二十六話目 出撃③
2月13日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
《side:裕翔》
「よっ、ほっ」
今、俺の目の前では、【ソラタ】バージョン?となったシエロ君がウォーミングアップをしている。
彼は、俺の身長分ーー180㎝くらいかな?ーーまで軽々と飛んだり、Yを通り越してI字バランスを決めたりと、見ている方がポカンとしてしまうような見事な跳躍力と、柔軟性を見せてくれた。
「でもさ、本当にその姿で魔王軍と戦うつもり?危なくない?」
「え?あぁ、はい。ブロナーからは【出来るだけその姿でやってみろ】と言われていますから…。
でも、本当に危なくなったら変身を解いて戦いますし、それに、僕には風華達がついていますからね?今は、変身の方もシャド任せにしていますし、やってみます」
俺が問うと、彼はいつもと違う顔でニコニコと笑った。
確かにシエロ君なのだけど、いつもと違う目線に、少し戸惑う。
いつもと違う声も、いつもより大きな歩幅も、中身がシエロ君だと分かっていても、俺に違和感を与える要因でしかないのかもしれない。
「でも、間合いとかも違うし、魔法だって初級の物しか使えないんでしょ?危険じゃ…」
「もう、心配性だなぁ裕翔は。シエロ君とはいつも組み手の相手してもらったりしてたけど、この子。ぶっちゃけ魔法無い方が強いよ?」
俺の言葉を遮る様に、亜栖実が会話に混ざってきた。
そう言えば亜栖実はシエロ君の教育係紛いな事をしていたっけ。
居心地の悪かったアジトから逃げる様に、聖ホルド学園に入り浸っていたくらいだしね?
「そうなの?」
「そうさ!シエロ君はね?この世界で僕らに武術を教えてくれたガーランドさんの師匠の孫なんだよ?そんな子が弱い訳ないじゃないか」
「「えぇっ!?」」
亜栖実の言葉に耳を疑う。
ガーランドさんは、俺達がこの国で【勇者】として認められてからずっと、俺達に剣術や体術を教えてくれた師範でもあり、この世界の父親的存在でもある。
今でも、【魔法を使わない】なんて制約付きで模擬戦をしたら勝てる気がしないくらいの強者が、このガーランドさんなんだ。
そんな師範の師匠?
あっ、そう言えば1度だけ聞いたことがある。ガーランドさんの師匠はとんでもなく強くて、王国の伝説を数多く生み出した化け物だって…。
確か、その奥方様も色んな意味でヤバイ人だって聞いて……あれ?さっき俺ともう1人くらい誰か叫ばなかった?
声がしたかな?って方角を見ると、何故かシエロ君まで驚いた顔をしていた。
何で?
と、俺が首を傾げていると…。
「うちのじいさんが、誰かにモノを教えられる訳が無い!!」
と、顔を青くして、目を虚ろにさせながら叫んだ。
よく見れば、微かに手や足が震えている。
えっ!?そんなに?
あれ?よく見たら、シエロ君の後ろの方で、ガーランドさんまで目に光るものを湛えながらうんうんと何度も頷いている。
えっ?そんなに辛いの?
前作でもチラッと出てくるのですが、シエロの祖父、アーサー・コルトの訓練は地獄だそうですよww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も18時に更新致しますので、宜しくお願い致します。