二百四十二話目 魔王とブロナー
11月19日の更新です。
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魔王が天に向かって、女神……いや、ブロナーに呼びかけている。が、いくら彼が天へ呼びかけても、彼女からの応答は無い。
「ブロナー様!何故、お応え下さらないのですか!?」
魔王がもう一度大きく、少し高めの良く通る声で叫ぶが、それでも空から声が返って来る事は無かった。
魔王が天を見上げながら黙り込む。天へすがる様に伸ばした腕をダラリとたらし、呆けた様に立ち尽くしている。
シンと静まり返った部屋の中、だだっ広いが故に、静かな空気や音すら木霊しそうで、僕は何だか耳鳴りがしている様な、妙な錯覚を引き起こしていた。
そうして、また更に少しの時間が流れた後、突然魔王が
「ふふふ。ククク。アーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
と、天を向いたまま、狂った様に大笑いし始めた。
その余りの豹変っぷりに、誰もが口を挟む事すら出来ずに魔王の様子を伺っている。
「ははははははははははは!ひ、ひひひひひひひひひひひひひひひひ。クックック。そうですか、ブロナー様。貴方は私を見限られたのですね?」
魔王が天に向かって叫ぶ。
「分かりました。それならば、私は矢張あの方の為に尽くす事にーーー」
そこまで天に向かって叫んだ魔王は、
「致しましょう」
と、続けながら、僕らの方へと向き直った。
ハラリと今まで被っていたフードが外れ、魔王の顔が露になる。
「!?」
誰かが息を飲む音が聞こえてきた。
光を飲み込む程の黒い髪に緋色の瞳。白く血管が見えそうなくらいの透き通る様な肌。そこにはブロナーそっくりの顔があった。
勿論ブロナーは三つ子なのだから、他の姉妹のシルビアーナやスカーレットにも似ているのかもしれないけど、僕にはブロナーに似ているな。と、しか感じられなかった。
違うのは髪の毛の長さくらいだろうか?ミディアムショートくらいの髪の毛の下、耳のすぐ横辺りに、下向きに生えた牛の角みたいな角が3本ずつ生えている。
3本ずつ。と言ってもそれぞれ外側から順に短くなっているので、パッと見耳の脇から翼が生えている様にも見えた。
さて、そんなブロナーそっくり魔王は、その作り物めいた整った顔を歪ませ、緋く濡れた様な瞳をユラユラと揺らしながら、
「僕はブロナー様の半身。ブロナー様の子♪僕は邪神様を復活させてブロナー様を殺し、ブロナー様を僕の中に取り込んで、そしてこの歪に歪んだ世界を変えてやるんだ。フフフフフフフフフフフフフフフフフフ。そこは僕と邪神様の為の世界。そこは誰もが幸せで、誰もが愛し愛される闇の世界さ。フフフフフフフフ。アハハハハハハハハハハハハハ!」
と、半ば叫ぶ様に笑った。
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