百六十話目 鬼神村へ来た理由
8月9日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「えっ!?じゃあナデシコ様も、勇者ナツヒコさんの仲間のお1人だったんですか?」
頭を抑えながらブスっとした顔をしているナデシコさんに向けて、僕は話しかけた。
同じ様に頭を抑えているリコレさんが教えてくれた事によれば、ナデシコさんとリコレさんはその昔、勇者ナツヒコと共に魔王軍へ立ち向かったパーティーメンバーだったのだそうだ。
で、ナツヒコさんはリコレさんとナデシコさんの他に、更に3人の仲間とナツヒコさんを含めた6人で魔王討伐の旅をしていたんだってさ。
ん?待てよ?更にそこに全ての属性の精霊達も一緒だったんだよね?うわ。何か魔王に同情してきたかも…。
流石に300年以上経っているから、既に残念ながら2人はお亡くなりになっていて、リコレさんとナデシコさん、それに、後もう1人の方を含めた3人が今もご存命中のメンバーなんだそうだ。
って言うか、300年以上生きてられるとか、凄いとしか言い様が無いよね?うん。
そんな気持ちも含めて、ナデシコさんに聞いてみたんだけど、
「あぁ。不本意ながらの?」
返って来たのは、そんな苦虫を噛み潰したみたいな顔と言葉だった。うわ、凄い嫌そう。
よっぽど、さっきリコレさんに抱きついちゃったのが不服らしい。
「不本意って何だよ?全く、この跳ねっ返りめ」
「何じゃとぉ?」
「やんのか?あ?」
あぁ、また始まっ…。
「お止め下さいね?」
「おや?まだお説教が必要ですか?」
「「……」」
らなかった。
ニッコリ笑う部下2人の言葉に、長であるはずの2人は、顔を青くしながら押し黙る。
……何か、躾されてる最中の犬みたいだな。ハウスっ!おあずけ!!みたいな。
まぁそんな事は良いとして。
それでね?見ての通り、この2人はパーティーの中でも喧嘩仲間で、こうして顔を合わせるとキャンキャン喧嘩ーーと言うかじゃれ合いにも見えるけどーーをしていたんだそうだ。
その度にナツヒコさんや、その他の人達が宥めて、事なきを得ていたらしいけど、今はその時のお仲間はいないので、ここはフジさんとランスロット先生にお任せしよう!そうしよう。
「……で?御主ら、本当は此処へ何をしにきたのじゃ?浅黄の帰郷はついでなのじゃろ?」
「え?」
そっぽ向いてたナデシコさんの視線が、急に僕を捉えた。真剣な表情で、真剣さの中に、ほんの少しの剣呑な光が窺える。
確かに僕が話しかけたんだけどさ、ちょいちょい2人でじゃれ合い出すから、ついつい気を抜いていたよ。いきなり話しかけられたから焦っちゃったや。
「え?」
とは言え、聞かれた事の意味が分からず、僕はもう一度聞き返してみた。するとーー。
「惚けるで無い。リコレが一緒と言う時点で、流石に私でも分かるぞ?」
「え?」
と、また返されてしまった。流石にこれでは言われた意味が分からなくて、助けを求めてリコレさんの方を見てみるけど、当のリコレさんにも何が何だか分からなかったみたい。
首を横に振って、【何も知らないよ?】と、此方にアピールしていた。
リコレさんが知らないんじゃ、本気でお手上げだよ~。と、考えていると。
「当主様、本当にシエロ殿達は拙者の我が儘に付き合って下さっていただけでござる。他に、と仰られても、意味が分かりかねる。かと、存じまする」
と、アサギ君が助け舟を出してくれた。それを受けて、ナデシコさんの表情から剣呑さが抜けて、元の顔に戻る。
フゥ。何だか部屋の温度まで下がった気がしたよ。
僕は悪い事をしたつもりも、そんな気もなかったけど、何だか蛇に睨まれた蛙みたいに脂汗をかきそうになっちゃった。あ~、何かドキドキしたぁ~。
「何、そうなのか?私はてっきりナツヒコのアレを取りに来たのじゃと思うたぞ?」
「アレって何だっけ?」
「アレはアレじゃ!ナツヒコの防具じゃろうが!!」
「あぁ!そう言えば、お前は防具担当だったっけか?」
ん?何だかナデシコさんがその昔、ナツヒコさんから預かった防具の話しをしているみたいだけど、何でその防具が今、出てくるんだろう?
ナデシコさんは、忘れるでない!って怒ってるし、リコレさんは、悪い悪い。何て悪びれもなく笑っているけど、訳が分からない僕達は暫く置いてけぼりにされていたのでした。まる。
文面のほとんどがお説教ですいません(・・;ゝ
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。
明日もまた同じ時間に更新させて頂きますので、宜しくお願い致します




