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百八十話目 眠る剣


9月3日、国民的青狸のお誕生日の日の更新です。

本日も宜しくお願い致します



「なるほど、そう言う事になっていたのですか」


 僕らから事情を聞いたコローレは、フムフム。何て2~3度頷いた後で、裕翔さんの剣を手に取って観察し始めた。


 コローレの瞳に、キラキラと光が舞っている事から、何かしらの魔法を使って確かめているのかもしれない。


「………分かりました。シエロ様の仰る通り、この剣には何かが宿っている様です」


「マジッスか!」


「やったじゃん!裕翔」


「ただし」


 俄にはしゃぎだす2人を制す様に、コローレが声を出す。裕翔さんと亜栖実さんは、ハイタッチの形のまま、コローレの方を顔だけ動かして見た。


「ただし?」


「深い眠りについているようです。このままでは、この剣本来の力は出せないでしょう」


「そんな!?」


 裕翔さんが珍しく大きな声を出した。そりゃそうだ。これからの戦況しだいでは、剣の力を十全に発揮しなくては勝てない敵だって出てくるだろうからね?


 裕翔さんは亜栖実さんから離れ、コローレに近寄ると、その隣に座り、


「どうやったら、起きてくれますか?」


 と、静かにコローレの目を見ながら問いかけた。


 ここで、ショックを受けてても取り乱したりしないのが裕翔さんだよね?流石は勇者様!って感じだ。冷静~。



「申し訳ないのですが、私では流石に起こし方、までは分かりません」


 そんな、真っ直ぐに見つめてくる裕翔さんから、目を背けながらコローレは答えた。


 あれ?何だか違和感。



「そう、ですか…」


「何か方法はあるよ?一緒に探そ「ですが、方法が無い。とは申し上げておりませんよ?」……う?」


 項垂れてしまった裕翔さんを慰めていた亜栖実さんは、【う】の口のままで固まった。


 コローレさん。亜栖実さんの発言を遮ってまでそれが言いたかったんですか?そうですか。


「え?」


 つられたように、目を丸くした裕翔さんも声を漏らす。


 これは、お?って僕も続けた方が良いのだろうか?何て馬鹿な事を考えていると、コローレはニヤリと笑いながら、こう言った。


「元の持ち主に聞きに行けば良いんですよ?」


「お?」


 思わず【お】が口をついて出る。さっきどうしようかな~?なんて、おの口にしたままだったのが敗因の様だ。


 でも、ニヤリ笑いのお蔭で、さっき感じた違和感が分かったかもしれない。だって、コローレがいたたまれなくなって視線を外すなんて、そんな殊勝な態度をとる訳が無い!


 やるとするなら苦笑しながら答える。とかだろう。


 あの元腹黒神父様が、そんな事くらいで動揺する訳ないのだ。


「シエロ様?」


「……何でもありません」


 黒い笑顔のコローレから、思わず目を逸らす。って言うか、この場合目を合わせたら負けなのだ。合わせたら最後、またネチネチと虐められるのが目に見えている。


 僕は、どうにかして目を合わせ様としてくるコローレから、逃げて逃げて逃げまくった。


 まぁ、その場から一歩も動いていないので、端から見たら、こいつら何遊んでんだ?状態だろうけどね?


 僕的には必死です!!


「コロさん?えーっと、それで、俺はどうすれば良いんですか?元の持ち主ったってもう…」


「あぁ。すいません。元の持ち主と言えば、先代勇者様ですから、裕翔はもうこの世にいない人と、どうやって会うのか?と言いたいのですね?」


「えぇ」


 コクリ、と裕翔さんが頷く。


 コローレは、真っ黒い笑顔から、いつもの微笑みに戻ると、裕翔さんの方へと向き直った。


 ほっ、助かった…。



「そうですね。確かに疑問に思うでしょう。では、貴方方の国の言葉で、何と言いましたかね……あぁ。そうです。【論より証拠】実際に会って頂きましょうか?」


 僕の方をチラチラ見ながら、コローレさんはとっても良い笑顔で、そう言い放った。


 あぁ。僕を弄るのは後回しにしただけだと言いたいのですね?そうですか。勘弁してください。



本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。

明日もまた同じ時間に更新致しますので、宜しくお願い致します


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