二百六十六話目 復活(魔王)
12月19日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
2019年2月10日、改稿致しました
命を寄越せ。
そう言われた筈の黒スーは、何故か満面の笑みを浮かべながら、魔王に向かって頭を垂れた。
「この身に余る光栄でございます」
「うん。君と過ごしたこの何年かは楽しかった。君くらいなものだよ?僕をイラつかせなかったのは。フフフ。またね?」
「はい、陛下」
クシャリと頭を撫でられ、心底嬉しそうに笑う黒スーの姿に、僕らは止めることも出来ずに絶句していた。
少しの間別れるだけ。
まるでそう聞こえる2人の会話に、驚いていたんだ。
だって、今から殺される奴と、殺す奴との会話には到底思えない内容だったからね?
「陛下、今までありがとうございました」
「うん。じゃあね♪」
《バシュウッ》
2人の会話が途切れ、刹那。今まで黒スーの頭を撫でていた魔王の左手が鈍い黒に光った。
闇が眩しい。
初めての体験に僕が目を眩ませていると、次の瞬間には、今までそこに居た筈の黒スーの姿は影も形も無くなっていた。
何らかの力で、黒スーを魂ごと喰らったのだ。
理屈も何も分からなかったけど、何となくそう思えた。
「ふぅ。……よし。じゃあ、お互い元気になったところで、続きをしようか?ねぇ?」
中腰になり、かざしていた手を何度か握ったり開いたりして、その感触を確かめていた魔王が、ふと揺らめく様にして立ち上がる。
そして、半ばのけぞる様な姿勢のまま、此方へ笑いかけてきた。
その顔は何処か晴々としていて、それがまた、更に僕らの絶句を誘った。
「あれ?来ないの?じゃあ、僕から行くよ?」
「っっ!させるか!!」
ニヤリと笑い、ゆらり、ゆらりと此方に向き直る魔王に、シルビアーナが立ち塞がる。
拳を握り、軽く両手を広げたポーズで構えを取る彼女を見て、魔王はまた笑みを深いものへと変えた。
まるで、自分の勝利を確信したかの様なその態度に、シルビアーナは眉をひそめる。
「自信満々だな?」
「勿論♪だって、今の僕はイチと一緒にあるんだよ?それに、あの方も一緒だ。フフフ。もう、負ける気がしないね☆」
「何っ!?それはどう言う!!?」
不意にシルビアーナの言葉が途切れる。
魔王はニコやかに笑いながら、片手をゆっくりと空へ向かって突き出したからだ。
恐ろしい濃度の魔力が、急速に渦を巻いていく。
うん。嫌な予感しかしないな。
「フフフ。これで終わり、かな?少しは耐えてくれると嬉しいんだけどねぇ?」
魔王はそう言いながら、自身の手のひらを目一杯広げ、更に魔力を練り始めた。
「さぁ!僕と邪神様の力を思い知るが良い!!」
あっ。詰んだ?
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もこの時間に更新致しますので、またお読み頂ければ嬉しいです。宜しくお願い致します