百七十ニ話目 天駆ける靴②
8月26日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
《side:宇美彦》
いつもの事だ。と笑う宙太に呆れ半分、羨ましさ半分で話をしていると、
《グゥゴゴゴゴゴゴゴ》
何て凄まじい音が隣から聞こえてきた。
「なっ、何事ですっ!?」
「敵襲でござるかっ!??」
聞き慣れない音に、先生とおにっ子が狼狽えるが、この音は、勿論敵襲では無い。何かのアラート音でも無い。
「亜栖実さん。お腹すいたんですか?」
「あはは~。うん。お腹すいちゃった☆」
胸に半分以上埋まった宙太が、呆れた様な顔で亜栖実を見ているけど、俺からしたらお前も充分呆れの対象なんだぞ?
……まぁいいか。
聞いてて分かったとは思うが、今のは亜栖実の腹の音。
こいつは昔から食欲魔神で、腹が減ると某忍術学園の剣術指南の先生並みに力が出なくなる。と言う、特殊能力の持ち主だ。
最初に聞いた時は、お前何言ってんだよ?とか思ったりもしたが、これが本気で言ってるんだから質が悪い。
「ママ、僕夕食作ってきますね?」
「む?行ってしまうのか?」
「僕には杖さんが居ますから、ママが持って来てくれた靴の持ち主は他にいる事になります。だったら僕は、その間に美味しいご飯を作ってきた方が時間が節約出来ますよね?勿論ママの分も作って来ますから、楽しみに待っていて下さいね?」
じゃっ!
何て言いながら、火の王様…じゃない!ママを口先だけで黙らせた宙太は、いつもの様に食堂へと猛ダッシュ。
旅続きで疲れてるんだから、俺が変わるぞ?と言ってはみたが、【ご飯作りは僕の仕事だからね☆】と、良い笑顔で断られてしまった。
……あいつ逃げたな。
「じゃあ、仕方がない。俺達だけで進めますか」
面倒だがしょうがない。
俺はアジトのロビーに集まった面々をぐるっと見回しながら、そうため息を吐いた。
ーーーー
ーーー
「はぁ~。俺らが別件で動いている内に、そんな事になってたんですか…」
ママを交え、今帰ってきたばかりだという彼らから、今までの経緯やら状況やらを聞いていたのだが…。
正直、やっぱり面倒事を振り撒いていたか。と言う感想しか浮かんでは来ないが、何とか状況は把握する事が出来た。
裕翔がいない状態で、これ以上話を進めてしまって良いのか?と言う気もするが、裕翔は誠治と共に、先の研究所跡地へ出掛けているし、研究魔神の誠治が一緒では、まだ時間がかかるだろう。
これが昨日なら、夕方に一度裕翔達が帰ってきてたのにな。
何て、ついついタラレバな事を考えてしまうが、まぁ、アジトに火の王様が来てるってでも連絡すれば、裕翔の事だ。すぐにでも帰ってくるだろう。
…………誠治がマトモな状態ならな。
「亜栖実、食べながらで良いから、裕翔にママが来てるって連絡取ってくれるか?」
「ひょうはい」
「……せめて飲み込んでから喋れ?」
「む~」
まっ、まぁ、話が通じたから良いか。
連絡の方は、亜栖実に任せよう。
さっき、食堂に走っていった宙太が、つなぎに食べてて下さい。何て置いていった、大皿に山盛りのクッキーだかビスケットだか良く分からない焼き菓子を頬張ってるから、今なら途中で力が出なくなる。何て事もないだろう。
うん。任せた任せた。
「じゃあ、裕翔達がこっちに着くまで、俺らで試してみても良いですか?」
あっちは任せたって事にして、俺だって先先代の勇者の装備品に興味が無いわけじゃ無し。試せるならばやってみたい。
そう、ママに打ち明けながら、触っても良いか?と問う。
「無論じゃ。しかしーーー」
許可も貰った事だし。とばかりに、スニーカーを持ち上げてみる。
おっ!?さっきは遠目だったから分からなかったけど、これエアー入ってんじゃん。
昔流行った、プロのバスケット選手が使っていたタイプのバッシュで間違い無さそうだ。
白地に、赤のラインがマジ渋い!
良いなぁ。俺、ちっと憧れてたんだよなぁ。学生には高すぎて、手も足も出なかったけどな?
……って、ん?
何で皆驚いた顔で固まってんの?
宇美彦やらかしましたww
本日も、此処までお読み頂き、ありがとうございました。
明日も18時頃に更新致しますので、またお読み頂けたら嬉しいです。




