番外編 カインとアナスタシア②
1月11日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「時空さん!何とか、何とかならないの?」
すがる様な思いで時空さんに泣きつけば、時空さんはゆっくりと首を横に振る。
「そんな…」
「シエロ君、あまり神様を困らせるものじゃないよ?」
「そうじゃ。私達は呪いを解いてもらっただけでも、凄く有り難いと思っておるんじゃから」
「だって…」
「俺達はもう充分生きた。それに、呪いを受けたって言っても、俺達は幸せだったんだぜ?惨めな事は何もなかったんだからな?だってさ、今まで何人の子供達の旅立ちを見送れたと思う?あのまま普通の農民として生涯を終えていたら、100回やり直したって味わえない様な最高の経験をさせてもらえたんだぜ?まぁ、農家の暮らしも嫌いじゃなかったけど、それとは比べ物にならないくらいの良い人生だったさ」
あはは。と、本当に楽しそうに笑うカイン先生は、もう胸から下が無くなっていた。
その隣で微笑むアナスタシア先生に至っては、もう首から下が無い。
「さぁ、最後は教え子の素敵な笑顔で見送っておくれ?」
「大丈夫、いつかまた、きっと会えるさ」
「あ…」
僕は下を向きそうになった自分に喝を入れる為に、ブンブンと犬が水を飛ばすみたいに頭を振って、しっかりと2人の理事長先生を見据えた。
消え行く2人の姿に、勝手に目から水分が出そうになるけど、グッと堪える。
もう本人達は覚悟を決めていて、晴れやかに笑っているんだから、僕だけがいつまでもうじうじしていたらいけないんだ。
そう、思ったから。
「今まで、ありがとうございました。ゆっくり休んで、天上界に飽きたら、また戻ってきて下さいね?」
「ありがとう」
「ありがとう、シエロ君」
僕がそう声をかけると、2人は笑いながら光になって消えていった。
光の粒子がキラキラと空へ上っていく。
キラキラキラキラ。まるで、流れ星の逆バージョンだ。
「時空さん、何で僕だったの?」
空へ上っていく光を見つめながら、僕は時空さんに問いかける。
光はステンドグラスを抜けて朝の光と混ざりあい、お2人がどれだか分からなくなってしまった。
「2人のリクエストだったから、かな?」
「リクエスト?」
視線を上から下へと戻すと、時空さんは困った様に笑っていた。
「そう、リクエスト。3年も上へ行くのを渋って、やっとこさ決心した。って連絡が来たと思ったら、今度はわざわざシュトアネールの街まで徒歩で行きたい!って駄々こねて、到着したら、この教会に行く!シエロ君も呼べー!!って。あはは、最後にワガママ放題されたよ」
いや~。くたびれた~。と、続けながらも、時空さんの表情はどこか晴れやかだ。
「3年も何やってたのかな?」
「あちこちから人呼び寄せて、『理事長にならないか?』って売り込みしてたらしいよ?まぁ、結局……」
そこまで言いかけて、時空さんは言うのを止める。
何だよ!めちゃくちゃ気になるじゃんか!?
「結局?誰になったの?」
僕がそう問いかけると、時空さんは、ん~?と少し上を向いて考え、そして
「秘密♪」
とだけ言い残して、文字通り消えた。
朝の清々しい光に満ち溢れた礼拝堂の中に1人取り残された僕は、
「何だってんだよ!??」
と、教会全てに響きそうな声で、叫んだのでした。
結局一番振り回されたのはシエロ。ってオチw
気になる理事長については、また明日。と言うことで一つ!
本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します