百七十一話目 天駆ける靴①
8月25日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
《グツグツ、コトコト、トトトトトトン》
あちらこちらから色々な音が聞こえるここは、アジトの台所です。
漸くママのお膝の上から解放された僕は、早速晩御飯の準備に追われていた。
あの後、アジトの入り口付近で固まっていたら、亜栖実さんと宇美彦が帰ってきたんだ。腹へった~。って。
特に亜栖実さんのお腹の虫が、凄い勢いで鳴いてるから、リビングで話している隙に何か作らなくちゃ!!!
僕は、更に人参を切るスピードを上げた。
◇◆◇◆◇◆
《side:宇美彦》
お抱えの情報屋から連絡が来たので、ちょっと亜栖実と出掛けて帰ってきたら、アジトの中、入り口付近が騒がしいのに気がついた。
中から聞こえる、聞き覚えのある声に、おっ?宙太達帰ってきたのか?とか思いながら扉を開けると、先生やおにっ子等、見知った顔の中に、真っ赤なドレス姿の女王様の姿が見えて、少し目眩がした。
「あっ、お帰り」
真っ赤な女王様の膝の上に座った宙太が、唖然とする俺と亜栖実に気がついて手を振ってくる。
呑気な奴だなぁ。とか思いつつ、
「ただいま。それより何だ?この状況は?」
と、呆れながら返せば、
「僕達も今帰ってきたばっかりで何が何だか。ママがナツヒコさんの装備を持って来た。ってところまでは聞いた」
と、くたびれた顔で、更に返してきた。
……今、痛む頭が更に痛くなる様な内容が聞こえてきた気がするが、これはスルー…………出来る様な雰囲気では無いな。
ナツヒコ。ってのは確か、先先代の勇者、だったはずだ。
で、何で火の精霊を統べる王が、そんな人の装備品なんざ持ってるんだ?
「火の王様。それは本当に?」
「ん?本当じゃよ?それよりアスミ、妾の事は【ママ】と呼んでたもれ?王様、何ぞと言う堅苦しい名前で呼ぶでない」
どうしたものかと悩んでいる内に、亜栖実が女王様に問いかけてくれていた。
こう言う時、こいつのこの空気の読まない感じがありがたい。
「では、ママさん。何を持って来てくれたの?」
「んふ。本当なら【さん】もいらないのじゃが、仕方無いから許してやろうかの。これじゃ」
そう亜栖実に答えながら、女王様…もといママが何処からか取り出したのは、どう見てもスニーカーにしか見えない靴だった。
「え?スニーカー?」
思わず、気がついたら俺の口から言葉が漏れ溢れていた。
「おや?ウミヒコも知っていたのかぇ?そうじゃ。これは、ナツヒコが使っていた【スニーカー】と言う靴だそうじゃ」
懐かしいのぅ。
そう付け加えながら、ママがスニーカーをいとおしそうに愛でるが、その際、ママの膝の上に座る宙太の頭がママの豊満な胸に挟まれてえらい事になっている。
宙太がすっ、吸い込まれる!?
って言うか、何でこいつ平然と座ってんだ?
普通、焦るか恥じらうかするもんじゃねぇの?
あれ?俺が変なのか?
「おい、ヒバチ!」
「ん?何じゃ?リコレ」
「いやいや。何じゃ?じゃねーよ!シエロ殿お前の胸に圧迫されてるじゃねぇか!?お前はシエロ殿を圧殺する気か?」
「む?」
《もにゅん》
あ、良かった。俺、正常だった。
宙太も笑ってんじゃねぇよ!!
久しぶりにシエロの前世の名前が出てきましたww
本日も、此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新致しますので、また宜しくお願い致します




