百四十九話目 到着
7月28日の更新です。
本日も宜しくお願い致します
「あっ、見えてきたでござる!ジェイド殿、あそこの一際高い樹の根元へ降りてくだされ!!」
暫くジェイド君の背中に揺られていると、不意にジェイド君の頭の上ーー何故か彼だけ頭の上に座ってたんだよね?ーーのアサギ君が、ペチペチとジェイド君の頭を叩きながら騒ぎだした。
『その様に叩かずとも分かる!分かった、あそこの樹の根元に降りれば良いのだな?』
急に叩かれたジェイド君は、止めんか!とアサギ君を嗜めながらも、目的の場所まで降下を始める。
あっ、降下って言っても、この間みたく急旋回しての降下じゃないよ?ジェイド君は緩やかに空をグルリと旋回した後で、ゆっくりと地面に向けて、降りて行ってくれたんだ。
流石に3度目はありませんよ?
って言う、ひっくい声が咲良から聞こえた気がするけど、気のせいだよね?うん。
《ズンッ!》
《ピー!ピー!!バサバサバサ》
あっ、小鳥がジェイド君に驚いて逃げた。
まぁ、山ぐらいの大きさのドラゴンが急に目の前に降りてきたらビックリするよね?
ジェイド君は周りに気を使って優しく着地してくれたけど、やっぱり視界に入ったら怖いかもしれないや。
「此方でござる。いつもはこの辺りに入り口があったのでござるが…。うむ。矢張、今も分からぬでござるな…」
逃げていった鳥を見ながらションボリしているジェイド君を観察していると、ジェイド君の頭から下りたアサギ君が、何もない辺りを頻りに触っている。
ジェイド君が降り立った場所は、一際目立つ高い木がある他は何も無い、更地の様な場所だった。
で、アサギ君は更地の一角、木から見て南向きの辺りを触っていたんだけど、どうやら何も見つけられなかった様だ。
ふぅ。とため息を吐きながら、僕らに向かって首を左右に振っている。
「やっぱり分からなかったの?」
「恥ずかしながら、何も…。いつもならば、あの辺りを探れば何かしらの痕跡が有り、それを手がかりに村までたどり着いていたのでござるが、今はその痕跡はおろか、村まで通じる道の様なものも感じられませぬ。……村が無事ならば良いのですが」
神妙な顔をしながら、アサギ君が此方へ戻ってくる。
「シエロ殿、宜しく頼むでござる」
「うっ、うん。やってみるよ」
アサギ君も見つけられない程の、痕跡を残さない強力な結界かぁ…。うわ、僕で見つかるかなぁ?
何て思いながら、アサギ君と入れ代わりにアサギ君が指差した辺りに近付いてみる。
リコレさんもついてきてくれて、2人で見る事になったんだけど…。
「ん?」
「おや?」
「リコレさん。これ、入り口が…」
「シエロ殿の言う通りだ。これは…」
「どっ、どうしたのでござるか!?何か、分かりもうしたか?」
僕らがヒソヒソ話す様に痺れをきらしたアサギ君が裏返る声で問いかけてきた。
「う~ん。何て言ったら良いか分からないんだけど…」
「分からない。とは?」
歩いても数歩の距離だ。アサギ君に、すぐその距離を詰められる。
背が高いアサギ君に見下ろされると、本人にその気がなくても若干の威圧感を与えられている気になるね。
「いや、分からなかった訳じゃないよ?一応、入り口は見つかった」
「なれば、何処に!?」
「うっ、うん」
覆い被さる様にして問いかけてくるアサギ君の体を少しずらして、僕とリコレさんで見つけた【入り口】を指差す。
「ここだよ?」
「え?ここ、とは?」
「うん。だからね?ここ」
ビックリ顔のアサギ君に分かりやすい様に、もう一度指差す。
僕が指差したのは、更地になっている場所に生えていた、一輪の赤い花だった。
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