二百六十四話目 魔王の配下
12月17日の更新です。
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「陛下!!邪魔だ!」
《ドンッ》
「痛っ!?」
壁に現れた道の先から、黒スーが魔王目掛けて駆け寄って来た。
その直線上に居た葵君は、避ける間も無く黒スーによって突き飛ばされる。葵君は泣いて良い。
「魔王陛下、ご無事ですか?」
「イテテ。この馬鹿力め…」
駆け寄って来た黒スーは、魔王の体を優しく起こしながらそう問いかけた。
魔王は手で黒スーに【大丈夫だ】と合図をしながら、シルビアーナに悪態をつきつつ睨み付ける。
「馬鹿力は息子のものだな。私では流石に下界でこの様な力を出す事は出来ないさ」
いやいや。それだと、天界なら出せるぜ!って言い方にも聞こえるからね?
まぁ、実際そうなんだろうけど…。
「シエロ君、シエロ君」
「はい?」
と、控えめに僕の左袖が引っ張られた。
それと同時にかけられた声に反応して振り返る。
「どうしました?」
「うん。今まだ平気そうだから聞くけど、今までも戦闘の途中でコロさん動けなくなった事なんてあるの?」
魔王と女神が一触即発の状態で睨み合っているこの状況を、まだ平気そう。で片付ける裕翔さんに畏敬の念を抱いていると、そんな事を言われた。
「ん~。そう言えば、今まで戦闘中にガス欠になる事はありませんでしたね?ただ、その時は光の人工魔石とかも念の為に持たせたりしていたので、一概には言えませんが…」
「あ~。そう言われれば、シエロ君がコロさんと別れて行動する時とかに、魔石持たせてるの見た事あるかも!そっか、アレってそんな意味があったんだ」
ポンッと手を打ちながら、へーほーとしきりに感心する裕翔さん。
うん。やっぱり大物だよ、あんた。
「時に魔王よ」
「……何だ?」
ん?
裕翔さんに気をとられている間に、睨み合っていた2人の時間が動き出したようだね。
シルビアーナは、地面に腰を下ろしたままの魔王を見下ろしながら、ポツリと話しかけた。
魔王は心底嫌そうながら、律儀に返事を返している。
……こいつも何だかんだ結構真面目なんじゃねぇか?何て思えてきた。
「貴様の配下はどうした?そこでグズグズになっている悪魔だけではない筈だろう?ここまで我々が好き勝手やって、何故そこの人工生命体の少年しか来ない?」
「……」
シルビアーナに問いかけられた魔王は、無言のままでニヤリと笑った。
うわっ!前言撤回。
笑顔がキモい。胡散臭い。明らかに悪い奴の顔してる!
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