二十二話目 初陣③
2月9日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「落ち着きました?」
「う、ん…」
「何とか…」
「僕は大丈夫です」
裕翔さんが、ブロナー、亜栖実さん、月島さんに向き合っていた。
それぞれが近場の石と言うか、崩れた家か何かの基礎に使われた石かな?に座り、自らが落ち着いた事を申告する。
さて、僕以外のメンバーが落ち着いたところで…。
え?僕?僕は後ろでおろおろしてただけだから、大丈夫だよ。
まぁ、落ち着いたところで、やっと此処へ呼ばれた訳を聞かせてもらう事になった。
「今は魔王軍の進軍は止まっていて、小康状態だて話だったから、この時間を使ってシエロ君にもきちんと説明するね?」
裕翔さんは、そう前置いて、何故か徐に地図を大きめの瓦礫の上に開いた。
地図は羊皮紙では無くて、紙の地図だった。
たぶん、最近売り出されたお高い地図だと思うけど、裕翔さんは躊躇うことも無く、飛ばされない様にと、四隅に小さな瓦礫を置いた。
「この国、と言うか世界が一繋ぎの大陸から成り立っているのは知っているよね?
三日月を2つくっつけた様な、左右反転【S】の字みたいなこの大陸の、真ん中から上半分。
北側の大地は魔王が統べる、魔族達の土地だ」
裕翔さんが、何処から出したのか赤いペンで鏡文字のSみたいなこの世界の地図の真ん中に、一文字にピッと線を引いた。
そして、更にそこから上半分の陸地を丸く囲む様に線を引いて、囲んだ中に魔族領と日本語で書き込む。
何度も言うが、裕翔さんは高い地図に、なんの躊躇も無く書き込んだ。
「で、俺達が今居るのは此処」
そう言って、今度は中央に引かれた線の上をトントン、とペンで叩いた。
地図がジワリと赤く滲む。その様はまるで、この場所の地面の様だった。
「此処は、魔族と人族の境目の場所なんだ。最後の砦、兼人族の希望の地。だったんだよ」
「え?」
言われて、改めてこの場所を見渡してみる。
大きな瓦礫、小さな瓦礫と様々な瓦礫がそこかしこに転がっていて元の面影は然程残っていないが、微かに櫓と分かる細長い建物や、熔けてしまってはいるが、大きな鋼鉄製とおぼしき扉の一部が見てとれた。
まだ燻っているあそこは、きっと兵士達の詰所だったのだろうか?壊れた椅子や机が黒焦げの状態で転がっている。
改めて、魔族達の襲撃の激しさが感じ取れた。
そんな激しい戦いを制し、一度は軍を引き上げさせたにしろ、魔族はまたやって来るだろう。
今まで、何処か他人事だった世界を救う。と言う事がどんな事かを考えさせられた。
こんな事を幾年も続けてきた彼等には本当に頭が下がる。それによって、僕がどれだけ甘やかされて来たのかも…。
「シエロ様!?こんな所で何を?」
不意に聞き馴染みのある声が聞こえて振り返ると、其処にはコローレが皆と同じ様な皮鎧姿で立っていた。
ただ、コローレは普通のシャツにズボンといった姿なので、裕翔さん達みたいな違和感は感じなかった。
「コローレこそ、ここ2~3日姿が見えないから心配してたんだよ?連絡もつかないし…」
「申し訳も御座いません。此方の応援を頼まれて来ておりましたが、通信機を奪われる訳にはいかないと思い、魔道袋に仕舞い込んでおりました」
そう言って、コローレが懐から取り出したのは、手のひらサイズの小さな袋。
向こうの世界でなら車か家の鍵くらいしか入らない大きさだけど、これは僕の最新作の魔導袋で、見た目の10倍は物が入る代物だ。
口は小さいけど、西○記に出てくる金○と○角の瓢箪ばりに吸い込むぞ☆
って、そうじゃないそうじゃない。
「うん。君が無事なら良いんだ。ごめんね?それより、何か急いでいたみたいだったけど…?」
「そうでした。セージが居ると聞いて此処へ来たのです。救護所が怪我人で溢れてしまって、人手が足らないのです」
「えぇ!?」
コローレの話しを聞いて、僕達は全員で走り出した。
やっとコローレが出せましたww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も同じ時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します!