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百八十六話目 魔導師の弟子


9月9日、重陽の節句の日の更新です。

本日も宜しくお願い致します。

栗食べなきゃ!!



2019年4月19日 誤字修正致しました


◇◆◇◆◇◆


《side:裕翔》


 嫌ですわ~?と、穏やかな笑みを浮かべる目の前のご婦人は、信じられない事に、シエロ君のお祖母様だ。


 うふふ。と、笑う度に深い青の瞳が弧を描き、背中に垂らした艶やかな長い緑色の髪の毛が、ユラユラと揺れている。……おろしたらどれくらい長いんだろう?あの髪の毛。


 うん。やっぱりこれだけじっくり見てても、【お祖母さん】には見えないや。


 どう見てもシエロ君のお母さん。もしくはお姉さんって言われても信じるかもしれない。



「それで、私はこの子を起こせば宜しいのでしょうか?」


「あっ、はい」


「どうして、剣を今、起こそうとお思いになられたの?」


「はい。これから、俺…私達の戦いは、ますます激しいものになって行きます。死力を尽くさねば勝つ事の出来ぬ敵も出てくる事でしょう。その際、剣が寝ていました。では、剣の力を十全に発揮出来なければ、困るのです。今の今まで剣が眠りについていた事を知らずにいた私の言う台詞では無いかもしれませんが、これが私の正直な気持ちです」


 そう言いきった俺に、目の前の【お祖母様】は、また微笑みの度合いを深めた。


 なっ、何?


 その青い瞳が、弓がギリギリと引き絞られていく様に、ゆっくりと細められていく。


 何だろう?俺、今変なこと言った?


 あっ!もしかしてこれ、勇者が受ける試練だったりする?



「ふふ。此度の勇者様は、いたく真面目な方ですのね?」


「え?」


「いえ。先代様は、兎角ヤンチャな方でしたので…。勇者様?私が剣を眠りから呼び覚ます事には異存ありませんわ?ですが、くれぐれも、剣に遊ばれない様、お気をつけ遊ばしなさいませ?」


「えっ?えっ?あっ、はい」


 ……思わずどもってしまったけれど、流石は元宮廷魔術室室長様だ。


 シエロ君から聞いていただけあって、オーラが半端ない。


 やっぱりこれは、俺が今代の勇者として相応しいかを見定める為の試練の一貫なんだ。きっとそうだ!


 今までも、何度か退役された諸先輩方や師匠から受けた事があるし、ただ話をしているだけでこんなに威圧される何ておかしいーー。



「お祖母様、裕翔さんをあんまりいじめないで下さい?ご覧の通り、凄く真面目な方なのですから」


「あら?うふふ。だってシエロちゃん。この方、面白いんですもの♪」



 ……え??



◇◆◇◆◇◆


《side:シエロ》



 シレッと人を騙せるうちのお祖母様は、コローレの次に良い性格してると思う。


 見てみなよ、あの裕翔さんのポッカ~ンとした顔。口なんか外れそうなくらい開いてるよ?可哀想に。


 大方、歴代の勇者様達が受けてきた。って言う、【勇者の義】何て大仰な名前の試練をお祖母様が仕掛けてきた。とでも思ってたんだろうね?


 いくらうちのお祖母様が、元、宮廷魔術室室長だって言ったって、今のお祖母様にそんな権限ある訳無いのに…。



「うふふ。あんまり勇者様をからかうものでは無いわね?では、お寝坊さんの剣様を起こして差し上げましょうかしら?」


 裕翔さんの反応を見て満足したのか、お祖母様はクスクスと笑いながら、徐に剣を胸の位置くらいまで掲げた。


 次いで、手のひらから放出された、凄い濃度の魔力が剣の回りにグルグルと渦を巻くように絡み付いていく。


 スッゲェ。あんまりにも魔力の濃度が濃すぎて、魔力の渦が視認出来る程になってるよ!魔力を練り上げるスピードも半端なく速いし、流石はお祖母様だ。


 そして、そんなヤバイものを見せられた裕翔さんの顔が、呆然と言ったものから、驚愕のそれへと変わっていく。


 その隣に座る亜栖実さんの顔は、感動と驚喜の表情だ。




 うわ~。カメラ持ってくるんだったなぁ。2人の顔の対比が面白すぎる。と言う、今後あるかどうか分からないくらいのシャッターチャンスなのに~!?



シレッとした顔で人をからかうのが趣味なお祖母様ですww

勿論試練ではありません。

いくら元の職業が凄くても、今は伯爵夫人ですから。


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。

明日もまた18時頃に更新させて頂きますので、宜しくお願い致します


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