表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/293

十九話目 夕闇せまる家路


2月4日の更新です。

本日も宜しくお願い致します!



「ふぅ…。ここまで色々とお聞き致しましたけれど、相変わらずシエロ君は、何と言うかやらかしてますわねぇ…」


 聞いているだけで疲れましたわ。と言いながら、クレアさんは座っていた椅子にもたれ掛かり、すっかり冷めてしまった紅茶をグイッと飲み干した。



 確かに気づけば時刻は午後6時。


 まぁ、クレアさんとバッタリしたのだってもう4時過ぎていたのだから、此処へ来て2時間も話してはいないけど、窓から見える景色は薄暗くなっている。


 それにクレアさんにしてみれば、ヤバイのに声を掛けられて連れていかれそうになったわ、助けた見ず知らずの男が急に僕になるわ、更にその僕から愚痴を聞かされるわで、そんなの疲れるに決まっている。


「すいません、せっかく会えたのに、僕ばっかりお話ししてしまいましたね?しかも愚痴愚痴と…」


「いえ、寧ろお話しをお聞きするのは、とても楽しかったですわ。ただ、内容がその、濃すぎて…」



「あはは……すいません」


 たったの2時間くらいで此処まで疲れるか?ってくらいゲッソリしてしまったクレアさんの姿に、僕はただただ謝るしか無かった。



「もう、私がお聞きしたのですから、謝らないで下さいまし!……ふぅ。シエロ君は暫く王都(こちら)にいられますの?」


「あ~、はい。今の僕の拠点は王都(ここ)ですので、大抵いますよ?ただ、どっちの見た目かは分かりませんがね?」


「まぁ、ではまた直ぐにでも会えますのね?」


 僕が言葉を返すと、眩しいばかりのキラキラした笑顔で返された。


 まっ、眩しい!!


「あ~。そうですね。今は少し落ち着いて来たので、僕らのアジトに来ていただければ大丈夫だと思います」


「何かお忙しそうですのね?無理ならそう仰って下さいましね?」


「あっ、いやいや、大丈夫ですよ?寧ろクレアさんなら大歓迎ですよ」



 曇った彼女の表情に、慌てて反論する。


 魔王軍は来るな!って言いたいけどクレアさんならいつでも大々大歓迎だ。


 と言うのも…。



「実はここ数年、魔王軍の動きが矢鱈と活発だったんです。ですが、最近はやっと少し気が抜ける様になってきまして…」


「まぁ!」


 ここ数年と言うのは、ブロナーが来てから現在まで。


 つまり、僕がきなこもちに入ってからほぼずっと戦いっぱなしって事だ。


 お蔭で僕のレベルもガンガン上がり、魔法の腕も大分上がったと思うけど、正直へろへろ。


 それがここ数週間急にパッタリと止んで、平和そのものになった事で少し落ち着いて物事を考える時間が取れた。


 時間が出来たのは有り難い?事だけど、勿論急に魔王軍の行軍や襲撃が止むのはおかしいし、怪しい事この上無い。


 って事で、先日潜入捜査に仲間達が出掛けていったんだけど、その調査は亜栖実さんともう1人の仲間が行ったので、今はアジトにて結果待ちの状態なんだ。


 で、今日は久しぶりにギルドの依頼を受けて、たまにはお外でお泊まり♪の筈だったんだけどねぇ…今からじゃ無理なので、大人しくアジトに帰りま~す。



「と言う訳なんで、暫く王都から離れずアジトに居ますから、クレアさんが宜しい時にでも遊びに来てください」


「ありがとうございます。是非にも伺わせて頂きますわ」


 曇った笑顔がまた輝いた。



ーーー

ーー


「それじゃあクレアさん。何かあったらご連絡下さい。()()に」


「ええ、必ずご連絡致しますわ。()()で」


 薄暗くなった街の街灯の下で、僕達は一対のイヤリングを片方ずつ耳につけながら笑いあった。


 クレアさんが右で、僕が左の耳につけた、この小さなイヤリングは、実は通信用に作った魔道具だ。


 コードレスのスマホ用イヤホンを想像して作ったこれは、小指の爪の半分程の魔石を使っていて、1㎝に満たないくらいの大きさしかない。


 基本一対のイヤリング同士でしか繋がらないから、極小のトランシーバーだとでも思ってもらえばいい。


 前までは学園の学生証につけた通信機能もあったけど、卒業後にはその学生証も返納しなければならなかったし、クレアさんはまだ冒険者登録していなかったので、通信機器が無いならと、この魔道具をプレゼントさせてもらった。


 小さな一見ピアスにも見えるイヤリングは、キラキラと、クレアさんによく似合っている。



「フフ。お揃いですわね?」


「ですね?」


 僕としては、トランシーバーの機能しか付けられなかった事が不満だったんだけど、クレアさんが嬉しそうだから、まぁ良いか。


「それでは、またお会いする時迄。ごきげんよう」


「はい!あっ、いやいや、お送りしますよ」


 返事をした後で、慌てて言い直す。


 幾らなんでも、このまま彼女を帰すとか、男としてそこだけは譲れなかった。


「ウフフ。ありがとうございます。では、そこの転移門まで送っていただけますか?」


「はい!」


 この街には東西南北にテレポート装置を管理する【転移門】と呼ばれる場所がある。


 そこまで行けば自宅近くまでテレポート出来ると言うので、僕達は夕闇が迫り、灯りが灯った街の中へと歩きだした。



「おい見ろよ!彼処にいるの【陽光の薔薇姫】じゃねぇか?」


「うわっ!隣に居る子も美人だなぁ。お近づきになりてぇ~」


「俺は行くぜ!!陽光の薔薇姫様!俺と付き合ってくださ…ぎゃああああああああ」



 はぁ、せっかく良い気分だったのに…。何で街に出た途端にこうなるんだろう?


 勢いよく僕の前に飛び出してきた男に、思いっきり脛蹴りを食らわせながら、クレアさんの苦笑いを見つつ、僕は大きなため息を吐いた。




シエロは気に入らない様ですが、【陽光の薔薇姫】とは、シエロの2つ名です。

由来はその内本編でお知らせ出来ると思います!


さて、此れにて1章はおしまいとなり、次からは新章が始まります。

新章を始める前に、申し訳ないのですが、また2日程お休みさせて頂きます。

本当にお休みばかりしてすいません。


次回の更新は2月7日、水曜日を予定しておりますので、またお読み頂ければ幸いです。


本日も、此処までお読み頂きまして、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ