百九十八話目 不思議な生き物
9月21日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
結局、食べきれなかったお菓子や軽食の類いと共に、夕食の足しにでもしてね?と、可愛くて美人なお祖母様に頂いた、料理長ご自慢のラビッス(ウサギっぽい魔物)の煮込み料理を手に抱いて、ホクホク顔の僕は意気揚々とアジトの扉を開いた。
「ただいま~」
「おや?お早いお帰りでしたね?」
「シエロ君、お帰り~。」
すると、扉を開けた先、すぐにあるリビングに、コローレと学者先生のアルベルトさんが仲良く座って、僕に手を振ってくれている。
しかも、そのコローレの頭の上には、見慣れない蜥蜴がチョコンと乗っていて、同じ様に僕に向かって手を振っていた。
あっ、チョコン。何て表現をすると、小さく思われるかもしれないけど、この蜥蜴さん。結構デカイ。
パッと見60㎝くらいは軽くありそうだ。尻尾含めたら1メートル超えてる気がするんだけど、コローレ頭重くないのかな?
「こっ、コローレさん?その子は?」
「あぁ、この子ですか?」
触れないで食堂に逃げようか。とも思ったけど、やっぱりそう言う訳にもいかないので、嫌な予感を抑えつつ、僕が恐る恐る問いかけると、コローレは少し疲れた様な顔をしながら、チラリ。と上を見て、そして、
「とある人達からお預かりした、アスミへのプレゼントです」
と、力無く笑った。
「あぁ…。じゃあコローレが急にいなくなったのも?」
「えぇ、あの坂を登っている途中で、急に連れ拐われまして……」
「そっか~」
予感的中。
僕は、アルベルトさんが不思議そうな顔をしているのも構わず、乾いた笑いを止める事が出来なかったのでした。
ーーーー
ーー
暫く笑っていた僕とコローレだったけど、流石にそろそろ夕食の支度をしなくちゃ!と場所を移して話す事になった。
今、件の蜥蜴くんは食堂のカウンターの上に座り、夕食を作る僕を興味深そうに見つめている。
近くで見ると、大きなオレンジ色の目がくりくりしていて可愛いかも。
しかし、黄色の体にオレンジ色って目立つ配色だよね?自然界にいたら即効バレるよ、こんなやつ。
「で?コローレ、この子は結局何になるの?妖精なんかじゃないでしょ?」
隣で手伝ってくれているコローレに、コイツ。とカウンターの上の蜥蜴くんを軽くつつきながら聞いてみた。
さっきはアルベルトさんがいたから深くは聞けなかったけど、アルベルトさんとはリビングで別れたから、もう気にする事は無いよね?
と聞いてみたら、コローレはチラチラと食堂の扉を気にしながら、歯切れの悪~い
「…は、い」
が返ってきた。
「あぁ、アルベルトさん気にしてるなら大丈夫だよ?さっき遮音の魔道具のスイッチ押しておいたから、例え食堂の扉に耳をベッタリくっつけて僕らの会話を聞こうとしても無駄」
どうせアルベルトさんの質問全部、のらりくらり交わしてきたから気にしてるんでしょ?と付け加えると、
「流石は我が主」
何て、ニヤリと笑った。
うわ。悪い顔してんな~。
「うっわ!コロさん何悪い顔してんの?」
ん?
突然聞こえた声に驚きながらそっちの方を見ると、亜栖実さんがドン引きしながら立っていた。
「おや、アスミには負けますよ?」
「え~?どういう意味さ~?」
「そのままの意味ですよ」
おいおい。いきなり喧嘩すんなよ。
「コローレが悪い顔してるのは同感ですけど、亜栖実さん、魔術師さん達の方の用事はもう終わったんですか?それと、そこにアルベルトさんはいませんでした?」
「ん?うん、誰もいなかったよ?」
ちっ。不発だったか?いや、外から聞いてるかもしれないから、魔道具はそのままにしておこう。そうしよう。
「いや~。終わった。ってか説明し終わったら、早速検証してみる!とか言って、僕にはもう興味なし!って感じさ。裕翔もシエロ君のお爺さんと行っちゃって暇だったから、僕だけ先に帰ってきちゃった☆」
アハハ~。と軽く笑いながら、亜栖実さんは僕らの前にどっかり座りこむ。
彼女の答えを受けて、コローレは若干呆れた様子だったけど、宮廷魔術師なんてそんなもんです。
たぶん僕だってそんな状況になったら迷わず帰るね。間違いない。
「あ~。お腹すいた。シエロ君、ご飯ま……」
「もうすぐ出来ますから、待ってて下さい。って、亜栖実さん。どうしました?」
いつもの要求にハイハイと返事を返すものの、変なところで止まった亜栖実さんの感じを不思議に思い、話しながらでも止めなかった手を止めて、彼女の方を見る。
するとそこには、蜥蜴くんと見つめあったまま動かない、亜栖実さんの姿があった。
ヒト○ゲくらいの大きさで想像して頂くと分かりやすいかもしれません
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日もいつもと同じ18時頃に更新させて頂きますので、またお読み頂ければ嬉しいです。