二百一話目 進軍開始
お待たせ致しました!
10月2日の更新です。
いよいよ最終章。と言う事で、頑張って参りますので、また宜しくお願い致します
2019年4月20日 本文修正致しました
その報せは、まだ夜も明けきらぬ、夜中と言っても通じるくらいの時間にもたらされた。
《ドンドンドン》
《ドンドンドン》
リズミカル。と言うには些か乱暴過ぎるノックの音に目を覚ました僕が玄関の扉を開けると、息を切らせた兵士さんがそこには居た。
「一体どうしーー」
「夜分遅くに失礼致します!ですが、至急勇者殿に御伝えしたい件があり、こうして馳せ参じた次第に存じます。勇者殿は何処に?」
「あっ、いっ、今、呼んで参ります!」
扉が少し開いたところから体をねじ込む様にして入ってくるなり、そう言い放った兵士さんの態度に圧倒されながらも何とか返事を返した僕は、裕翔さんの部屋へと急いだ。
ーーが、なんせ真夜中にあんな乱暴なノックだ。音はアジト中に響き渡っていた様で、僕が裕翔さんの部屋にたどり着く前に彼は部屋から出てきてくれた。
因みに、裕翔さんの部屋は2階の階段を上がったすぐのところの部屋。
もしかすると、下から僕らの話す声とかも聞こえていたのかもしれないね?
「何があった!?」
眠そうな顔をしていた裕翔さんも、兵士さんの姿を見つけると、足早に階下に降りてきてそう声をあげた。
緊急事態だって分かってはいるけど、ちょっと近所迷惑かも…。とか思ってしまうくらいの大きな声だった。
ーーーーー
ーーー
「えっ!?俺が寝てる間にそんな事があったんッスか?」
「大変だったんだよ?って言うか、むしろあの騒がしい中でよく寝てられたよね?」
「いやぁ」
「いや、褒めてないからね?葵君」
今、僕達は、馬車の中に居た。
兵士さんのもたらした内容が内容だったので、僕達は慌てて行動を開始したのです。葵君を除いて…。
あの亜栖実さんでさえ起きてきて荷造りをしていた中において、いち早く荷造りを終えた宇美彦に、馬車の荷台に放り込まれるまで、しぶとく寝ていた強者なのです。この男は…。
はぁ。
さて、変なところで照れ始めた葵君は置いておくとして、この馬車は国が用意してくれたもので、僕達の支度が整うであろう時間を予想していたのかな?ってくらいピンポイントで到着した代物だ。……国、恐るべし。
……ん~。やっぱり駄目だ。軽口叩きあってれば緊張が少しは解れるかと思ってたけど、駄目な時は駄目だね?
えっと、話を戻すと…。
あの時兵士さんが息を切らせながら、あんな時間に僕らに伝えにきてくれたのは、【魔王軍の進軍】についての新しい情報だった。
今まで決して表舞台に出てくる事の無かった魔王が、遂に自ら軍勢を率いて攻めてくるらしい。
もたらされた情報によれば、今はまだ魔王領を進んでいるとの事だったけど、流石は魔王率いる精鋭部隊と言ったところか、一両日中には彼等の領地と我等の領地の境目に到着し、陣を敷く準備をし始めるだろう。との事だった。
僕はカベルネーー正確にはジェイド君をカベルネに仕立てあげて闘わせていたんだけどーーの部隊としかまだ接した事はないけど、それでもこちら側には相当数の死者が出ていた。
コローレが言うには、あれでも精鋭。と言うには程遠い部隊だそうで、カベルネの所へ踏み込んだ時に居た兵士や魔物でも、魔王軍の精鋭部隊からしたら足元にも及ばない猛者ばかりなのだとか…。
魔王軍に関して、勝てる、勝てないでは無く、勝たなければいけない闘いなのじゃ!何て、よくうちの祖父さん何かは言ってたけど、馬車の周りを歩く護衛の兵士さん達の表情はどこか固い。
心では分かっていても、体や表情筋は正直だね。どうしても緊張の色は隠せないのだ。
僕を含め、軽口をしながらヘラヘラ笑っている葵君だってそれは一緒な様で、僕も彼も微かに震える手だけは抑えられなかった。
いよいよだ。いよいよ魔王軍との直接対決までの時間は迫ってきている。
ヘラヘラしながら内心冷や汗ダラダラなシエロ達でした。
本日も、此処までお読み頂きましてありがとうございました。
明日もまた18時頃に更新致しますので、宜しくお願い致します。