二百五話目 はめられた王国③
10月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
今回ほんのりですが、グロ表現がございます。苦手な方は予めご了承下さい。
目の前の悪魔は、ニタリとその邪悪な顔を歪ませて笑った。
額には2本の雄牛の様な角。顔に対して細すぎる体。全身が真っ黒なのに、顔にあたる部分だけが白いその姿は、確かレッサーデーモン。と言う種類の魔物だ。
レッサー何て、名前だけ聞けば楽に倒せるのか?と言えば、答えはふざけるな!となるくらいの最悪な状況だ。
確かにアークデーモンやデーモンロードと言った奴等には劣るが、そんな奴等が出てくるのは、大昔のおとぎ話だけで、実際に見た者はいない。
いや、例え居たのだとしても、見た事を知覚する前に殺されるだろうから分からない。と、言うだけなのかもしれないが…。
兎も角、そんな災厄級とは比べ物にもならないにしても、だ。
目の前のレッサーデーモンだって、討伐する為には精鋭部隊を派遣してやっと。それでもその精鋭部隊から死者が出るのが当たり前。勝てれば幸運。それくらい厄介な魔物なのだ。
「グギャギャギャ」
レッサーデーモンが、蛙が潰れた様な声で下品に笑う。
舌なめずりをしているのは、俺達を誰から襲ってやろうか考えているからなのだろうか?
他のデーモン種は知らないが、レッサーデーモンは弱い魔物なら、自分の意のままに操る事が出来ると言う。
きっと、俺の周りで死んでいるゴブリン達は、こいつがけしかけた者達なのだろう。
って、何で俺、こんな時に此処まで冷静でいらるれるんだ?
ん?あ~。そっか。
ふと、ある考えに至り、俺はデーモンから目を離さない様にしながら、武器を胸の高さで構える。
そのまま自分の相棒を盗み見ると、そこには、幾度と無くゴブリンや他の魔物を斬り刻んだが為に出来た刃こぼれと、後1回でも何かを斬れば、真ん中辺りから折れてしまうであろう、大きな罅が入っていた。
あぁ。やっぱりな。俺は冷静な訳じゃなくて、恐怖の余り絶望してしまったが故に淡々としていたんだな。
そこで改めて周りを見れば、隣の先輩や同僚、他の先輩方の武器も似た様な事になっていた。
一応はデーモンへそのボロボロの武器を向けて、意識を集中させている様にも見えるが、正面にはレッサーデーモン。
四方をぐるりとゴブリン達に囲まれたこの状況の中、皆、どこか諦めている様にも見えた。
◇◆◇◆◇◆
《side:騎士改め、騎士に化けた魔族》
キシシシシ。いいぞいいぞ?
今城へは、救援要請がひっきりなしにきていた。
まぁ、俺が全部握り潰してるから1つもまともに要請が通る事は無いが、お蔭で俺の所には色んな情報が入ってくる。
先ず北門。
大量過ぎる程のゴブリンに、レッサーデーモンが一匹。
はい死亡~。はい負け~。ウヒャヒャ。
次、東門。
鳥型で肉食の魔物、クリーチャースパロウがわんさか。それと、それを操ってる魔族の連中が3人か。
クリーチャースパロウはちいせぇ鳥だが、その鋭いくちばしで獲物の肉を啄んで食べる鳥。だった筈だ。
獲物が生きていようが死んでいようがお構い無しに食らいつくす魔物だから、東門の連中はとっくにやつらの食料になってんじゃね?はいウケる~。
次、西門。
あ~。此処は植物系か。確か、木の魔物のトレントの亜種だか変異種だかばかりを集めた部隊だった筈だ。
木の形をしているやつは勿論の事、狼や馬みたいな姿形をしたやつらもいたっけな。
操ってるのは1人だが、あの人は植物系の魔物を操らせたら右に出る者はいない猛者だ。
ウヒャヒャ。ある意味一番可哀想なところはここだな。
俺なら即行逃げるってもんよ。
はい最後、南門は~。
………ん?
あれ?誰からも連絡が上がって来てねぇな?
確か、ここは一番魔王領から遠いから。って事で、様子見に種族がバラバラの魔物をドバッ!と送り出す事になっていた筈だ。
操る魔族も5~6人くらいの小隊を送るって話になっていたよな?
あっ、それともあれか?既にヒューマン側が全滅してるから連絡がこないとかか?
《コツッ》
「え?」
額に何かあたる感覚に、顔をあげる。
国中から集まる情報を少しも逃さない為に、ピンと張り巡らせた俺の包囲網をいとも簡単に抜けてきて、しかも額にあたる木の感触に血の気が引いた。
しかも、それをしているのがーーーー
「うふふ。やっと見つけたわ?♪」
この国一番の魔女なら尚更だ。
うふふ♪
やっとシリアス?回おしまいです。
明日から弾けば…られれば良いなぁw
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日もまた18時頃の更新となりますので、宜しくお願い致します