百九十三話目 剣の妖精③
9月16日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
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《side:シエロ》
「シエロ君シエロ君!」
さっき裕翔さんに襲いかかった亜栖実さんが、今度は僕に飛びかからんとする勢いで、こっちに戻ってきた。
ち、近い。頭突きされるかと思った。
「シエロ君、何も言わずに剣の妖精さんのとこ見てみて!」
「いや、流石にこの距離ですからね?大体聞こえてましたよ。でも、この角度からじゃ話しているお2人の姿しか見えませんでしたけど…」
あんまりにも圧力が凄くて、タジタジになりつつ答える。
って言うか、見ろ!って言われても僕の視界は100%亜栖実さんに遮られているから、彼女に退いてもらわないと見たくても見られないんだけどね?
「あっ、僕が退かなきゃ見られないか。いやこりゃ失敬失敬」
あっ、僕何も言ってないのに退いてくれた。
もしかして、顔に出てたかな?
まぁ退いてくれたんだから良いか。
「じゃあ、失礼して見てきますかね?裕翔さんの側にいらっしゃるんでしょ?」
そう断りを入れながら亜栖実さんの陰から脱出した僕だったけれど、すぐに新たなる陰によって遮られてしまい、裕翔さんの側へ行くだけ。と言う、簡単すぎるミッションは失敗に終わった。
《『ふむ。確かにこない近くで見ると、坊主が嬢ちゃんに見えるな?随分と、かいらし顔しとるもんなぁ?』》
僕の視界いっぱいでホバリングしていたのは、金髪ではない黄色の短めの髪を、下敷きでゴシゴシしてから頭の上に持ってきて静電気で立たせました!みたいなボサボサ頭にした、小さな妖精さんだった。
葉っぱを無理矢理縫い合わせたみたいなこの服装に、デジャヴを感じる。
覗き込まれている様なこの感じと言い、何だか16年前に風華さん達と初めて会った時を思い出させる様な状況だなぁ。
何て呑気に考えながら、チラリと視線を少し横にずらせば裕翔さんが、僕が渡した眼鏡をかけて笑っているのが見える。
うん。どうやら剣さんで間違いない様だ。
今度は振り返り、お祖母様の方へ顔だけ向く。
【主人と認めた勇者の前にしか姿を現さない】なんて言った、言い出しっぺのお祖母様に話を聞きたかったのだけど…。
「あら?ウフフ。もうバレちゃったのね?つまらないわ~♪」
と、右頬から顎にかけて手をあて、コロコロと笑いながら言い放った姿を見て、あっ。そう言えばこの人はこう言う人だったなと思い直した。
そして、小さい頃からよく騙されていたのに、また騙されてしまった自分が恥ずかしい!!
僕は貝になりたい。そんな気分になった。
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《side:裕翔》
《『な?本当だったやろ』》
「そうですね。エリザベート様があんなにお茶目な方だって言うのも驚きました」
《『はぁ?あれはお茶目、何てかいらしもんと違うで?性悪、言うねや!』》
覚えとき~。何て、剣さんがニカッと笑う。
あっ、何で笑ってるのか分かったかは、シエロ君に借りた眼鏡をかけているからだからね?
そして、貸してくれたシエロ君は何故か頭を抱えてうずくまっている。
ソッとしておいた方が良い気がするので、暫くソッとしておこうと思う。
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