二百九話目 反撃③
10月10日。旧体育の日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
2019年4月21日 本文の修正を致しました
◇◆◇◆◇◆
《side:西門の門番C》
「いや、Cじゃねーから!ちゃんと名前あっから!!」
「エル?どうしたの?」
戦闘中、急にでっかい声を出した俺に、近くで戦っていた親友がビクッと体を震わせながら振り向いた。
「いや、何でもねぇ。何か、こう叫ばないといけない様な気がしただけだ!」
「変なエル」
ふんぞり返って答えたのが面白かったのか、プロクスは眉を八の字にしながら笑う。
つーか、余所見しながらでも襲ってくる魔物に隙を突かれないんだから流石だよな~。何て、変なところで感心してしまった。
感心ついでに言うと、正直俺の大親友のプロクス・コルトと、その守護精霊のカグツチが助けに来てくれてマジ助かったぜ。
いや、ここの先輩や上司が弱いとは言わねーけど、俺と同じで今回襲って来た魔物とは相性が悪い属性の人しかいなかったのが厄介だったんだよ。しかも本部に連絡がつかないとかで、援軍も見込めなかったから尚更だ。
「おりゃ!」
《ザシュッ、バサバサバサ》
何て考えながら、プロクスに負けじと、俺も近くにいた変な木の化け物を凪ぎ払う。どうやら凪ぎ払った部分は普通の植物に戻る様だ。
魔物の体から千切れた、肩?の部分が枝葉となり、地面に落ちる。
さて、俺。ことエルドレッド・エルリックは、門番としての研修の為西門に配属されたのだが…。まさか、その最終日に魔族が襲ってくるとか、誰が想像出来るよ?絶対無理だよなぁ?
どうやら、襲ってきた魔族自体は1人みたいなんだけど、そいつが操ってる魔物は数えきれないくらいわんさかいる。
しかも。しかもだぜ?何でよりによってトレントばっかり何だよ!?
これが火属性持ちのうちのバカ弟なら嬉々として戦うだろうが、生憎俺には風属性はあっても、火属性が無い。
幸い切り落とした部分から植物に戻るみたいだから風魔法がまるで効かない訳でもないが、それでも炎や火に比べれば効きは悪い。
だから、結局魔法は補助的に使い、殆ど剣1本で弱点を狙うしかなかったんだ。
これは先輩方も同じ様で、彼方此方で苦戦しながら戦っているのが見てとれる。
まぁ、俺と違って回復系が得意な人達が多かったから、自力で自分の怪我を治しながら戦ってもらえるのはありがたいけどな?
さて。話を戻すと、トレント系の魔物は顔の下辺りが弱点なんだ。
……けどな?今回襲ってきたトレントは、狼みたいな形だったり、馬みたいな形だったりと、普通じゃねぇばかりか、中には得体の知れない、グニャグニャしたスライムみたいな形の奴もいる。
一応普通のトレントっぽいのもいるにはいるが、奥でニヤニヤしてる魔族を守る様にズラッと並んで動かない。
仕方なく異形の形をしたトレントーーって言って良いのかわかんねぇからトレント呼びでいくぜ?ーーを相手にしてるんだけど、ぶっちゃけ弱点の、おめえらの顔の下辺りって何処だよ!?特に馬!顎か?顎狙えば良いのか?
何てベタな悪態をついたのは俺だけじゃない筈だ。
「くっそっ!!」
《ズバッ》
「ちっ」
苛立ち紛れに、体が木で出来たみたいな狼の首をはねてみる。が、はねた首はただの植物に戻り、動かなくなるものの、体の方は首を無くしても襲いかかってきやがる。
「んだよ!首でもねぇのかよ!?マジでどうすりゃ良いってんだ!?」
「プロクス!エルドレッド!何かこいつら尻尾の方燃やすと死ぬぞ!?」
「はぁっ?マジか?」
俺がブツブツ文句を垂れていると、最前線で魔族の周りを守っているトレント共を焼き払っていた、炎の精霊カグツチがでっけー声で叫んだ。
それを受けて、ついつい俺も叫び返してしまった。何でよりによって尻なんだよ!
「フレイム!あっ、本当だ。皆さん!この魔物の弱点はお尻の付け根の辺りの様です!頭でははありません!気を付けて下さい!!」
「お前、流石だな?」
「え?」
「いや、何でもねぇ。ッシ!尻だな?尻!!」
いつでも冷静な親友に、再度尊敬の念を抱きながら、俺は魔物の群に突撃した。
弱点を見破られない。とても思っていたのか、急に数を減らし出した配下の魔物に、魔族のおっさんは慌てだした。軍隊か?ってくらい整っていた連携も、急にグダグダし始める。
よっしゃ!今がチャンスなんじゃないの?
俺は自分に近づいてくる木の化け物達の弱点を切り捨てながら、未だ安全圏にいる魔族の所まで、ズンズンと突き進んで行った。
プロクスとカグツチがいたのは魔女が…。まぁ、お察しの通りです。
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します