百七十三話目 天駆ける靴③
8月27日の更新です。
本日も、宜しくお願い致します
《side:シエロ》
「ただいま~。ご飯出来ましたよ~。って、皆さんどうしたんですか?」
大皿を左右に2つずつ持ちながら台所…って言うか、食堂?から帰ってくると、ロビーに集まっていた面々が面白い顔のまま固まっていた。
まぁ、このままだと危ないから、手に持っている料理達を先にテーブルへ下ろしてっと。
「あっ、咲良もここにお皿並べちゃって?」
「御意」
手伝ってくれていた咲良に指示を出しつつ、皆の顔を伺ってみれば、どうやら皆、宇美彦の方を見ながら固まっている様だ。
……こいつ、何した?
と、宇美彦の方を見ると、宇美彦も困った様な顔をしながら、僕の方を見ていた。
ママが持って来てくれたと言う、例のスニーカーを持ちながら…。
「うわぁっ!?宇美彦!何普通に持ってんの!??どっか痛かったり寒かったり熱かったりしない?」
「えっ?いや、何も?ってか、何で皆こんな?」
「いや、だから危ないよ!!」
「えっ?何が?」
テンパる2人の、会話にならない会話は、暫く続いた。
ーーーー
ーーー
「うん。本当に何ともなってないみたいですね?」
月島さんが、宇美彦の手のひらを確かめながら、うん。と1つ頷いた。
僕もホッとひと安心だ。
「しかし、最初にポッと持った宇美彦が選ばれるなんてね?う~。俺もせめて、持つだけでもしたかった!!」
ブー。と、珍しく裕翔さんがすねた様な声を出す。
まぁまぁ、と慰めながら、僕は出来上がった料理を取り皿に分けて、裕翔さんに渡した。
今日のメインは豚肉(に良く似た魔物の肉)のマスタード焼きです!
あっ、そうそう。僕らがテンパりまくっていたところに、裕翔さん達が帰ってきてくれたんだ。
後で知ったんだけど、亜栖実さんが2人に連絡を取ってくれていたらしい。
まぁ、2人に連絡を取ってくれた後は、食べるのに夢中で、僕らがいくらテンパってても我関せずだったんだけどね……せめて止めて下さいよ。
で、そんな慌てふためく僕らを帰ってくるなり見つけた2人は、瞬時に状況を把握し、助けてくれたって、訳です。
いや~。良くあんな状況で、訳の分からない事を言ってる中から、必要な情報だけを選別出来るよね?僕には無理だ。
「全く。未知な物を触ったり食べたりしてはいけませんよ?」
「いや、ヤバそうなところにガンガン首を突っ込んでいくあんたにだけは言われたく無いんだが…」
「僕は良いのですよ、学者ですからね?彼は特別な訓練を受けていますので、決して真似をしてはいけません。ってやつです」
そう言って、ふんぞり返る月島さん。うん。確かに貴方にだけは言われたくないってやつだね。
この前、月島さん。僕が毒草だって言ってるのに、綺麗な草ですね~?何て言いながら普通に食べたし…。
お蔭で慌てて毒消しを……って、話がずれたね?いかんいかん。
「でも良かった…。宇美彦の手が無事で」
「さっきもそれ言ってたけどよ?そんなに危なかったのか?俺、ただスニーカー持っただけだぜ?」
まぁ、先に見た2つの装備品も、触ったってそこまで危ない事にはならなかったからアレ何だけど、リコレさんから、装備品の中には気性が荒くて、不用意にベタベタ触る様な奴に呪いをかけちゃう様なのもいる。って聞かされていたから、どうにもビクビクしてしまうんだ。
ましてや相手が宇美彦だったから、余計に焦った。ってのもある。
と、言うことをかいつまんで説明すると、
「まっ、マジかよ」
何て宇美彦は、テーブルの上に置かれたスニーカーから、少し距離を取った。
まぁ、今更だけどね?
ふむ。
「《鑑定》」
先ずは、宇美彦に鑑定魔法をかけてみる。
人に鑑定魔法をかけた場合、その人の名前、レベル、種族、状態くらいしか分からないんだけど、今の場合、状態が分かれば良いので有効だ。
何でこれしか情報が出てこないのかは、目下王様直属の研究者達が研究中らしいけど、たぶん、血液の様に絶えず体の中を循環している魔力が、勝手にプロテクトしてくれてるんじゃないか。って言う説が、今のところ有力らしいよ?
魔物や小動物何かも、死ぬ前は鑑定してもそんな情報しか出てこない事からも、この説が有力な証し。なんだそうだ。
で、今の宇美彦の状態だけど、特別異常は見られなかった。ホッ。
葵はまだ固まっていますww
本日も、此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日も18時頃に更新致しますので、また宜しくお願い致します




