二百七話目 反撃①
10月8日体育の日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
いつの間にか隣に現れた、プラチナブロンドの髪を持つ温和な雰囲気の青年は、
「もう大丈夫ですよ?」
と優しく先輩に話しかけながら、徐に先輩の頭の上に己の手をかざした。
光魔法、かな?先輩にかざされた手は、ぼんやりと光を放っている。
普通ならいきなり現れた時点で疑うのだろうが、不思議と彼はそう言う疑念を持たせなかった。
「少し、我慢していて下さいね~?」
そう優しく、柔らかく笑いながら、その青年はそのまま、先輩の体を頭から足先までなぞる様に手を滑らせていく。
あっ、手が通り抜けた場所は傷が治ってる!?
結構早く手を動かしているのにもかかわらず、先輩の体の傷はガンガン癒えていき、焼けた皮膚が再生されたのか、白っぽい綺麗な肌がドンドンと増えていった。
流石に破れた服や壊れた鎧は元に戻らないにしても、まばたきする間に傷を癒す事の出来る凄腕の光魔法使いなんて、今まで会った事が無かった俺は、呆気に取られ、驚きを隠せずにいた。
そうして、俺が呆気に取られている間に、先輩の治療は完了していた。
ホッとしたのか、先輩は寝息をたてている。
良かった…。
と、胸を撫で下ろすと同時に、良くこの状況で眠れるな?とちょっと尊敬すらしていると、
「さて、治療は終わりましたが、彼方はどうかな?」
何て軽~い感じで、光魔法使い様は後ろを振り返った。
「あっ、そうだ!隊長!皆!!」
魔法使い様の御技に呆気に取られていて、すっかり忘れてた!
魔法使い様につられる様にして、俺は隊長達がデーモンと睨みあっていた方を見る。
「……え?」
思わず声が漏れた。
「ガハハハハハハハハハハハハハ!何じゃ、そんなもんかデーモンよ?鍛練が足らんぞ?ガーーーーッハッハッハッハッハッ!!」
皆武器の構えはそのままに、ポカーンとした様子の隊長達の視線の先に、レッサーデーモンの頭を鷲掴みにしながら笑っているおっさんが居たからだ。
「ガハハハハハ!」
俺らに対して後ろを向いているからおっさんの顔は見えないが、頭を掴まれているデーモンが白目を剥いているのは良く見えた。
ピクリとも動かないのが逆に怖い。
「流石はアーサー様。もう終わっていましたか。僕の出番は無さそうですね」
そして、さして驚いた風でもないこの魔法使い様の態度も何だか怖いものがある。
俺達が束になっても敵わないデーモンを、あっさり鷲掴みにして沈黙させる様な偉業…っつーか力?を見せつけられたのに、何でこんな淡々と出来るのかがちょっとよく分からない。
「あっ、あの、助けてもらっといて何なんッスけど、あんたらは一体?」
若干声が震える。俺はドキドキしながら魔法使い様に問いかけた。少なくとも、あのおっさん…いや英雄に関してはたぶん俺の憧れのあの人だろうが、念の為だ。
今は機能してないけど、俺、一応門番だしな?聞いても罰は当たるまい。
「あぁ、これは申し遅れました。私、シュトアネールの街外れの教会で、神父をさせて頂いております。ランパート・ド・リュミエールと申します。そして、あちらの方はシュトアネール前領主でもあらせられます、アーサー・コルト様でいらっしゃいます」
そう言って、目の前の魔法使い様改めランパートさんは、更に柔らかく笑った。
「はっ、はは」
俺は思わず笑いながら、転ぶ様にして地面に座った。安心したら腰が抜けたのだ。
そして、情けない事に俺はそこで漸く、あぁ、助けが来てくれたんだ。と、言う事を実感し、深い深いため息を吐いた。
さて、やっと反撃パートに入ることが出来ました☆
謎の神父(笑)のランパート君に関しましては、前作の105話目、【閑話とある日の出来事】をご覧下さい。
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もこの時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します。