二百三十六話目 強制転移
11月11日ポッ○ー&プ○ッツの日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「やぁ、待っていたよ♪」
今、僕達6人と精霊達の前には、灰褐色のくすんだローブを身にまとった青年が1人、僕らとは一段高い場所に座っていた。
彼は、だだっ広い。クラシック音楽会でも開けそうなホール状の部屋の、中央よりやや後ろの方で、石で出来た椅子にゆったりした様子で腰掛けている。
その椅子は一見玉座の様だけれど、僕には玉座。と言うよりは、それが石の棺の様に見えた。
材質的にも切り出されたままのゴツゴツした冷たい感じのもので、そんなクッション的なものも何も無い石の椅子に座った彼は、僕らから見て左側の肘掛けに肘を乗せ、更に右手のひらに顎を乗せて、ニコニコと笑っていた。
まぁ、ローブのフードを目深に被っているから、口元くらいしか見えないんだけどね?
下から見ているはずなのに顔が見えないのが不思議なところではあるけれど、彼は空いた左手をひらひらと振りながら、
「ふふふ。ようやく会えたね?」
と、嬉しそうに呟き、またニッコリ微笑んだ。
さて、何故いきなり僕達がこんな所にいるかと言えば、あれから3日が経ち、戦闘準備が整った数十分前まで遡る。
充分に準備が整い、では王様に報告して、いよいよ魔王の城に潜入だ!!と言うところでいきなり僕ら全員の視界が暗転し、気がついたらここに居たのだ。
で、冒頭のあの台詞になるみたいなんだけど、スー君の方を見ても自分じゃない!と首を横に振っていたので、強制的に僕らを転移させたのは、明らかにあの石の玉座に優雅に座っている、あの青年なのだろう。
って言うか、十中八九この人ーーー。
「君は……魔王か?」
裕翔さんが恐る恐る、と言った様子で青年に訊ねる。
「そうだよ?」
青年は弾んだ様な、楽しそうな声でそう答えた。
裕翔さん、貴方勇者様何だから、魔王を目の前にして猫背は止めた方が良いと思いますよ!?
何だか気が弱そうに見えますし、勝ち目の無い戦いに挑む愚か者に見られちゃいますって、絶対!
「ふふふ。いつもは魔王、何て呼ばれるとイライラするのに不思議だなぁ。ふふ、ふふふふ、相手が君達だからかなぁ?何でこんなに楽しいんだろう?」
僕が猫背にハラハラしていると、玉座に座っている魔王は、ウットリしているとでも言う様に、ヌルヌル顔をあげながら笑いだした。
手をいっぱいに広げ、口を大きく開けながら笑っているのに、絶対にフードが剥がれないのが恐ろしい。
そして、その様は狂気を含み、見ている此方までビリビリくる何かを感じさせた。
僕は裕翔さんの猫背に構っていられなくなり、笑っただけで放たれる悪意や殺意に耐えるだけで必死にならざるを得なくなった。
やきもきした魔王に強制的に転移させられた勇者一行!どうなる、次回!?
遂に魔王が痺れをきらしましたww
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します