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十八話目 闇の精霊⑥


2月3日、節分の日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



「え?じゃあ何?これ、陸人(りくと)さんじゃ無くてソラなわけ?」


「宇美彦、指を人に指すものではないよ?これが本当に兄さんだったら、しこたま怒られてるからね?」


 あっ、悪い。と指を下ろした宇美彦は、そのまましげしげと僕の顔や体を見回しては、へ~だの、ほ~だのと言っている。


 見た目とか口調とかが変わっているのが面白いのか、何だか楽しそうなので、こいつは放っておくとしよう。



 しかし、成功したのは嬉しいけど、何でよりにもよって僕は学生服姿の兄貴の姿を想像してしまったんだろうか。


 案の定と言うか、雑念が入った事で、僕は成人した兄貴の姿の上に不釣り合いな、高校生の時の学生服を着た状態で変身してしまっていたんだ。


 まっ、まぁ、兄貴の学校の制服は紺色のブレザーだし、パッと見スーツにも見えなくも無いかな?


 うん。それ以外は成功っぽいし、初めてにしては上出来と言う事にして……。


「……駄目だ。違和感が凄い…。何でよりにもよってこの服で変身しちゃったんだよぉ…」


 思わず漏れ出た声も当然ながら兄貴の声だった。それが無性に悲しくて、何だか泣けてきて、僕はその場にしゃがみこむ。


 子供の姿から大人の姿に変わった為か、少し地面が遠く感じられた…事は少し嬉しい。



「いやいや、陸人さんも何だかんだ童顔だからな。意外と俺は違和感感じないぜ?」


「それがマズイんだよぉ。兄さんも気にしてたから、余計に申し訳無いんだよぉ~」


 慰めてくれる宇美彦にガバッと噛みつく様に立ち上がり、悪態をつきながら、今度はガックリと肩を落とす。


 【木戸陸人(きどりくと)】は僕の2歳年上の兄貴で、母親似の僕とは違い、父親似だった。


 いつもニコニコと微笑みを称えた優しい兄貴だったけど、剣道をやっていたからか、常に礼節を重んじていて、挨拶や礼儀作法に関しては、親よりも厳しかった事を覚えている。


 そんな兄貴は、僕の様に女顔でも、背が低い訳でも無かったけど、常々父親が高校生くらいの時の顔で止まってる気がする。と嘆いていたんだ。


 そもそも父親自体が童顔だったし、そんな事無いと僕は思っていたけれど、言うと兄貴が哀しむのが分かるから、何も言えなかった。


 だからこそ、この格好は申し訳無い訳で…。




「しかし、服の質感まで忠実に再現出来るもんなんですね?ブレザータイプの学生服とか、久しぶりに見ましたけど、このズボンの尻のところ、擦れてテラテラになってるとこまで綺麗に再現されてますよ?」


「ん。それが出来るのも、精霊、が力を貸してくれ、てるか、ら。自分の魔力だけで、同じ、事をやろうと、思っても、難しい」


 ……人が嘆いていると言うのに、マイペースなうちのリーダーと女神様は、僕の着ているものが気になる様だ。


 まぁ、うちの幼なじみも、人の服を捲ったり触ったりして楽しそうにしているので、同罪だったりするのだけど…。


「シエロ君、これから1年、かけて、私が魔法を教えて、あげる。そしたら、1人で出歩けるし、冒険者、の、仕事も、出来る様に、なる。から…」


 僕がガックリしているのを何か勘違いしているブロナーさんは、僕の下がった頭を撫でながら、そんな風に慰めてくれた。


「はは、ありがとう」


「ん」




 この後、ブロナーさんは本当に、月へと帰れるその日の朝まで僕の練習に付き合ってくれる事になる。


 そのお蔭もあって、僕は今【ソラタ】として、変身しながらでも中級くらいの魔法なら使える様になったし、【ソラタ】の名で冒険者登録し直してから半年くらいでCランクにもなれた。


 勿論ちゃんと今も【シエロ】名義の冒険者カードも持ってるし、そっちもどうにかこうにかCランクまで上がっている。


 けど、こうして僕が冒険者として踏み出せたのもブロナーのお蔭だし、本当にいくら感謝してもし足りないくらいだ。



 ……あっ、勿論ギルドマスターには、僕とソラタが同一人物だって事は伝えてあるよ?ほう、れん、そう大事!!




ーーーーーー

ーーーー


「まぁ、そんな訳で、僕は今こうして出歩ける様になった訳です。裕翔さんのご友人の方には、本当に頭が上がりませんよ」


「はぁ~。(わたくし)にも適性があるのなら、是非その方に教えをご教授頂きたいところですわ」


 僕はブロナーがわざわざ来てくれたあの時をしみじみ思い出しながら、クレアさんに所々ぼかしつつ話して聞かせた。


 因みにブロナーさんは【裕翔さんの古くからの友人】で、シャドは、その人が【()()()()森で見つけて保護した子】と言う事にしてある。


 まさか女神様直々に生んで育てた精霊だなんて、流石の僕も言えないよ。あはははは…はぁ。


 何て心の中でため息を吐きながら、僕は今更ながら自分の身の回りに起きていた出来事の余りの非常識さに、ちょっと遠い目になったのでした。



宙太(そらた)は女顔で、陸人(りくと)は童顔だと言う事でそれぞれ悩んでいましたが、その両親は仲間内から【おままごと夫婦】とからかわれる事に悩んでいましたww


本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました!

明日も同じ時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します。


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