二百十話目 南門での出来事
10月11日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
2019年4月21日 誤字修正致しました
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《side:南門の門番D》
「「ふぅ。こんなもんかの?」」
「すっ、すげぇ…」
開いた口が塞がらない。とは正にこの事を言うのだろう。俺は今、奇跡を見ていた。
南門の外側周辺。半径約数百メートルの場所が、魔物で埋め尽くされている。ピクリとも動かない事から、どれもこれも死んでいる事が分かるが、死体に特にこれと言った外傷は無く、ただ眠っている様に死んでいた。
朝の爽やかな光が射し込んでいるせいもあるのだろうが、一種幻想的でさえある様に思える。
しかも、この状況を作ったのが、見た目は年端もいかない様な少女。に見えるただ1人の女性なのだから、話したところで誰も信じてくれそうに無いだろう。
ーーー
ーー
さて、この奇跡の始まりは、俺がいつもの様に、早朝の朝靄が立ち込める様な時間から門番として仕事を夜番の奴から交代したばかりの頃。
引き継ぎ作業も終わり、夜の間閉めていた門を開ける時間まで、門の横の待機所で何となく同僚達と暇を潰していると、門の前にフラリと少女が現れたんだ。
こんな朝早くにどうしたんだろう?何て思いながら声をかけようと近づくと、
「「おや?君は6年前に学園を卒業した、ダイス君ではないか。元気だったかの?」」
何て、向こうから逆に話しかけられた。
朝靄が濃すぎて近づくまで分からなかったが、その少女が、俺が昔通っていた聖ホルド学園の理事長だと言う事に気がついた俺は、
「えっ!?理事長先生?えぇ?何でこんなところへ?」
と、若干慌ててしまいながらも、何とか言葉を返した。
すると理事長は、
「「ん?私かの?私は私の弟子から、【今日、この時間に何か良からぬ物がこの場に現れるだろうから何とかして欲しい】と頼まれたので、こうして南門まで馳せ参じた。と、言うわけじゃ」」
何て、物騒な発言をした。しかも、何故かふんぞり返って。でっかい声で。
幸い、南門の近辺に住宅街は無いから近隣の住民の安眠を妨げる事は無かったが、待機所に詰めて居た同僚達にはバッチリと聞かれていた様で、待機所の入り口から顔だけ出したゴリゴリのおっさん達が、揃いも揃って、目を丸くしながらこちらを見ていた。
「「何じゃ?ダブジョン(鳩に良く似た魔物)が投げナイフをくらったような顔をして?それともダイス君。君のご同輩は皆、いつもあの様な顔をしているのか?」」
「いえ、彼等はたぶん。理事長先生のお言葉に驚いているだけだと思います」
そう。彼等からしてみれば、急に現れた少女が荒唐無稽な事を言っている様にしか見えないだろう。
だからこそーー。
「ブワッハッハッハ!嬢ちゃん洒落が利いてるな?」
「嬢ちゃんに弟子がいるところもだが、誰だい?そんな預言者みたいな依頼の出し方をした奴は?」
と、その場にいた誰もが大笑いをし始めた。
しかし、理事長は気にした風も無く、
「「ん?あぁ、私の弟子は…。お?その話は後での?どうやらいらした様じゃぞ?」」
と、自らのお弟子さんの話をし始め様としたのだが、陽が昇りきったと同時にゾロゾロと現れた魔物と魔族の群れによって阻止されてしまった。
……とまぁ、こんな感じで最初に戻る。
始めは理事長を馬鹿にした様に笑っていた同僚達も、続々と現れる魔物と、それをまばたきをする間にあっさりと魔物の死体に変え、山を築いた手腕と強さに黙り込んでしまった。
しかも、
「「魔族は生け捕りじゃな。そなた達、簡単に逃げられると思うでないぞ?」」
な~んて魔族の青年達を笑顔でビビらせる始末だ。
あまりの恐怖に逃げ出そうとした魔族もいたが、あっさり追い付いた理事長に意識を刈り取られて捕まり、他の魔族も続々と理事長の魔?の手にかかって倒れていった。
どっちが悪者か分からなくなってきたが、どうやらこのシンと静まり返った南門前の広場は、一部の門番達の言葉と表情を奪った代わりに、平穏を手に入れたらしい。
何て考えながら、俺はヘヘッと笑った。
もう笑うしかない。
あっ。もしかして他の所もこんな感じに魔族が襲って来てたのだろうか?
あんまり呆気に取られ過ぎて、本部に連絡する事すら忘れていた。
あ~。まぁ、報告はもう少し後でいっか。怒られるのはどうせ隊長だしな。
最初は【反撃④】のタイトルで書き始めたのですが、途中であっ、これ反撃じゃないや。ただの理事長無双だw
と思い直したのでこのサブタイになりましたww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまたこの時間に更新出来ると思いますので、宜しくお願い致します。