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番外編 カインとアナスタシア


1月10日の更新です。

お久しぶりです。本日も宜しくお願い致します!


◇◆◇◆◇◆


《side:シエロ》


 かつて通い慣れた道を、僕は眠い目をこすりながら歩いていた。


 まだ辺りは薄暗く、周囲に生える木や枯れた背の高い草が妖しく見える。



 子供とかがこれ見たら、お化けに見えて泣くんだろうなぁ。



 何てぼんやりしながら少し歩くと、すぐに目的の場所に辿り着いた。



「はい、到着。っと」



 この街では珍しく、少し背の高い木造の建物。


 窓の代わりに取り付けられた丸くて小さなステンドグラスが、うっすら明けてきた朝の光を受けて、キラキラと輝いている。



《ガチャ》


「お早うございます」


 早速扉を開けて、中へ入る。


 いつもは裏口から入るけど、今日は正面からなので、すぐに礼拝堂が見えた。


 そう、ここはシュトアネールの街の外れにある教会。


 コローレがまだランパート神父だった頃に、初めて出会った場所だ。




「やぁ、シエロ君。ちゃんと1人で来たね?関心関心」


「いや、そう言ってここへ呼び出したのは貴方でしょ?」



 呼び掛けられた声に反応すれば、説教台に腰をおろしながらこちらに向かって手を振る時空さんの姿があった。


 そして、その隣にはーーー。



「あれ?理事長先生?」


「やっ!」


「久しぶりじゃの?」



 理事長先生が()()で立っていた。


 その姿にあんまりビックリしたせいで、僕は入り口から説教台まで駆け寄る間に3~4回くらい足がもつれて転びそうになった。



「なっ、何でお2人がここに?学園から離れられない筈じゃあ?それに、その姿は…」


「まぁ、先ずは落ち着かんか。今説明してやるから。カインが」


「俺かよっ!?」



 慌てる僕を落ち着かせようとしてか、アナスタシア先生がカイン先生をダシにしてボケる。


 アナスタシア先生のフワフワの髪の毛が楽しそうに揺れて、僕はついつい見とれてしまいそうになった。



「まぁ簡単に説明すると、俺達時空間の神様に呪いを解いてもらったんだ」


「記憶もその時戻してもらっての?流石に女神としての力までは戻せなんだが、おかげで色々思い出せたわい」



 おかげでお化け脱出じゃ。何て続けながら、アナスタシア先生が笑う。


「そうなんですね?良かったです。良かったですよ~…。あれ?でもだったら何で僕はここに呼ばれたんですか?別に学園に呼ばれても良かったんじゃ…」



 そう言いながら、僕は気づいた。気づいてしまった。


 2人の足先から、キラキラと光が漏れ出している事に…。



「え?」


「ははは。お化け脱出。ってより、引退だな?」



 異変に気がついた僕に、カイン先生が優しい声でそんな事を言う。


 引退。って…。



「そうじゃな?そなたらの世界で言うところの、【地縛霊】引退。と言ったところかの?」


「…え?」



 思わず聞き返す。


 消えていく足を凝視していた視線を上げれば、2人は嬉しそうに笑っていた。



「なん、で…」



 こんな時に笑ってんですか!?


 続けたかった言葉は、出てこなかった。


 喉が乾きすぎてヒリヒリする。



「もう我々は飽きる程生きたからのう?今更女神に戻りたいとも思わんし、このまま輪廻の輪に戻るのもありじゃろう?のう?」


「そう言うこった。学園には後継者もいてくれるし、俺達が心配する事も無い。もう思い残す事はないんだ。だから、シエロ君が泣く事は何もないんだよ? 」


「泣いてなんか、でも、お2人はそれで本当に良いんですか?だって、学園の外に出たかったんでしょ?」


「今、正に学園の()にいるからのう?」


「ふふふ。ここまでの道中だけで、充分冒険出来たよ。あ~楽しかった!俺は満足だよ」



 建物の上部に取り付けられた丸いステンドグラスから、太陽の光が射し込んでくる。


 キラキラゆらゆらと色とりどりの光が強くなる度、理事長先生達の体は薄くなっていった。


 外を見れば、薄暗かった空が大分明るくなっていた。



明日もまたいつもの時間に更新させて頂きますので、宜しくお願い致します

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