百七十四話目 気になるあの人
8月28日の更新です。
本日も宜しくお願い致します!
「どう?」
「宇美彦に特別異常がある。とかは無さそうです。続けて、スニー…靴の方にも鑑定をかけてみますね?」
モグモグと、豚肉のマスタード焼きを頬張りながら問いかけてきた裕翔さんに、僕はそう返した。
裕翔さん達だけなら、スニーカーって単語を普通に使ったって良かったかもしれないけど、ここにはランスロット先生やアサギ君もいるからさ。今更かもだけど、ちょっと止めてみた。
「むぐっ。うん、おねがひふるよ」
って言うか、裕翔さん。よっぽどお腹すいてたんですね?
口一杯に、肉や付け合わせの野菜を頬張る珍しい姿の裕翔さんに、僕は生暖かい微笑みを投げかけてから、今度は靴へと向き直った。
きっと、月島さんのせいでご飯を食べ損なっていたんだろうね?うんうん。せめて、ゆっくり食べて下さい。
「あっ、では私も一緒に試してみても宜しいでしょうか?」
何て1人でこっそり涙していると、いつの間にか復活したランスロット先生からそう提案された。
ありがたい申し出だったので、僕からもお願いして、早速2人で魔法をかけてみる事にする。
ナデシコさんのところでも2人でやったし、人数が多い方が、何かと確実だろうからね?
「お願いします」
「では、シエロ君。いきますよ?せーの」
「「《鑑定》」」
揃う声に反応する様に、テーブルの上に置かれたスニーカーがポワッと青白く光る。と、同時に頭の中に情報が流れ込んでくる…。
え~と、何々?
ーーー
天駆ける靴(エ○・ジョー○ンモデル)
元は勇者ナツヒコの持ち物だったが、勇者が亡くなって以来、持ち主不在でここまできた靴。
羽の様に軽く、魔力を通せば空を飛ぶ事も出来る。
ナツヒコの装備品の中で最も気性が荒く、気に入らないと風の刃で体が切り刻まれる事があるので、取り扱いには注意が必要。
今、現勇者一行の森野宇美彦の事が、少し気になっている。難しいお年頃
ーーー
「ぶっ!」
あんまりな内容に、思わず噴き出す。
気性が荒くて、気に入らないと風の刃で切り刻まれる。って、ヤバすぎるじゃん!?
う~ん。こうなると、最初に触ったのが宇美彦で良かったのか悪かったのか。って感じだけど、それ以上に、気性が荒いこの靴をどうやって手懐けたのかも気になるな。
って言うか、ママもよく今の今まで持っていられたと言うか、何と言うか…。
「どうだったんだ?」
「あぁ、うん。宇美彦のところを少し気にしてるみたいだよ?このまま上手く行けば、契約も出来るかもってさ」
宇美彦が、恐々といった様子で僕に話しかけてきたので、僕は問題ない事と、先の様な事を伝えると、ホッとした様だ。
ふーー。と深いため息を吐きながら、ソファに腰かける。
何だかんだ宇美彦がこんな態度を取ることも珍しい。何だか、今日は皆の珍しい一面が見られる日だね?
「取り合えず、怒らせたんじゃないなら良い。靴に失礼な事したんじゃないかと思ったからな」
ニヤニヤしていると、ふぅ。ともう1つため息を吐いた宇美彦が、そんな事を言った。
あんだけリコレさんやママから脅かされた状態でこれが言える宇美彦はマジで良い奴だと思う。何て、自分の親友を褒め称えたくなる。
僕はまた、さっきとは別な意味でニヤニヤしてしまったのでした。
本日も、此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も今日と同じ時間に更新させて頂きますので、また宜しくお願い致します




