百九十七話目 爺と勇者
9月20日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「ふむ。なるほどのう?それは流石にワシでも許可出来ぬ案件じゃわい。何せ、下手をすればこの王の都を破壊してしまう事になりかねんからじゃ。分かるな?」
「はい」
亜栖実さんが真面目な顔で、神妙に頷く。
その姿を見て、爺さんはウム。と満足そうに1つ頷くと、蓄えた立派な顎ヒゲをモサモサ触りながらフーム。と唸り、そして、
「……しかし、その、何じゃ?人工的に武器の中に別なる力を封じ込める。と言う方法は面白い案じゃ。宮廷魔術師達が聞いたら踊り出すじゃろうな?」
と、言った。
「宮廷魔術師様が、ですか?」
「左様。奴等は常に研究材料に飢えておるからの?そう言った案を持って行けば喜んで研究し出すであろうよ。王から研究費をぶんどってまでやりかねんぞい」
裕翔さんが問いかけると、爺様はニヤリと笑いながらそう答えた。
「本当ですかっ!?」
「あぁ。勿論じゃ。何なら今から行ってみるかの?ワシなら引退したとは言え、研究所くらいなら許可が無くとも出入り出来るしの?今日は城の奴等に稽古をつける日でもあった故、また城に戻ったところで誰も怪しむまい」
「じゃあ!」
「うむ。行ってみるかの?」
「是非!」
「そうか。勇者殿はどうなさるかの?」
「いや、俺はーーー」
「ふむ。宮廷魔術師の下へ魔導師殿を案内した後は時間が空くでの?ついでじゃし、志願者を募って稽古の続き…でもしようと思っておったのじゃが…」
あ。
「本当ですか!?……先生も恐れた鬼の稽古。ちょっと興味あるな…。あの、やっぱり俺もついていっても…?」
あ~あ。爺、勇者釣れた!シメシメ。みたいな顔してるよ。
あっ。裕翔さんがそっち見たら真顔に戻った。こりゃ確信犯だな。
「勿論じゃ!では早速行くかの?エリザベート、そう言う訳じゃから、また少し出掛けて来るぞい」
「はい。どうぞごゆっくり」
「ウム!」
うわ。こりゃ朝までコースか?ウキウキしてるのが此方にまで伝わってくるよ。うわ~。裕翔さん逃げて!!
「して、シエロはどうするのじゃ?」
「あっ、申し訳ありません。僕はアジトの皆の夕食を作らなければならないので、先にアジトの方へ帰らさせて頂きます」
「むぅ。それは残念じゃのう」
ニッコリ笑ってそう返せば、爺は【チッ。気づきおったわい。つまらんのう】みたいな顔で、此方を見ている。
それでも裕翔さんや亜栖実さんがその顔に気がつく前に真顔に戻るんだから、我が爺ながら呆れる。と言うか、何と言うか…。
「仕方ない。それではお二方、シエロは置いておくとして、余り遅くならぬ内に参りましょうかな?」
「「はい!宜しくお願い致します!!」」
「うむ!フハハ楽しくなってきたのう!!」
《バタンッ》
あぁ~あ。良いお返事までして、2人は爺様に付いて部屋から出て行ってしまった。
たぶん止めてもきかないと思ったからそのままにしておいたけど、無事に彼らがアジトへ戻ってくる事を今はただ祈ろう。そうしよう。
「さて、と。シエロちゃんはどうするの?すぐ帰ってしまうのかしら?」
「あっ、まだ晩御飯の支度には時間がありますし、もう少しお茶していっても宜しいですか?まだお祖母様と話足りない事もあるのですが…」
「まぁ!それは嬉しいわ?このばぁばに何を話してくれるのかしら。ウフフ、冷めてしまったわね?カトレア、新しいお茶をお願い出来るかしら」
「かしこまりました」
と、言う訳だから、僕はもう少しお祖母様孝行をしてから帰ります。
折角のお菓子を殆ど手付かずで残すなんて、勿体無いしね?
あっ、こっちが本命ではないからね?本当だよ?嘘じゃないよ?
魔導師。とは、亜栖実のこの国でのアダ名みたいなものです。
因みに、シエロは一部の兵士から、戦場に舞い降りた天使。的な呼ばれ方をしていますwww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します