二百六十九話目 魔王の誤算
12月24日、クリスマスイブの更新です。
お休みさせて頂いてありがとうございました。
本日からまた更新再開させて頂きますので、宜しくお願い致します
「あっ、お久しぶりです」
思わず口をついて出た言葉に、自分自身が驚きながら、声の主の方を見る。
声の主は、【時間の精霊】さんだった。
彼?彼女?は、僕がまだ学園に通っていた頃、そこの魔王に唆されたはた迷惑な先輩こと、ゾルフ・スティンガーが起こした事件を解決する際、大変お世話になった精霊さんだ。
何でも、今神様に一番近い精霊さんらしい。
「「んふふ。お久しぶり♪相変わらず君は面倒事の中心に居るねぇ?でも、そんな君も大好きだよ?」」」
時間の精霊さんは、相変わらず特徴が掴めない様な……と言うか、コロコロと姿形を変えながら、高い声も低い声も幾重にも重なった様な不思議な声で、僕に微笑んだ。
前会った時もそうだったんだけど、どうやらこの精霊さんには特定の姿や声がないらしく、常に形が変わっていく。
例えば、今黒髪ウェーブロングでグラマラスな女の人の姿をしていても、次の瞬間には金髪ベリーショートな少年の姿に変わっている。って感じかな?
そんな、姿を変えながらニコニコしている時間の精霊さんに対して、自身のすぐ後ろ。と言う、絶対的に優位なポジションを奪われた魔王は、額から滝の様な冷や汗をかきながら、時間の精霊さんの動向を伺っている。
何せ、突然現れた警戒すべき相手に、優しい手つきで頭を撫でられているのだ。
少しでもあの指が首にかかれば…。って感じで、魔王は生殺与奪の権利を時間の精霊さんに完璧に握られてる訳だし、動くに動けない状態。って感じなんだと思う。
って言うか、寧ろそのままジッとしといて下さい。
何なら魔法を解除してくれれば、尚の事助かります。
「「「あぁ。この悪趣味な色の魔法の玉。邪魔だねぇ?」」
声の主が、スルッと軽く手を動かした。
「なっ!?」
次いで、魔王の短い悲鳴が聞こえる。
そのたった数秒の間に、僕達が恐れおののいていた金色の魔法の玉は、跡形も無く、綺麗さっぱり消え失せてしまったからだ。
うん。ドンマイ♪
「「「んふふ。駄目だよ?ヤミナベ君。あんな危ないものをちらつかせて彼らを脅しちゃ。ほら、あんなに女神達も怖がってるじゃないか♪」」」
いや。怯えてるのは貴方に対してかもよ?
僕は、そんな言葉を飲み込んだのでした。
まぁ、助けてくれた人に放つ言葉では無いよね?
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します