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二十七話目 出撃④


2月14日の更新です。

本日も宜しくお願い致します




 瓦礫の中、僕達は息を潜めて魔王軍の到着を待っている。


 此処は、街の外で、元は砦の一部だった所。


 此処は、戦場の最前線になる場所で、情けない事ながらガーランドさんからの後押しを貰えた事で、僕は裕翔さん達と共に最前線にやって来ていた。


 亜栖実さんは、裕翔は心配性だからね?って言ってたけど、仲間から信じて貰えないのは少し寂しいよね?



 さて、本当の最前線はもっと向こうの筈だったんだけど、既に攻め込まれた街は放棄されるのが普通だそうなので、旧砦前の此処になったのだそうだ。


 裕翔さんは、もっと早くに着けていれば!と悔いていたけれど、魔王軍は夜遅く。

 皆が寝静まったところ目掛けて、何の告知も無く攻め込んで来たらしいから仕方がない。


 他の街に、少数で攻め込む時はよくある事らしいけど、軍隊を率いて、且つこんな忍び込むみたいにして攻め込んで来る事は今まで無かったから、正直ガーランドさんも困惑しているのだとか。


 兎に角そんな感じだから、僕達もゲリラ宜しく、こんな瓦礫の中に隠れている訳なんだけど…。



「シエ…ソラタの方が良いべか?魔王軍が前方、5㎞先まで進軍して来てるべ」


 実里が地面に手を置いて、今の状況を伝えてくれる。



「どっちでも良いよ?でもまぁ、ソラタの方で宜しく。裕翔さん!5㎞先まで進軍してきたそうです」


「了解!将軍に通達、5㎞先、魔王軍進軍せり!!」


「はっ!」


 伝令役が本部へ向けて走り去って行った。


 さぁ、いよいよだ!


 僕は腰からぶら下げている剣の柄をギュッと強く握りしめた。



ーーーーーー

ーーーー


「はっはぁ!」


「やぁ!!」



《ガキィィイイイン》


 火花を散らしながら、僕の剣と相手の魔族の剣がぶつかる。


 真っ赤な髪をメラメラと燃やす様に棚引かせた魔族は、同じく赤い瞳を楽しそうに歪めた。



 かつてのスパーク君…僕の兄さんに付いていた炎の妖精の様に燃えるような髪と瞳を持っているけど、こいつは彼とは違い、とても楽しそうに兵士さんをいたぶっていたんだ。


 皆とバラバラになって戦場を駆け回っていた僕は、慌ててその魔族と兵士さんの間に体を捩じ込んで、相手の剣を受けた。


 ギリギリと剣を受け止めながら相手を観察する。


 そいつは、上から下まで赤一色で揃えられた、一際豪奢な鎧を着けた魔族だった。


 すると、一瞬驚いた顔をした魔族は、でもすぐに新しいオモチャを見つけた子どもの様にはしゃぐと、僕に向かって炎を模した様な形の赤い剣を振り回してきたんだ。


 いたぶられていた兵士さんの方は、僕についてきてくれていた風華によって助けられた様だったけれど、余りのラッシュを捌く事に夢中で、僕にそれを気にする余裕は無かった。



「ははっ!お前、つえぇな?」


《ガイィン!》


「お前、何なんだよ!!」


 重い剣撃をいなしながら、僕は目の前の相手に向き直る。


 ヘラヘラと心底愉しそうな、面白そうな相手の態度が気に入らなかった。


「あぁ?」


《ガキンッ!》


 再度剣と剣がぶつかり合い、ギチギチと嫌な音をたてる。


「何でそんなに楽しそうに人を斬れるのかって聞いてんだよ!!」


《ガンッ!》


 半ば力任せに剣をいなし、少し距離を取って叫ぶ様に、言葉で噛みついた。


 奴の剣は血で濡れて黒ずみ、既に切れ味など皆無になっていたけれど、お構い無しに出鱈目な剣撃を繰り返す。


 黒ずみ方からいって、たぶんこの剣が奮われたのは前日だろう。

 こいつは、ヘラヘラしながら宵闇に紛れて何人の命を奪ったのだろうか?


 そう思ったら、苛々が止まらなくなったんだ。




本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。


明日も同じ時間に更新出来ると思います。

また宜しくお願い致します。


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