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三十八話目 竜の親子②


2月26日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



 ウルスラ親子に悲劇が起きたのは、今から3月(みつき)程前の事だったそうだ。


 この境界の街より少しだけ北側にある、【風の山】と呼ばれる程、毎日渦を巻く風が吹いている場所。


 それがウルスラ親子の住み家で、ヴェルヴェ山という名前の山らしい。


 荒ぶる渦を巻く風に守られたヴェルヴェ山に登るものは皆無の為、彼女はその日まで安心して息子君を育てていたそうだ。


 少しの油断が出る程には…。



「私は、いつもの様に坊やの為に食べ物を狩りに出掛けました。とは言え、やんちゃ盛りの息子です。出掛けていたのは、ほんの、ほんの少しの間だけでした」



 その、ほんの少しの時間でウルスラさんの息子は姿を消していたそうだ。


 息子のいない寝床をみたウルスラさんは、折角捕ってきた獲物を投げ捨て、なりふり構わず息子を探した。



「けれど、どれだけ坊やの魔力を手がかりに探そうとも、坊やの姿はどこにも見つからなかったのです…」


 と、ウルスラさんは首を横に振りながら、とても辛そうに話してくれた。


 そんなウルスラさんの隣に座っていたカベルネそっくりの息子君も、お母さんであるウルスラさんの肩に頭を押し付けてグリグリしていて、彼女達親子が離ればなれになっていた際の苦悩や恐怖心何かが此方にも伝わってくる気がした。



「初めは、また坊やの悪戯かと思いましたが、寝床が荒らされていたり、坊やの鱗が落ちていたりしたので、すぐに坊やに何かあったのだと気づきました…」


「母さんが居なくなった途端に、魔族がぞろぞろ寝床に入ってきたんだ。抵抗したら変な物を頭につけられたんだけど、そしたら頭に靄がかかったみたいにボーッとなって、体が言う事をきかなくなったんだ。ずっとダルい感じで、体が重い感じだったぞ?」


 ウルスラさんの言葉を補う様に、息子君はその時の状況を話してくれた。


 2人の話しをまとめると、その魔族達はウルスラさんが寝床から動いたタイミングで襲っていて、更には息子君の動きを制御する為の魔道具まで持ってきていた事になる。


 明らかにウルスラ親子、特に息子君は前々から狙われていて、事前に入念な準備が行われていたのだろう。


 それ程鮮やかな手口だ。


「しかし解せぬな。何故魔族共は、ウルスラ殿のご子息をカベルネに化けさせたのか。また、本物のカベルネはどうしたのか…」


 ガーランドさんの眉間に更なる皺がよる。


「本物のカベルネは、俺様が魔族の所に連れていかれる前に怪我をしたって誰かが話していたのを聞いたぞ?何か、酷い怪我だったから、その身代わりに、火属性の奴を探してたって言ってた」


「カベルネが怪我をしたの?確か半年程前にも一度、彼と俺は戦ったけれど、その時のかな?」


 裕翔さんの息子君に対する口調が、まるで小さな子供を相手するかの様な口調に変わっているのが面白い。


 裕翔さんが息子君に問いかけると、息子君はフルフルと首を横に振った。


「違うぞ?怪我をしたのは俺様が連れていかれる少し前だって言ってたし、一回だけ姿を見たけど、何か体が半分無くて、変な液体の中にいたんだぞ?勇者の兄ちゃんはカベルネの体を半分消し飛ばしたりしたのか?」


「えぇっ!?体が半分無い?」


「えっ?変な液体の中に居たの?」 


 裕翔さんと僕の声がかぶる。


 とは言え、気になった箇所が違ったので、かぶった内容は全く違うものだったけど…因みに前者が僕で、後者が裕翔さんね?


「ん?うん。何か魔王様にも困ったものだ。って、そこに居た魔族は言ってた。それで、《次のカベルネ様が育つまでの繋ぎが見つかって良かった》とかも言ってたな…」


 僕らの疑問系に満ちた、すっとんきょうな声に、息子君はビックリしながらも答えてくれた。




本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました!


明日、27日も18時頃に更新させて頂きますので、またお読み頂ければ嬉しいです。


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