百八十三話目 先代勇者と現勇者
9月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「あぁ~。なるほどな?うんうん、やっと分かった」
若干そう答えるカイン先生がくたびれている気がするが、まぁ、後で謝るとして、今は裕翔さんの剣の話だ。
「それで、その剣の事だけど、確かに俺が使っていた時には妖精…って言うか精霊になるのか?アレは?ーーーまぁ良いや。とりあえず、喋ってはいたぞ?」
「「は?」」
「しゃべ、る?」
僕と亜栖実さんは、思わずと言った感じで疑問の声を上げ、裕翔さんは目を丸くする。
今までの武器や防具は、意思はあっても喋る様な事はなかったので、ビックリしちゃった。
あっ。カイン先生が、イタズラが成功した子供みたいな顔をしてる。結構この人、お茶目さんだよね?
「なんだ、お前達の武器は喋らないのか?」
「まぁ、喋りはしないですね…」
「そうか…。あっ、ちょっと貸してもらえるか?返せ!とは言わないから、心配すんな」
「あっ、はい。勿論です」
「それは、どっちの意味の【勿論です】だ?ハハハ。まぁ、いいや」
カイン先生の軽口は、どうやら裕翔さんの緊張を解したいからみたいだけど、何だか全部空回りで終わってる気がするな。
あ~あ。そんなに震えてたら、いくらカイン先生だって剣を受け取れないですよ?
って、言いたくなるくらい、裕翔さんの手は震えていた。
何なの?貴方の座ってるのはソファーじゃなくて、暴れ馬か地震体験装置か何かなの?ってくらい、ブッルブルだ。
「そこだっ!!はぁ、やっと取れた。何なんだよお前は、本当は俺に渡したくなかったんだろ?」
「いっ、いえ、そう言う訳では!」
「まぁ、良いよ。んで?うちの寝坊助君は元気かな?」
やっとの事で裕翔さんから剣を受け取った、いや奪い取ったカイン先生は、苦笑いしながら、剣の鞘を引き抜いた。
《シャラン》
軽い音をたてて、白銀色に光る刃が姿を現す。
相変わらず綺麗だな~。
と、思わず嘆息ものの剣は、元々が命を奪う武器だと言うことを忘れさせるくらいに綺麗な剣なんだ。
鞘も柄も、装飾の類いは少しもない地味なものなんだけど、刃の部分が姿を現したと同時に、それが返って刃の神々しさを引き立てるものへと変わる。
それでいて、切れ味抜群。どれだけの物や者を切り刻もうとも、刃こぼれ1つしない耐久性。と言うか、丈夫さ?
やっぱり伝説に残る剣だな!って感じの、安っぽい感想しか出てこない自分が情けなくなる程の、現裕翔さんの相棒は、元相棒のカイン先生にじっくりと見つめられていた。
先生は、剣をひっくり返したり、刃の部分をコンコンと軽くノックしたりと色々確認してるっぽい動きをした後で、
「んん?」
と、首を傾げた。
「かっ、カイン様?ど、どどど、どうしたんで、ででしょうか?」
「お前こそどうしたんだよ?あ~。んで、剣の事なんだけどよ?寝てる。な。うん。ビックリするくらい寝てる」
カイン先生は、裕翔さんに突っ込みをいれながら、今の剣の状態について、簡単に話してくれた。
うん。寝てるのはしってた。……って言うか裕翔さん。どんだけ緊張してるんですか?
「ん~。駄目だ!俺じゃ分かんね。アナ、頼むわ」
裕翔さんに呆れながらも、暫くそうやって剣を見ていたカイン先生は、無理だ無理だ。と言いながら、隣に座っているアナスタシア先生に剣を鞘に戻してから、手渡した。
小柄なアナスタシア先生が持つと、体格差で剣が凄く大きくみえるね。
「はいはい。心得たぞ?……あぁ、この術式には見覚えがあるわい。シエロ君、これは君の管轄じゃな」
「え?」
「ンフ。まぁ、妾が解いてやっても良いけどの?その方が楽しいじゃろ」
んふふ。とアナスタシア先生は、剣を斜めに抱き抱えながら、妖しい笑みを浮かべた。
ふと思いましたが、この小説ニヤニヤ笑う奴多いですねww
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します




