百九十九話目 雷蜥蜴
9月22日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「か」
『か?』
「可愛い~♪」
『かぁい?』
「喋った!?」
一瞬動きが止まった亜栖実さんは、次の瞬間に再起動を果たし、そのままの勢いで蜥蜴を抱き上げた。
って言うか、それよりその子、今喋らなかったか!?
「あぁ、今までが大人しかっただけで、あの方達の元に居た時は随分とおしゃべりでしたよ?緊張していたんじゃありませんかね?」
「いつも冷静な君が大好きだよ…」
「光栄の極みに御座います」
まぁ、女神達のところから来たんだから、喋るくらいするか。
と、自分を無理矢理納得させた僕は、改めて、料理の仕上げをしながら、コローレに問いかけた。
「で?コローレ、あの生き物って、結局何なの?妖精とも精霊とも違うみたいだけど?むしろ、もっと力強いと言うか、下手したら土地神レベルで強そう。ってくらい、内包する魔力量がヤバそうなんですけど…」
「えぇっと、ですね?」
何だよ?はっきりしないなぁ?
そう思っていると、コローレさんは蜥蜴と戯れる亜栖実さんをチラッと見た後で、僕にコッソリと耳打ちをしてきた。
よっぽど面倒な事になっているらしい。
「実はですね?あれは自分もちっちゃい妖精と戯れたい!と研究を重ねていらしたブロナー様。ではなく、その研究自体を羨んだシルビアーナ様がお作りになられたものでして…」
おぅ、またややこしい事になってる。とか思いつつも、
「えっ?シルビアーナが作ったの?じゃあ、あの黄色はもしかして…」
と、何とか小声でコローレに返事をしながら、僕も蜥蜴に視線を移す。
オレンジ色の大きな目は、亜栖実さんに撫でられて、嬉しそうに閉じられているから見えないけど、鮮やかな黄色い肌はよく見えた。
……あれ?よく見ると、時折パリパリと、小さく放電している様な?
「仰せの通り、雷。で御座います。あの蜥蜴は【雷の化身】とも言える生き物なので御座いますよ。何せ、あの身体を形取るほぼ全てが雷そのものなのですから…」
「あっ、じゃあやっぱりあれ、放電してんの?」
「御意」
確かにシルビアーナが司る属性の中には雷があったけど、何でわざわざ危ない方にしたんだよ…。
これなら、まだ光属性の方が安全じゃあ…。
《スマン。光の子は透明になってしまってな…。どうせなら可愛い子供の方を君達に託したかったのだ…》
……急に当人の声が聞こえた気がしたが、まぁ親心って事で、目を瞑る事にした。
取り合えず、亜栖実さんを呼んでその蜥蜴についても説明しなくちゃね?ご飯も出来たし…。
「亜栖実さーん。ご飯出来ましたよ?」
「はーい!食べる食べるー!!」
『たべぅ~♪』
「はいはい。今出しますからね~」
……あれ?蜥蜴って何食べるんだっけ?
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します