二百十七話目 暗躍の理由
10月18日の更新です。
今回、直接的な表現はありませんが、微グロ的な発言等ございます。
苦手な方は予めお気をつけ下さい。
本日も宜しくお願い致します
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《side:魔王》
燃え落ちる城を見ながら、それと同じ色の真っ赤なワインをグラスの中で軽く回し、口に含む。
「ふっ。我ながら格好つけすぎたね」
近くに控えていたデーモンに飲みかけのワインが入ったグラスを渡し、椅子から立ち上がる。
僕が座っていたのは、野外には似つかわしくない程豪奢な玉座。
家臣の誰かが城から持ち出したこの椅子は、この玉座には似つかわしくない豚が座っていたそうだ。
豚が椅子に座るものなのか?と、問いかけると、どうやらその豚はこの国で一番偉い豚の様だ。とその家臣は答えた。
豚よりも僕が座る方が相応しい。とか何とか言っていたけど、僕としてはこの椅子、ちゃんと消毒してあるのか?って方が気になるよ。
「我が王よ。御知らせしたき事が御座います」
「ん?何だい?」
ワイングラスを渡したデーモンが、徐に口を開く。
何だ、置物じゃなかったのか。
僕が返事を返すと、デーモンは恍惚の表情を浮かべながら片膝をついた。一々態度がウザいが、主を得たデーモンと言うのはこう言う生き物だと言うので、諦める。
「何だ?と聞いたが?」
「はっ!申し訳も御座いません。先程、ヒューマンの国に送った魔族からの反応が途絶えましたので、それを御伝えしたく…」
少し威圧してやると、今度は身体を振るわせ始めた。だけど、それは恐怖ではなく、歓喜の震えだったりする。
気持ち悪いのでさっさと止めると、デーモンは少し残念そうにしながら答えた。
どうしよう。戦力くらいにはなるかと思って封印されてた悪魔侯爵を助けてやったけど、気持ち悪いから殺しちゃおうかな?
何て考えながら、
「問題ない。どうせ奴等は捨て駒だ」
と、吐き捨てる様に答えた。気持ち悪いからこいつと出来るだけ話したくなかった。ってだけなんだけど、それすらこの変態にはご褒美らしい。
「御意」
と、返事をしながら、口の端が笑っていた。
うわっ、本当に死んでくれないかな?
《シュンッ》
「陛下」
と、そこへイチが転移魔法を使ってやって来た。
正直、こいつと二人っきりでいたくなかったので、すんごくありがたい。
「やぁ、イチ。どうしたんだい?」
「ちっ」
ん?うっわ!イチに僕がにこやかに話しかけたのがいけなかったのか、変態が唇を噛みしめながらイチを睨んでる!?しかも今、舌打ちしたよね?僕、仮にも魔王なんだけど?魔王の御前ですよ?
うわ~。こいつ本気で嫌だ。一応強いからまだ殺さないけど、勇者と対決する前にこいつから殺す~。絶対殺す。今決めた~。
「はっ。チョセーン国の制圧が完了致しました」
「そっか、あれだけ大きな口を叩いてるから、もう少し骨のある国かと思ってたけど、1日もたなかったね?」
「陛下のお力をもってすれば容易い事かと」
「お世辞は良いよ。で?生存者と、此方の損害は?」
イチは、また
「はっ」
と、短い返事を僕に返すと、
「チョセーン国内にヒューマンの生存者は無し。此方の損害はありませんが、火を放つ際に火傷をしたオークが数名おります」
と、つらつらと答えた。
「オークは不器用だからねぇ?ちゃんとお薬塗っておいてあげてよ」
「御意」
「さぁて、いよいよここから始めるよ?」
僕は、未だ燃え盛る城を見ながら大きく手を広げると、そう宣誓した。
フフフ。前と後ろ。僕らで挟んであげたよ?勇者様はどれくらい持ちこたえられるのかな?
フフフ、フフフフフ。
何故王国を襲ってきた魔族や魔物がショボかったのか。の説明回でございます。
そして、本当の目的はウザいヤバいでお馴染み(誰が言ってるんだろ?)のチョセーン国を滅ぼす事でした。
チョセーン国について、詳しくは前作の閑話【ガッカリ勇者と残念な国】を御覧下さい。
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日もこの時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します