二十一話目 初陣②
2月8日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「此処は?」
裕翔さんのテレポートに連れられて着いた先は、あり得ない程荒廃して、荒れ果てた大地だった。
草が1本も無い剥き出しの地面は所々赤黒く染まり、其処ら中に折れた剣や槍、弓や矢が刺さり、砕けた鎧の破片はあちらこちらに散乱して、ブスブスと未だ燻る建物であった木片の惨状から、その場所での戦闘が如何に激しかったかを伝えている。
「此処は、魔王領とモーント王国の境目。難攻不落と讃えられた、頑強な砦を持つヒキウと言う街だった所です。お待ちしてました。君がシエロ君ですね?」
僕の問いかけに答えてくれたのは、銀縁眼鏡が爽やかな青年だった。
気持ち長めの前髪から覗く、穏やかそうな垂れた目も、その前髪だけ少し長い髪の毛も真っ黒で、この世界では見た事が無かったダウンジャケットの上に皮鎧を着けると言う、不思議な格好の青年は、紛れもなく日本人だと分かる格好をしていた。
たぶん、この人が裕翔さんや宇美彦と共に此方に飛ばされてしまった日本人で間違いないだろうと考えた僕は、
「あっ、はい。シエロ・コルトです。日本人だった時は、木戸宙太と名乗っていました。宜しくお願い致します」
と、生前の名前を織り混ぜながら自己紹介をした。
「これはご丁寧に。僕は月島誠治と申します。
今は成長が止まってしまっていまるので分かりづらいかもしれませんが、宇美彦君より2つお兄さんです。
此方こそ宜しくお願いします」
どうやらこれが正解だった様で、月島さんはペコペコと頭を下げながら答えてくれた。
え?何で月島さんだけ苗字呼びかって?年上の方は敬わなきゃでしょ?
亜栖実さん?あの人は色々別格だよ。
「何呑気に挨拶してんのさ!で?誠治君、状況は?」
僕らがペコペコと頭の下げあいをしていると、テレポートで移動してきた亜栖実さんからツッコミが入った。
何と言うタイミングだよ…。
さて、気を取り直して彼女の姿を見て見れば、亜栖実さんもいつもの黒皮のライダースの上に皮鎧を着けていた。正直、皮on皮とか違和感でしかない。
その事を訊ねると、
「えっ?あぁ、これ?」
と、皮鎧を邪魔臭そうにしながら答えてくれた。こう言うところは何気に律儀な人である。
「何かさ、僕らが此方に飛ばされちゃった時に着てた服は全部チート装備になってるらしいんだよ」
「へ?」
「僕もいまいち分かんないんだけど、伝説級?相当の防具になってるらしいよ?でもさ、見た目は全然防御力が高く見えないから、せめて皮鎧だけでも着けて欲しいんだって」
防御力高いなら別に良いじゃんねぇ?
と、心底邪魔臭そうに皮鎧を引っ張る亜栖実さんを見ながら、月島さんは苦笑いしていた。
「亜栖実さん。まぁ、そこはお国柄だと思って諦めましょう?裕翔君など【勇者様ですから!】何て、女神様から賜ったと言う、ゴテゴテの金属鎧を着させられそうになったのですから」
ゴテゴテの金属鎧!?何それ見たい!!
「まぁねぇ?正直、アレは無いよね?」
僕は見たいと思ったけど、亜栖実さんはナイナイ、と手を手首だけで振りながら苦笑していた。
月島さんまで亜栖実さんと同じ様な顔をしていたから、その金属鎧はよっぽど酷い出来なのかな?
そんな事を2人を見上げながら考えていると、
「ごめん、ね…」
僕達の後ろに居たブロナーが、涙目で謝ってきた。
「うわっ!えっ?何で此処にブロナー様がいんの!?」
「えぇ!本物ですか?いや、それよりもあの鎧は、本当に貴女方から?」
ブロナーが居る事に驚く2人と、もう泣き出す寸前のブロナー。
そのブロナーを囲みながら、亜栖実さんと月島さんは、何かの儀式みたいにブロナーの周りをオロオロしながらグルグル回っている。
うーん。どうやって止めたら良いんだろうか…。
「お待たせ!詳しい話しを聞いてきたよ!って、皆して何やってんの?」
勇者キター!
いつの間にか消えてる勇者w
そして、いつの間にかまた現れる勇者ww
勇者なのに空気過ぎますね?
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
また明日もこの時間に更新させて頂きますので、宜しくお願い致します!