様にチラリと背けた視線の先には、テーブル一杯に乗せられた色とりどりのスイーツ達。
僕の自信作ばかりだ。
「なぁ、これ食っていいのか?シエロ!」
「食べて良いのかな?かなかな?」
騒ぐアトラと亜栖実さんにため息を吐きながら、裕翔さんは僕に初めて拳骨を落としたのでした。
流石にホールのショートケーキ3台にアップルパイ5台、プリンを焼きと蒸し50個ずつに、どら焼き30個に芋ようかん10本、クッキーと煎餅100枚ずつは作りすぎたと自分でも反省するばかりです。まる。
結局、あの山程のお菓子達は、半分が亜栖実とアトラのお腹の中に収まり、残りは他のメンバーに分配されましたww
さて、ちょっと最後の方が駆け足になってしまいましたが、これにて本章はお仕舞いとなります。
次話から新章となりますので、またお楽しみ頂ける様に頑張ります!
次章は少し長めにして、ちょっと冒険者しているシエロのお話しを書きたいな~と思っています。
そんな訳で、明日も同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します!