三十七話目 竜の親子①
2月25日の更新です。
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「僕が恩人とは、一体…?」
僕を恩人だと言った銀色の女性に、僕はゆっくりと近付きながら話しかけた。
「シエロ君!」
「大丈夫ですよ、裕翔さん」
裕翔さんやガーランドさんは警戒している様だけど、僕にはこの人?がそんなに悪いものにはどうしても思えなくて、早々に武器を魔導リングの中に仕舞っていた。
だから、見た目だけなら僕も、彼らと同じく丸腰状態だ。
「私達の話しを信じてくれてありがとう、小さな恩人様。貴方様が居なければ、私の可愛い息子を助ける事が出来ませんでした」
そんな僕の態度にホッとしたのか、銀色の女性は、カベルネの体を優しく抱きしめながら、僕に頭を下げた。
その可愛い息子さんの方は、照れ臭そうにソワソワしていたが、今は放っておこう。
照れて身動ぐ彼の、火みたいに真っ赤なツンツンの髪の毛がどこか不自然に揺れていた。
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「では、改めまして自己紹介を…。私の名はウルスラ。此処より少し北側の、雪山に暮らしているドラゴンで御座います」
「ドラゴン!しかも名付きだと!?でっ、では、貴方様が息子とおっしゃったカベルネも?」
「えぇ、先月私の下より誘拐された、私の可愛い1つ息子です。まだ名前はありませんので、息子だとだけでご勘弁下さいね?」
そう言って、ウルスラさんはガーランドさんに笑いかけた。
ガーランドさんはさっきまであんなに警戒していたくせに、ウルスラさんに笑顔で話しかけられて鼻の下が伸びている。……おっさんェ。
さて、僕と銀色の女性…もといウルスラさんの説得で、何とか同じテーブルを囲む事になった。
依然兵士さん達に囲まれている状況には変わりないけど、皆が武器を仕舞っているだけだって大した進歩だよね?
で、さっきと同じテーブルに、今度は僕、裕翔さん、亜栖実さん、月島さん、ガーランドさんに加えて、ウルスラさんとカベルネの格好をした息子君の順で座っている。
元々大きなテーブルだったから、2人増えたところで狭くはならない。
領主様の食堂に設置されているテーブルだけあって、たぶん10人くらいは一緒に座れるっぽい。
同じ物が2卓あるから、この食堂は20人が一辺に食事が取れる様になってるみたいだね。
さっきまでは報告会だったから、風華達はつまらないだろうと思って放っておいたけど、今回はウルスラ親子と話すんだし、まだテーブルも空いてて座れるんだから、風華や実里、コローレも座ったら良いのに。
そう思って3人を呼んだんだけど、【私達はシエロ様の従者なので御座いますから、一緒の席には座らない方が宜しいかと存じます。】と、コローレからやけに丁寧な口調で断られてしまった。
従者ってなんだよ。と反論したんだけど、頑固なコローレに押し切られ、今3人は僕の後ろでめ従者のふり?をしながらウルスラさん親子を観察している。
特にコローレは失礼過ぎるんじゃないかな?ってくらいジロジロ見つめていて、パッと見ニコニコしてるだけにも見えるけど、背後からめちゃくちゃ視線を感じるから、凄い勢いで観察してるんだと思う。
これだと観察より監視してるって言った方が良いのかもしれない。それくらい、コローレはジロジロ彼女達親子を見つめていた。
あんまり露骨に見つめているから、絶対ウルスラさんは気づいていると思う。
「すっ、すいませんウルスラさん。うちの子達が…」
「いえ、恩人様。私は気になりませんから。名付きのはぐれドラゴンが人里にいるのですから、このくらいの警戒は当然ですわ」
「そう言って貰えると有り難いです。コローレ、そろそろいい加減にしてよね?」
「……御意」
コローレの不躾な視線が落ち着くと、ウルスラさんはこれまでの経緯を話してくれた。
名付きって言う響きが大好物ですww
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