二百十五話目 紛れ込んだ魔族②
10月16日の更新です。
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動き出した魔族は、先ずは連絡室。と呼ばれる、国中の兵士達から届く報告や連絡を一手に引き受ける部屋へ赴いたそうだ。
そこで、
「実はこの部屋に憧れがあってさ。少しだけで良いから見学させてくれないか?今日は非番なんだ。なぁ、少しだけだからさ、頼むよ?」
何て上手い事言ってそこに詰めている兵士を騙した魔族は、
「そこまで言うなら…。でも少しだけだぞ?変なところ触るなよ?」
と、釘を刺す同僚に、分かってる分かってると軽く返事を返しながら、中へと入っていったらしい。兵士は渋々。といった感じだったそうだ。
連絡室は、約8畳分くらいの広さがあり、常に2人が詰めている場所で、中には人と同じ数の通信用の機器があり、同時に2ヶ所と通信を結べる。
そんな連絡室に入り込んだ魔族は、隙を見て何かの装置を、両方の通信機器の後ろに取り付けた。
「じゃあ、ありがとうな」
「何だ、もう良いのか?」
「あんまり邪魔しても悪いからな。配属になったらまた宜しく頼むよ」
「ははは。そりゃ頼もしいな」
何て会話をしながら鼻歌混じりに魔族は連絡室を後にした。そして、それを見計らって後をつけていたお祖母様は、こっそりとその装置を解析してみたそうだ。
その結果、連絡室に繋がる筈の通信を、別な場所へ繋げる装置。と言う事が分かったそうだ。
僕も許可を貰って現物を見せてもらったけど、その装置は本当にシンプルな作りをしていた。
たぶん、装置をより小さくする為の処置だったのだろうが、一言で言えば、言葉は悪いがちゃっちい。
良く言っても作りが雑。装置は1円玉くらいの大きさだったんだけど、これくらいのサイズがあれば、通信を阻害して偽の情報を掴ませ、更に軍の偉い人のところくらいに拾った情報を飛ばす。くらいの事なら出来ると思う。しかも、魔力探知を掻い潜る能力を付加させてね?
これだけ容量があって、任意の場所に飛ばすだけしか出来ない物なんか作ったら、きっと僕なら師匠に怒鳴られてるよ。
で、その装置なんだけど、お祖母様は解析を終えた後、また元の位置に戻しておいたらしい。
え?何故かって?
「うふふ。悪事の証拠としては弱すぎますもの。もう少し泳がせなくちゃ♪」
だ、そうだよ?
更にお祖母様は装置に細工をして、受信した声をお祖母様にも飛ばす様にしたんだ。
まぁこれだけ容量が空いていれば細工をする事くらいは楽勝だけど、装置を解析して、更にその装置に細工をして戻す。
これだけの事をやっていて、対象を見失わないうちに、かつ連絡室に詰めている兵士に気づかれずにやるって言うのが、お祖母様の凄いところだと僕は思う。
さて、そんなお祖母様は、装置を手早く元に戻すと、更に兵士に化けた魔族の後を追った。
追っていて分かった事は、忍び込んだ魔族は1人だけ。王国の内情を探る事が目的らしい。と、言う事と、勇者に魔王軍が攻めてくる。と言う情報を流す事。だったらしい。
ーーー
ーー
「ではやはり、俺…いえ私達はその魔族が流したデマに踊らされた。と言う事だったのですね?」
「その件に関しては本当に申し訳なかったと思っています。その情報がもたらされたのが砦からだったから。と疑う事もしなかった私の落ち度です。おそらくあちら側にも魔族が入り込んでいたのでしょうが…。本当にごめんなさいね?」
そう言いながら、お祖母様は座りながらではあるが、頭を深々と下げた。
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