十七話目 闇の精霊⑤
2月1日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「んきゅ?」
今。僕の手の中には、ブロナーから手渡されたばかりの闇の精霊ちゃんが居る。
近くで見ないと分からなかったけど、ちっちゃなその体には、ボタンまで黒いシンプルなシャツワンピースを身につけていて、履いている靴下も靴も黒。な、飾り気の無い、真っ黒一色だった。
彼女?にとっても似合ってるけど、全身真っ黒さんって、地味すぎやしないかな?
僕だったら…。
「シエロ君、それじゃあ、魔法の使い、方を、教える、ね?」
「あっ、うん。お願いします!」
いけない、いけない。
今は、精霊ちゃんの服装が気になっている場合じゃないよね?
僕は改めてブロナーに向き合いながら、頭を下げた。
「ん。じゃあ、先ずは、精霊に、自分、が、なりたい人や、動物、のイメージを、伝えて?初め、てだから、なるべく人形の、ものに、してね?」
「うん…」
僕は、手の中の精霊ちゃんに、僕が変身したいと思った人物のイメージを、魔力にのせて伝えた。
魔法を行使する訳だから、その方が良いかな?と思ってやってみたけど、どうやらそれが正解だったらしい。
みるみるうちに、僕の視界は黒い雲みたいなものに覆われていった。
さっきまでは闇魔法も光魔法のものと一緒で、本当に実体を伴うのか?と、半信半疑だったけれど、成る程。
この雲みたいなものに包まれてみたら、ブロナーの言っていた事がよく分かる。
分厚い雲は、僕の皮膚にまとわりついて、僕の一部になっていく…。
魔王が使っているから、と、闇属性は何か勝手に冷たい感じがすると思い込んでいたけれど、実際はブロナーの人柄?と同じで温かかった。
僕を作り変えていく黒雲の柔らかさと温かさに、これ迄の不安も融かされていくような、そんな心地好さが…。
「ぶ、ブロナー様!さっきまでの比じゃないくらいの煙り?がシエロ君の周りにモクモクしてますけど、本当にこれ大丈夫なんですか!?」
「大丈夫。シエロ君が、変身しようとしているもの、と、シエロ君では、多分、体、積が違いすぎるだけ。その足りない部分、を、闇、が、補填してくれてるだけ、だから」
「そうなんですか?じゃあ、これは【足りない】部分を補ってくれてるだけなんですね?」
「そう、【足りない】部分が、多いと、こうなる、だけ」
……足りない足りない言い過ぎじゃね!?
僕の身長が低い事くらい分かってらぁ!!
《モクモク》
《ボンッ!!》
集中が乱れたからか、ブロナーの時とは比べ物にならないくらいの爆音を響かせながら、黒い煙り?雲?が晴れる。
正直、失敗した気しかしないが、一体僕の姿はどうなっているんだろうか?
「たで~ま~。ソラ~?買い出ししてき…。え!?何で陸人さんがいんの!!?」
あっ、成功してたみたいだな。
幾分か高くなった視線の先には、ビックリした表情の宇美彦が、両手に買い物袋を抱えたまま、立っていた。
「あっ、宇美彦。お帰り~、お使い、ご苦労様でした」
何気なく出した声が低い。
そして、出来るならまた聞きたかった、あの優しげな声になっていた。
チラリと台所の方を見る。
特注で僕が作った魔道具、【業務用冷蔵庫】の磨きあげた金属反射を利用して、鏡の代用にする。
と、そこには穏やかな笑みを称えた、若干猫背で、黒ぶち眼鏡を少しずり下げてかける青年の姿が写し出されていた。
僕が初めて姿を借りたのは、一番近くでずっと見ていた、兄貴。
木戸陸人の姿だった。
シエロのお兄さんは普通に男の人です。女の子みたいな顔ではありませんww
本日も、此処までお読み頂き、ありがとうございました。
さて、明日の更新はお休みさせて頂きます。
お休みばかりで本当に申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
次の更新は明後日、土曜日の18時頃
を予定しています。