二百七十三話目 帰ろう
12月28日の更新です。
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それからが大変だった。
取り合えず、魔王が居た場所の調査を元の姿に戻ったコローレと咲良に任せて王都に戻った僕達は、先ず王様のところへ行き、経緯を説明したり、これからの事を話したりした。
そしてアジトへ戻ると、今度はアジトの仲間達に何があったのか説明。いきなりアジトから消えた僕達を心配してくれていたアトラやアルベルトさんに泣きつかれて、宥めるのが大変だったよ。
更に、アトラやアルベルトさん、他の仲間も加わり、会議を開いた。
議題は勿論、元の世界へ帰れる事になった。って事なんだけど、それを聞くと、皆喜んでくれたんだ。
特にアトラは、裕翔さんに抱きつくくらい喜びながら祝ってくれた。
そんな皆の様子を、裕翔さんや亜栖実さん達も嬉しそうに眺めていたんだ。
勿論、僕も嬉しい気持ちになりながら、その様子を見てたよ?
そしてーーー。
今は3日後の朝。
場所は、王族しか使う事を許されない教会の、礼拝堂。
この国、ひいては世界に貢献した者達の最後の旅立ちの場所として、特別に王様がこの場所を提供してくれた。
実際に魔王を倒したのはこの世界の神様達なのだから、そんな待遇は勿体無い!と、真面目~な裕翔さんは最初断ったんだけど、王様がこのくらいはさせてくれ。って言ってくれたんだ。
これには、流石の裕翔さんも折れて、今日のこの日を迎えられた。って訳。
昨日の夜は、王様が自ら主催のパーティまで開いてくれて、夜遅くまで飲めや歌え…いや、歌いはしなかったか。まぁ、でも無礼講。って事で、王様やお妃様達と語り明かしたんだ。
あんなに楽しそうな裕翔さんも、亜栖実さんも初めて見たよ。
「昨日は楽しかったなぁ」
「ふふ。裕翔さんがあんなにはしゃいでるの初めて見ましたよ」
「だって…。ふふふ。だよね?俺も生まれて初めてあんなにはしゃいだよ」
ね?はしゃいでたでしょ?
そんな裕翔さんは、ニコニコと笑いながら礼拝堂の最前列の椅子に腰掛けると、
「は~ぁ」
何て深い、でも辛かったり負の気配を感じさせないため息を吐いた。
その表情からは嬉しさが滲み出ている。
礼拝堂の天井付近にある、三柱の女神をあしらったステンドグラスから、柔らかい光が差し込み、そんな裕翔さんや僕達の体を、キラキラと照らし出す。
「あれ?そう言えば、ここの女神様はちゃんと3人いるね?」
「あぁ。この場所は、始まりの勇者が作った。とされる場所なのだそうですよ?だから、ブロナー様が消えずに残されているんじゃありませんかね?」
僕から少し離れた場所で、亜栖実さんと月島さんが話しているのが聞こえてきた。
へぇ~。流石は月島さんだなぁ。
何てぼんやり考えていると、丁度眺めていたスカーレットのステンドグラスの辺りがゆらりと揺らめいた。
「ん?」
思わず声を出しながら眺めていると、
「お揃いだね~?」
何てゆる~い声を出しながら、3日前に別れた時空間の神様が姿を現した。
《フワッ》
「さぁ、帰ろう?」
そう言って、時空間の神様は地面に降り立つと、ニッコリと微笑んだ。
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